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53.他人事みたいに
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「……君は一旦休んだ方が良いと思う」
自分の握りしめた拳を見つめていると、そう声がかけられる。
一瞬頷きそうになってけれど俺は首を振った。
確かに今強いショックを受けている、それは事実だ。
けれど休憩を挟んだから平気になる訳でも無い。というかこんな気持ちを抱えて休んだり出来ない。
「いや、話を聞かせてください。俺の婚約が解消されていると伝えたのは誰でしょうか」
真っ先に浮かんだのは双子の妹の姿だった。でもセシリアではないと否定する気持ちがすぐわいてきた。
だって俺に黙っている理由が無い。寧ろ彼女がアイリーンと恋仲なら真っ先に告げた方が良い。
俺だって成人済みの男だ。
結婚前提だということを理由に婚約者に対し性的接触を迫る可能性だってある。
実際アイリーンとそういった男女の関係になったことは一度も無いけれど、今後も無いとは言い切れなかったし。
セシリアとアイリーンは幼馴染兼大親友という評価が俺や家族からの共通認識だった筈だ。
俺たちの婚約が解消されたとしても二人が友人として会うことは可能だ。
いや、そもそも母はアイリーンの実家との付き合い自体を辞めたいと言っていなかったか。
その理由はオーガス伯爵の新しい妻が高級娼婦だったからで。
そして母は結局俺の嘆願など無視して婚約解消に動いたということか。
ゆっくりと息を吸った。
「婚約解消を、公爵に伝えたのは……母ですか?」
「違うよ」
しかし俺の予想はあっさりと裏切られる。自分の手から目の前の整った顔に視線を移す。
「調査結果を報告したのは私の執事だ」
「しつ、じ……」
確かあの大型犬のような従者の父親が執事だったか。
「そうだ、ギャリソンと言う。私の父の代から仕えてくれている」
君にも挨拶させた筈だ。そう言われるがどうしても彼の息子のオリバーの顔しか出てこない。
へらへらした愛想笑いで乗り切ろうと思ったが今やるには流石に軽薄過ぎると思い黙っていた。
アリオスは俺の記憶などどうでも良かったのか涼しげな声で会話を続ける。
「あれは昔から心配性な男で私に近づく者についてあれこれ調べたがるんだ」
それも仕方がないかもしれないが。
浅く溜息を吐きながら言う公爵に俺も内心で同意する。
執事長の仕事について正直あまり把握はしていない。
そもそも三男の俺に専用執事はいない。それに細かいことはエストに言えば何とかなった。
ただアリオスが両親を亡くして長いなら、ギャリソンという執事は彼の親代わりな部分もあるのではないだろうか。
その息子のオリバーもアリオスに対して主従の間柄以上の絆を感じる部分もあるし。
一見、怜悧で完璧な美貌を持つこの公爵に頼りない部分がそれなりにあることは俺も理解できている。
俺も人のことは言えないけれど、それでもアリオスに対し世話を焼きたくなる時はあった。
それにアリオスは赤色が苦手で下手すれば腰が抜けて動けなくなる。
彼を案ずる人間が邪心を持つ者を近づけないよう事前調査するのは当然な気もした。
「私が婚約者に毒を盛られて以来、ギャリソンは私の結婚に対し神経質になってしまって困る」
淡々と告げられ、色々考えていたことが全て白紙になった。
というか殺されかけたのは自分だろうに他人事過ぎる。
そりゃギャリソンさんも心配性にもなるわ。一気に力が抜けた。
自分の握りしめた拳を見つめていると、そう声がかけられる。
一瞬頷きそうになってけれど俺は首を振った。
確かに今強いショックを受けている、それは事実だ。
けれど休憩を挟んだから平気になる訳でも無い。というかこんな気持ちを抱えて休んだり出来ない。
「いや、話を聞かせてください。俺の婚約が解消されていると伝えたのは誰でしょうか」
真っ先に浮かんだのは双子の妹の姿だった。でもセシリアではないと否定する気持ちがすぐわいてきた。
だって俺に黙っている理由が無い。寧ろ彼女がアイリーンと恋仲なら真っ先に告げた方が良い。
俺だって成人済みの男だ。
結婚前提だということを理由に婚約者に対し性的接触を迫る可能性だってある。
実際アイリーンとそういった男女の関係になったことは一度も無いけれど、今後も無いとは言い切れなかったし。
セシリアとアイリーンは幼馴染兼大親友という評価が俺や家族からの共通認識だった筈だ。
俺たちの婚約が解消されたとしても二人が友人として会うことは可能だ。
いや、そもそも母はアイリーンの実家との付き合い自体を辞めたいと言っていなかったか。
その理由はオーガス伯爵の新しい妻が高級娼婦だったからで。
そして母は結局俺の嘆願など無視して婚約解消に動いたということか。
ゆっくりと息を吸った。
「婚約解消を、公爵に伝えたのは……母ですか?」
「違うよ」
しかし俺の予想はあっさりと裏切られる。自分の手から目の前の整った顔に視線を移す。
「調査結果を報告したのは私の執事だ」
「しつ、じ……」
確かあの大型犬のような従者の父親が執事だったか。
「そうだ、ギャリソンと言う。私の父の代から仕えてくれている」
君にも挨拶させた筈だ。そう言われるがどうしても彼の息子のオリバーの顔しか出てこない。
へらへらした愛想笑いで乗り切ろうと思ったが今やるには流石に軽薄過ぎると思い黙っていた。
アリオスは俺の記憶などどうでも良かったのか涼しげな声で会話を続ける。
「あれは昔から心配性な男で私に近づく者についてあれこれ調べたがるんだ」
それも仕方がないかもしれないが。
浅く溜息を吐きながら言う公爵に俺も内心で同意する。
執事長の仕事について正直あまり把握はしていない。
そもそも三男の俺に専用執事はいない。それに細かいことはエストに言えば何とかなった。
ただアリオスが両親を亡くして長いなら、ギャリソンという執事は彼の親代わりな部分もあるのではないだろうか。
その息子のオリバーもアリオスに対して主従の間柄以上の絆を感じる部分もあるし。
一見、怜悧で完璧な美貌を持つこの公爵に頼りない部分がそれなりにあることは俺も理解できている。
俺も人のことは言えないけれど、それでもアリオスに対し世話を焼きたくなる時はあった。
それにアリオスは赤色が苦手で下手すれば腰が抜けて動けなくなる。
彼を案ずる人間が邪心を持つ者を近づけないよう事前調査するのは当然な気もした。
「私が婚約者に毒を盛られて以来、ギャリソンは私の結婚に対し神経質になってしまって困る」
淡々と告げられ、色々考えていたことが全て白紙になった。
というか殺されかけたのは自分だろうに他人事過ぎる。
そりゃギャリソンさんも心配性にもなるわ。一気に力が抜けた。
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