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59.乞う手紙
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「私たちの結婚式の二日後、リード伯爵から一通の手紙が届いた」
「父から……」
「内容だが、簡単に言えば花嫁を気に入ってくれたかという内容だ」
俺は無言で頭を抱えた。父親を罵倒する単語が次々浮かんでは消える。
余計なことをするな、堪え性が無さすぎる。
この二つが最初から最後まで頭に残った。
「私は気に入ったという内容の返信をした」
「許容することで向こうから情報を引き出す為に?」
「いや、本当に君を気に入ったからだが」
そう真っすぐな瞳で言われて頬が熱くなる。
相手が同性でもここまでストレート好意を表明されると戸惑いつつ嬉しくなってしまう。
俺が一人で照れているとアリオスは懐から何通も手紙を取り出した。手品みたいだ。
「返事を出した翌日の午前に又新たに手紙が届いた。これは主に経済支援を懇願する内容だった」
「えっ」
聞いた途端先程とは違う意味で顔が赤くなった。
子供を嫁に出した相手の家に結婚早々金をたかろうとするなんて有り得ない。
そのことも信じられないが、俺は実家がそこまで困窮しているとは全く思っていなかった。
他家に婿に行く予定だった俺はリード伯爵家の経済状況について詳しく知ることが出来なかった。
だが少なくとも暮らしで不自由した記憶は無い。
エストは俺は他の子供たちとあからさまに差をつけられていたと言っていたが、辛いとは感じなかった。
だが俺の衣食住のランクが実家では下の方だったなら、それ以上下げるのは流石に躊躇われたのかもしれない。
もしくは経済困窮は一時的なものか、それとも俺が家を出てから急に生活資金が足りなくなったとか。
考えれば考える程頭がこんがらがってくる。
「支援の件は今のところ保留にしてある」
「そうですね、その方が良いと思います」
又口調が微妙に丁寧になってしまった。
やってみてわかったが言葉遣いを完璧に切り替えるのは意外と難しい。
アリオスも不満そうな顔をしなかったので、そのまま会話を続ける。
「でも俺が蚊帳の外なだけかもしれませんが、実家がそこまで困窮しているとは知りませんでした」
「いや私も支援を求められて初めて知った。君の妹君もそういう話はしていなかった、ただ……」
「ただ?」
「初めて顔合わせをした際に、王家からの退職金は絶対自分で使い切りたいとは言われた」
「家族が重ね重ねすみません……!」
最早顔が赤くなるどころではない。寧ろ青くなったり白くなりそうだ。
無礼にも程がある。妹も親たちも何を考えているのか。
「セシリア嬢の申し出については了承した。そもそも彼女個人の財産を夫になるとは言え私が使う理由は無い」
「有難うございます、でもセシリアは退職金を何に使うつもりだったんだろう……」
真っ先に考えた使い道はアイリーンとの駆け落ちとそして二人で生活する為の資金だった。
怪我への慰謝料も含まれているからかなりの大金だったらしい。両親が話しているのを偶々聞いたことがある。
セシリア本人とはそういう話はしなかった。何故か躊躇われたのだ。
「兄の君にも彼女は話さなかったのか?」
「そうですね、使い道についてはセシリアからは何も。俺も退職金についてあれこれ聞くの変だと思ったし……」
「そうか、君は品性があるのだな」
だが君の親には備わっていないようだ。
どこか疲れたような声で言うと彼は三通目の手紙に視線を落とした。
「父から……」
「内容だが、簡単に言えば花嫁を気に入ってくれたかという内容だ」
俺は無言で頭を抱えた。父親を罵倒する単語が次々浮かんでは消える。
余計なことをするな、堪え性が無さすぎる。
この二つが最初から最後まで頭に残った。
「私は気に入ったという内容の返信をした」
「許容することで向こうから情報を引き出す為に?」
「いや、本当に君を気に入ったからだが」
そう真っすぐな瞳で言われて頬が熱くなる。
相手が同性でもここまでストレート好意を表明されると戸惑いつつ嬉しくなってしまう。
俺が一人で照れているとアリオスは懐から何通も手紙を取り出した。手品みたいだ。
「返事を出した翌日の午前に又新たに手紙が届いた。これは主に経済支援を懇願する内容だった」
「えっ」
聞いた途端先程とは違う意味で顔が赤くなった。
子供を嫁に出した相手の家に結婚早々金をたかろうとするなんて有り得ない。
そのことも信じられないが、俺は実家がそこまで困窮しているとは全く思っていなかった。
他家に婿に行く予定だった俺はリード伯爵家の経済状況について詳しく知ることが出来なかった。
だが少なくとも暮らしで不自由した記憶は無い。
エストは俺は他の子供たちとあからさまに差をつけられていたと言っていたが、辛いとは感じなかった。
だが俺の衣食住のランクが実家では下の方だったなら、それ以上下げるのは流石に躊躇われたのかもしれない。
もしくは経済困窮は一時的なものか、それとも俺が家を出てから急に生活資金が足りなくなったとか。
考えれば考える程頭がこんがらがってくる。
「支援の件は今のところ保留にしてある」
「そうですね、その方が良いと思います」
又口調が微妙に丁寧になってしまった。
やってみてわかったが言葉遣いを完璧に切り替えるのは意外と難しい。
アリオスも不満そうな顔をしなかったので、そのまま会話を続ける。
「でも俺が蚊帳の外なだけかもしれませんが、実家がそこまで困窮しているとは知りませんでした」
「いや私も支援を求められて初めて知った。君の妹君もそういう話はしていなかった、ただ……」
「ただ?」
「初めて顔合わせをした際に、王家からの退職金は絶対自分で使い切りたいとは言われた」
「家族が重ね重ねすみません……!」
最早顔が赤くなるどころではない。寧ろ青くなったり白くなりそうだ。
無礼にも程がある。妹も親たちも何を考えているのか。
「セシリア嬢の申し出については了承した。そもそも彼女個人の財産を夫になるとは言え私が使う理由は無い」
「有難うございます、でもセシリアは退職金を何に使うつもりだったんだろう……」
真っ先に考えた使い道はアイリーンとの駆け落ちとそして二人で生活する為の資金だった。
怪我への慰謝料も含まれているからかなりの大金だったらしい。両親が話しているのを偶々聞いたことがある。
セシリア本人とはそういう話はしなかった。何故か躊躇われたのだ。
「兄の君にも彼女は話さなかったのか?」
「そうですね、使い道についてはセシリアからは何も。俺も退職金についてあれこれ聞くの変だと思ったし……」
「そうか、君は品性があるのだな」
だが君の親には備わっていないようだ。
どこか疲れたような声で言うと彼は三通目の手紙に視線を落とした。
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