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74.暴走侍女の忠誠
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「でもアイリーン、俺はそんな理由でセシリアから大金を貰う訳には行かない」
「私もセレストならそう言うと思ってた。でもそれはセシリアと話し合って頂戴」
無事に再会出来たらね。正論を返され俺はわかったと答える。
確かにアイリーンに抗議しても意味は無い。妹を説得して彼女の通帳に金を戻さなければ。
それにはセシリアに会う必要がある。俺は口を開いた。
「セシリアがどういう状態か、アイリーンはどこまで把握出来ているんだ?」
「そうね、少なくともタンポポ大好き号に会いに行ける自由はあるみたい」
突然セシリアの愛馬の名前を出されて俺は目を丸くする。
アイリーンの言葉を引き継ぐようにマレーナが俺に話しかけてきた。
「タンポポ大好き号は毎日一回はセシリア様の顔を見ないと食事を拒否して抗議活動をします」
「……そうだったんだ」
初耳だ。しかしそこまで来ると懐いているを通り越して依存しているレベルだろう。
俺がその事実を知っていたなら、セシリアの失踪に関してもう少しまともな推理が出来たかもしれない。
「ですが結婚式から数日経過しても全く飢えている様子は無かった、つまりそういうことです」
「それは……セシリアは屋敷内で元気でやっているということか?」
「元気かはわかりません、私はあの日から一度もセシリア様にお会い出来ていないので」
「マレーナはね、恐らくリード伯爵夫妻に警戒されていたのよ。だから早々に屋敷から出された」
侍女としてセレストのサポートするようにという名目でね。
アイリーンの言葉にマレーナは静かに頷いた。
「伯爵夫妻はセシリアが失踪したと屋敷内で発表した。つまりセシリアを見つけ出しそうな人物が居ては困るの」
「そういうことか」
俺は納得する。しかもマレーナはセシリアに深い忠誠を誓っている。
雇い主である俺たちの父より彼女を優先するだろうし、両親もそれは理解している筈だ。
「ちなみにセシリアの失踪を告げられて真っ先に私の実家に来たのも彼女よ、凄い行動力よね」
クスクスと笑いながら言うアイリーンに、そりゃ両親もマレーナに屋敷内をうろつかれたく無いよなと改めて納得した。
実際彼女は馬房に行ってセシリアの愛馬の状態を確認することで真相に近づいている。
かといって解雇する理由も無いし、不当に解雇すれば逆恨みされる可能性もある。
だからアンブローズ公爵邸に出向させたのか。セシリアと物理的に引き離す為に。
「じゃあ俺とエストの前であんな態度だったのはやっぱり……」
「ええ、追い出される形で公爵邸を去ってアイリーン様を捜そうと思いました」
「……アイリーンを、連れ戻す?」
マレーナの台詞の後半が理解できなくて俺は首を傾げる。
笑いを噛み殺しながらアイリーンがその疑問に答えた。
「ふふ、マレーナはね、セシリアが私との駆け落ち計画を両親に知られて閉じ込められていると勘違いしたみたいなの」
「成程……」
そういう発想もあるのか。
だがそれだと失踪扱いにする必要は無い気がすると思ったが、今更指摘する意味も無いので黙って置いた。
「ちなみに私は駆け落ちするなんて書置きは残していないから、誰かが捏造したのねきっと」
父とあの人、どちらかしら。
笑顔のまま凍てつく声でアイリーンが言う。
あの人とは、オーガス伯爵の後妻のことだろう。どこの家も問題だらけだ。
嫌になるくらいに。
「私もセレストならそう言うと思ってた。でもそれはセシリアと話し合って頂戴」
無事に再会出来たらね。正論を返され俺はわかったと答える。
確かにアイリーンに抗議しても意味は無い。妹を説得して彼女の通帳に金を戻さなければ。
それにはセシリアに会う必要がある。俺は口を開いた。
「セシリアがどういう状態か、アイリーンはどこまで把握出来ているんだ?」
「そうね、少なくともタンポポ大好き号に会いに行ける自由はあるみたい」
突然セシリアの愛馬の名前を出されて俺は目を丸くする。
アイリーンの言葉を引き継ぐようにマレーナが俺に話しかけてきた。
「タンポポ大好き号は毎日一回はセシリア様の顔を見ないと食事を拒否して抗議活動をします」
「……そうだったんだ」
初耳だ。しかしそこまで来ると懐いているを通り越して依存しているレベルだろう。
俺がその事実を知っていたなら、セシリアの失踪に関してもう少しまともな推理が出来たかもしれない。
「ですが結婚式から数日経過しても全く飢えている様子は無かった、つまりそういうことです」
「それは……セシリアは屋敷内で元気でやっているということか?」
「元気かはわかりません、私はあの日から一度もセシリア様にお会い出来ていないので」
「マレーナはね、恐らくリード伯爵夫妻に警戒されていたのよ。だから早々に屋敷から出された」
侍女としてセレストのサポートするようにという名目でね。
アイリーンの言葉にマレーナは静かに頷いた。
「伯爵夫妻はセシリアが失踪したと屋敷内で発表した。つまりセシリアを見つけ出しそうな人物が居ては困るの」
「そういうことか」
俺は納得する。しかもマレーナはセシリアに深い忠誠を誓っている。
雇い主である俺たちの父より彼女を優先するだろうし、両親もそれは理解している筈だ。
「ちなみにセシリアの失踪を告げられて真っ先に私の実家に来たのも彼女よ、凄い行動力よね」
クスクスと笑いながら言うアイリーンに、そりゃ両親もマレーナに屋敷内をうろつかれたく無いよなと改めて納得した。
実際彼女は馬房に行ってセシリアの愛馬の状態を確認することで真相に近づいている。
かといって解雇する理由も無いし、不当に解雇すれば逆恨みされる可能性もある。
だからアンブローズ公爵邸に出向させたのか。セシリアと物理的に引き離す為に。
「じゃあ俺とエストの前であんな態度だったのはやっぱり……」
「ええ、追い出される形で公爵邸を去ってアイリーン様を捜そうと思いました」
「……アイリーンを、連れ戻す?」
マレーナの台詞の後半が理解できなくて俺は首を傾げる。
笑いを噛み殺しながらアイリーンがその疑問に答えた。
「ふふ、マレーナはね、セシリアが私との駆け落ち計画を両親に知られて閉じ込められていると勘違いしたみたいなの」
「成程……」
そういう発想もあるのか。
だがそれだと失踪扱いにする必要は無い気がすると思ったが、今更指摘する意味も無いので黙って置いた。
「ちなみに私は駆け落ちするなんて書置きは残していないから、誰かが捏造したのねきっと」
父とあの人、どちらかしら。
笑顔のまま凍てつく声でアイリーンが言う。
あの人とは、オーガス伯爵の後妻のことだろう。どこの家も問題だらけだ。
嫌になるくらいに。
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