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37.会わせたくない理由
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城に使いを出し、アラベラと餓狼病やナヴィス国について話をしていたオスカーは時計を見た。
丁度二人が部屋に入ってから二時間が経過している。
「ふむ、そろそろいいか」
「オスカー様?」
納得したように呟くオスカーにアラベラが不思議そうに名を呼ぶ。
彼女を優しく膝の上から降ろすと銀髪の青年は不敵に笑った。
「そろそろサディアス王太子のところに行こうと思ってな」
「今からですか?」
それは流石に急すぎるのでは。
アラベラが口にしなかったその言葉を読み取りオスカーはだからこそだと返した。
「時間を置き過ぎると色々と悪さをしそうな相手だからな」
「悪さを……」
サディアスは自国の王太子だがアラベラはそれを否定することは出来ない。
一番有り得そうなのは仮病を使いオスカーとの対面を拒否することだろう。
サディアスは自分が上の立場に居られない相手との会話を嫌うことを元婚約者のアラベラは良く知っていた。
昔はそう言った時にはアラベラを矢面に立たせていた。
今ならエミリの背中に隠れるだろうか。
流石に聖女と呼ばれているとはいえ、平民を宗主国の王子のホステス役にはしないだろうとは言い切れなかった。
何よりエミリとサディアスはまだ婚約すらしていない。
「そんな訳だから、アラベラ嬢と俺は数時間程は完全に別行動だな」
「えっ」
当然自分も彼に付き添い城に行くと思っていたアラベラは驚いた声を出す。
「大丈夫だ、先程までずっと一緒に居たのだから三時間程度は平気だろう」
「いえ、そうでは無くて……父の為の薬をお願いしに伺うのですからわたくしもお供した方が」
「だったらイザーク殿に一緒に来て貰うつもりだ」
「兄は帰って来たばかりで疲れています、それに餓狼病の父と接触したことを理由に避けられるかもしれません」
「成程、だがな……」
相手の主張に納得を示しつつもオスカーは煮え切らない返事をする。
先程までの豪快な決断力と相反する態度をアラベラは内心疑問に思った。
もしかしたら彼は自分と外でも寄り添わなければいけないと思っているのかもしれない。
若干距離感が麻痺し始めた自覚のあるアラベラだが流石にそんなことはするつもりがない。
兄の前でさえ、隣に座って手を握る程度の接触で済ませているのだ。
当然サディアスの前では婚約者として適切な距離を維持するつもりだった。手を常時繋ぐこともしない。
その点を口に出して説明しようとしてアラベラはオスカーの真紅の瞳を見つめる。
すると彼は僅かに目を逸らした。そして、少しだけ躊躇った後で口を開く。
「今のアラベラ嬢は咲き誇る薔薇の様に美しいからな、あの女好き王太子に見せたくないんだ」
「オスカー様……」
照れくさそうに言う年上の婚約者にアラベラも頬を染める。
しかしオスカーはすぐに表情に不敵さを取り戻すと婚約者の華奢な肩を抱いた。
「まあ、奴が欲しいと言ってもくれてやるつもりは無いけどな」
もう君は俺のものだ。
強気な台詞を口にしたオスカーだが、触れる掌は優しく拘束に力は入っていない。
「はい、今のわたくしはオスカー様の婚約者です」
だからこそアラベラは笑顔でその言葉に頷くことが出来た。
丁度二人が部屋に入ってから二時間が経過している。
「ふむ、そろそろいいか」
「オスカー様?」
納得したように呟くオスカーにアラベラが不思議そうに名を呼ぶ。
彼女を優しく膝の上から降ろすと銀髪の青年は不敵に笑った。
「そろそろサディアス王太子のところに行こうと思ってな」
「今からですか?」
それは流石に急すぎるのでは。
アラベラが口にしなかったその言葉を読み取りオスカーはだからこそだと返した。
「時間を置き過ぎると色々と悪さをしそうな相手だからな」
「悪さを……」
サディアスは自国の王太子だがアラベラはそれを否定することは出来ない。
一番有り得そうなのは仮病を使いオスカーとの対面を拒否することだろう。
サディアスは自分が上の立場に居られない相手との会話を嫌うことを元婚約者のアラベラは良く知っていた。
昔はそう言った時にはアラベラを矢面に立たせていた。
今ならエミリの背中に隠れるだろうか。
流石に聖女と呼ばれているとはいえ、平民を宗主国の王子のホステス役にはしないだろうとは言い切れなかった。
何よりエミリとサディアスはまだ婚約すらしていない。
「そんな訳だから、アラベラ嬢と俺は数時間程は完全に別行動だな」
「えっ」
当然自分も彼に付き添い城に行くと思っていたアラベラは驚いた声を出す。
「大丈夫だ、先程までずっと一緒に居たのだから三時間程度は平気だろう」
「いえ、そうでは無くて……父の為の薬をお願いしに伺うのですからわたくしもお供した方が」
「だったらイザーク殿に一緒に来て貰うつもりだ」
「兄は帰って来たばかりで疲れています、それに餓狼病の父と接触したことを理由に避けられるかもしれません」
「成程、だがな……」
相手の主張に納得を示しつつもオスカーは煮え切らない返事をする。
先程までの豪快な決断力と相反する態度をアラベラは内心疑問に思った。
もしかしたら彼は自分と外でも寄り添わなければいけないと思っているのかもしれない。
若干距離感が麻痺し始めた自覚のあるアラベラだが流石にそんなことはするつもりがない。
兄の前でさえ、隣に座って手を握る程度の接触で済ませているのだ。
当然サディアスの前では婚約者として適切な距離を維持するつもりだった。手を常時繋ぐこともしない。
その点を口に出して説明しようとしてアラベラはオスカーの真紅の瞳を見つめる。
すると彼は僅かに目を逸らした。そして、少しだけ躊躇った後で口を開く。
「今のアラベラ嬢は咲き誇る薔薇の様に美しいからな、あの女好き王太子に見せたくないんだ」
「オスカー様……」
照れくさそうに言う年上の婚約者にアラベラも頬を染める。
しかしオスカーはすぐに表情に不敵さを取り戻すと婚約者の華奢な肩を抱いた。
「まあ、奴が欲しいと言ってもくれてやるつもりは無いけどな」
もう君は俺のものだ。
強気な台詞を口にしたオスカーだが、触れる掌は優しく拘束に力は入っていない。
「はい、今のわたくしはオスカー様の婚約者です」
だからこそアラベラは笑顔でその言葉に頷くことが出来た。
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