勇者の帰りを待つだけだった私は居ても居なくても同じですか? ~負けヒロインの筈なのに歪んだ執着をされています~

砂礫レキ

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第一章

四十四話

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 腹なんて勝手に立てていればいい。惨めだなんて勝手に思っていればいい。

 どうせなら私に直接そう言ってくれても良かったぐらいだ。

 今の魔物の姿の彼女と二人きりになるのは絶対ごめんだけれど。


「アンタなンて、やっぱり一番最初に殺すべきだった!!」


 憎々し気な言葉と同時にリンナの体の一部である触手根が私に襲い掛かる。

 前面に配置された魔法の盾は器用に動いて私をその凶器から守ってくれた。

 後ろでミランダさんが動く気配がする。大丈夫ですと振り向かずに答えた。

 今は怯えを見せる時ではない。


「やっぱり私を殺すつもりだったのね」

「そうよ、アンタの大切なもの全部アタシの物にするか殺して、それをアンタに見せびラかしてから」


 絶望させながらゆっくりと殺してやるつもりだった。

 その光景を妄想したのかリンナの顔がいやらしく笑う。

 確かに墓場で彼女は他人事のように「私からライルを盗むのがリンナの目的だ」と語っていた。

 それを思い出した今ライルたちを捕えているリンナと私たちの前にいるリンナの関係が気になり出す。


「墓地に居たリンナも似たようなことを言っていたわ。でもそれは彼女自身でなく貴女の欲望だったのね」
 
「ああ、アレ?アレは私の一部に過ぎないもの。娘……とは違うワね。手足、いや枝の一本程度だわ」


 色々と便利ではあるけれど。

 己の姿を模しただろう存在をリンナは冷徹に評する。

 確かに下半身が完全に植物化した今の状態なら、あの人間らしい姿は何かと便利だろう。  

   
「最初はね、困っタわ。お腹がどんどん大きくなっていって、パパたちにこの地下に閉じ込めらレた」

「許して、許してリンナ……」

「駄目よママ。腹を膨らませたアタシを二人で散々に罵ったじャない。なんてふしだらな女だろうッて」

「あれは、だって貴女が父親なんて誰かわからないと言い出すから……!」

「今はわかルわ。魔族の将軍様。だからアタシは将軍の奥方様ってところね」

「よりにもよって魔物の子供なんて……!!」
 
「なによ、いい年して子供も産めないッて、昔はあんなに馬鹿にしていタくせに」

「止めなさい、リンナ……!」 


 悲鳴のような声を上げてリンナの母親が娘との会話を止める。

 しかしその直前の発言に対し私は少し疑問が浮かんだ。

 リンナはまだ十代後半だ。確かに今の彼女よりも若い年齢で結婚する若者は村にもいた。

 けれどだからといって、子供がいないことを親から責められる年では決してないだろう。


「親子喧嘩は私たちのいないところでやって欲しいわね」


 私から少し離れた場所でミランダさんが呆れたように言った。

 そんな平和なものだったらいいけれど、私は心でそっと溜息を吐いた。
 
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