勇者の帰りを待つだけだった私は居ても居なくても同じですか? ~負けヒロインの筈なのに歪んだ執着をされています~

砂礫レキ

文字の大きさ
46 / 66
第一章

四十五話

しおりを挟む
 ミランダさんは母娘の諍いに少し呆れながらも、話の内容に気になるところがあるようだった。

 警戒は崩さないままで会話に混ざろうとする。


「魔物の子供ということは……やはり貴女が産んだ魔物は存在するの?」

「居るわよ。あんなの娘だとは思わなイけど」

「それは、どこに?」


 ミランダさんの眼差しがより真剣なものになる。

 リンナ以外にも魔物がいるならそれも倒さなければいけない。

 居場所を尋ねるのは当然だろう。

 しかしそれを魔物であるリンナが素直に答えるだろうか。


「は?さっきの話聞いてなかッたの」


 だから墓場にいるのがソレよ。

 あっさりとした返答だった。やはりそっくりの外見をしているだけあって彼女はリンナの子供だったのだ。

 ただ素直に娘扱いしないところに何か引っかかる部分があった。

 素直に考えれば魔物の子など自分の子供扱いしたくないということだろうか。けれど本人の方が余程異形の姿になっている。


「お腹が膨らんでイくに連れて、アタシの中から誰かの声が聞こエ始めた。それはアイツの声だッた」


 忌々し気にリンナが話し始める。溜め込んだ愚痴を吐き出すように。

 腹の中から声が聞こえる。普通に聞いていたら幻聴だと判断するだろう。

 腹の中から赤子の声がするだなんて。


「願いを叶える、その代わりに自分を生んで欲しい。生まれルまで願いを叶え続けるから」


 殺さないで欲しい。

 腹の中に埋まった魔物の種はひっきりなしにそう囁き続けたのだとリンナは語った。


「双子草、ってイうの? アイツはそう名乗ッたわ。何が双子よ、なり替わりを企む化け物の癖に」


 異形の姿になったリンナから化け物という単語が出てくるのに何となく皮肉を感じた。

 ただ今の彼女は明らかに怒りを湛えていて、下手なことをいったらすぐに暴れ出すだろう。

 だから私は大人しく聞き役に徹する。それに今話しているものは魔物の情報としてもかなり重要なものだと思った。


「願いを叶える為だと言って、宿主の体を植物の魔物に作り変えルのよ」


 双子草は高位の魔植物だ。人間そっくりに化けられるだけでなく他の植物の種を生み出すことが出来る。

 美しくなりたいと願えば美しい外見を、強くなりたいといえば強靭な肉体を内部からの改造で与える。

 金が欲しいと言ったら希少で高価な花を宿主の掌辺りに生やし摘み取らせる。

 願いを叶える為にと言って双子草は宿主に植物の種を植え付け続ける。

 そしてその体が生きた苗床になり完全に植物に思考を乗っ取られたら、そっくりな外見でその中から生まれてくるのだ。
 

「アタシは地下に閉じ込められて数日経ッた時点で、足がまともに動かなくなッていた」


 願いを叶えると言うのなら、まずこれを治せ。

 それだけでいいのかと問われて、欲望を語った。どうせなら歩けるだけじゃない方がいい。

 好きな時に餌が取れるように、危害を加えられないように、この村のどこにでも入り込めるように。

 父母に復讐できるように、自分がこんな目に遭っている原因を誰よりも不幸にできるように。 

 ならその体を魔植物化し強く便利な姿に生まれ変わろう。

 腹の中からの提案にリンナは承諾したのだと言った。

 それを聞かされた私は正直開いた口が塞がらなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...