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第一章
四十六話
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私はリンナを善良な人間だと思った事はない。
だが魔物との取引に対し、少しは葛藤するぐらいの人間性はあると思っていたのだ。
この村が魔物たちに好き勝手に蹂躙されたことを彼女だって知らない筈がないのに。
閉じ込められて足が動かなくなっていたとしても、流石に躊躇いが無さすぎる。
何より魔物化してまで叶えたい願いが悪意にまみれ過ぎていた。
歩けるようになりたいや外に出たいなら理解はできる。
けれど盗癖のあるリンナが村のどこにでも出現できるよう願うなど質の悪さしか感じない。
まして『餌』を取る為にだなんて。
「双子草との騙しあいハ、面白かッたわ」
願いを叶えると言いながら宿主の体を植物化しようと企む魔物。
それに勘づきながら自らの体を餌にして魔物を利用しようとする女。
おぞましい駆け引きの勝者は人間だった。いや、今の彼女を人間と言っていいかは迷うが。
「盗むのは得意なの」
抜け抜けと笑うリンナは得意げな顔をしていたが酷く愚かだった。
何が誇れるというのだろう。何が自慢できるというのだろう。
自らのその手癖の悪さこそが今破滅を招きつつあるというのに。
「双子草の能力も、意思も、役割も、全部奪ッた。そのことに気付かせもせずに」
「……確かに、それは大したことね。凄い精神力だと賞賛してもいいくらい」
ミランダさんがリンナの言葉に相槌を入れる。
好意的ともとれる言葉に魔物と化した娘が嬉しそうに笑んだ。
リンナはもしかしたら、誰かとこういう風に沢山話したかったのかもしれない。
生まれついての盗癖故に孤独になった彼女が、魔物になってやっと今向き合って貰える。
だから敵対している私たち相手に危害を加える事を止めてまでこうも長々と語り続けているのだろう。
「でも貴女の行っていることと双子草の目的は異なるのかしら?」
村に危険な植物を植え、村人を傷つけ、勇者を精神的に苦しめる。
確かに魔物化した彼女がおこなったのは勇者に恨みを持つ魔物と全く変わらない行動だ。
ミランダさんの発言に私はリンナを見つめた。先程までの笑顔は嘘のように顔を歪めて居る。
「違ウ!!」
「どこが違うの?どういう風に違うの?」
「アタシは、壊したいンじゃなく、殺したいンじゃなく、盗みたかった」
「……本当に大したものね」
ミランダさんが呆れたように言う。
「なら、貴女が盗んだ物を全部教えて頂戴」
その欲望の強さ故に双子草の支配に打ち勝ったというのなら。
魔物を挑発する魔女の瞳は好機を待ちながらも知識欲にぎらついていた。
だが魔物との取引に対し、少しは葛藤するぐらいの人間性はあると思っていたのだ。
この村が魔物たちに好き勝手に蹂躙されたことを彼女だって知らない筈がないのに。
閉じ込められて足が動かなくなっていたとしても、流石に躊躇いが無さすぎる。
何より魔物化してまで叶えたい願いが悪意にまみれ過ぎていた。
歩けるようになりたいや外に出たいなら理解はできる。
けれど盗癖のあるリンナが村のどこにでも出現できるよう願うなど質の悪さしか感じない。
まして『餌』を取る為にだなんて。
「双子草との騙しあいハ、面白かッたわ」
願いを叶えると言いながら宿主の体を植物化しようと企む魔物。
それに勘づきながら自らの体を餌にして魔物を利用しようとする女。
おぞましい駆け引きの勝者は人間だった。いや、今の彼女を人間と言っていいかは迷うが。
「盗むのは得意なの」
抜け抜けと笑うリンナは得意げな顔をしていたが酷く愚かだった。
何が誇れるというのだろう。何が自慢できるというのだろう。
自らのその手癖の悪さこそが今破滅を招きつつあるというのに。
「双子草の能力も、意思も、役割も、全部奪ッた。そのことに気付かせもせずに」
「……確かに、それは大したことね。凄い精神力だと賞賛してもいいくらい」
ミランダさんがリンナの言葉に相槌を入れる。
好意的ともとれる言葉に魔物と化した娘が嬉しそうに笑んだ。
リンナはもしかしたら、誰かとこういう風に沢山話したかったのかもしれない。
生まれついての盗癖故に孤独になった彼女が、魔物になってやっと今向き合って貰える。
だから敵対している私たち相手に危害を加える事を止めてまでこうも長々と語り続けているのだろう。
「でも貴女の行っていることと双子草の目的は異なるのかしら?」
村に危険な植物を植え、村人を傷つけ、勇者を精神的に苦しめる。
確かに魔物化した彼女がおこなったのは勇者に恨みを持つ魔物と全く変わらない行動だ。
ミランダさんの発言に私はリンナを見つめた。先程までの笑顔は嘘のように顔を歪めて居る。
「違ウ!!」
「どこが違うの?どういう風に違うの?」
「アタシは、壊したいンじゃなく、殺したいンじゃなく、盗みたかった」
「……本当に大したものね」
ミランダさんが呆れたように言う。
「なら、貴女が盗んだ物を全部教えて頂戴」
その欲望の強さ故に双子草の支配に打ち勝ったというのなら。
魔物を挑発する魔女の瞳は好機を待ちながらも知識欲にぎらついていた。
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