その木かげで待つひとへ(1)光る道を進んで

端木 子恭

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手にした戦果

交易路の利権

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 結局、夏の訪れとともに召集になった。

 よりによって全軍。

 人数では遜色ない両軍が、少し起伏のある荒地の平原に集まった。
 場所はエリアナの少し南。
 馬産地マヌラの目の前である。
 もう少し南下するとヘイデンの友好国パースがあった。
 そちらへ行くと砂漠っぽくなる。

「将軍だ」

 例によって陣営の端の斜面に陣取ったコラリー師団はヘイデンの軍勢を見ていた。

 日が沈んでいくところで、地形の長い影に旗印は見づらくなる。

「あれはヨーリス将軍だ。
 年も性格もうちのオーヴェ寄り。
 ほら、向こうも全軍だ。正面突破同士の戦いになるかな」
「嫌だなあ」

 少しだけ平らな場所に剣を立ててリロイは呟く。



 水を連れてくる、と念じていた。



 ここに泉ができれば大成功。



「何してる?」

 もはやリロイを魔法使いだと疑っていないクレイグが聞いた。
 リロイが答える前に水が湧き出す。
 それを見て笑顔になった。

「水場争いから解放されたな」

 少しずつ広がっていく水場から退く。
 水の匂いに歓声を上げた団員には飛びこむなと言っておいた。





 今回、クレイグには秘策があった。
 紋様を色々なところに刻んでみる作戦だ。


 そして、さらにリロイの魔獣を隊に紛れ込ませる。


「シメネス」

 いつもの通りもらった魔獣を呼ぶ。
 シメネスは静かに伏せて現れた。

「人の姿になれ」

 クレイグが命じると、その姿は背の高い騎士になる。
 黒い鱗の竜が、黒い服の剣士に変わった。

「……え?」

 リロイが驚きでこわばる。


 自慢げなクレイグはリロイもやれと言うように手招いた。

「シメネスによると、リボルやコニーはできる。
 特にコニーはもともと人に化けて狩りをしていたくらいだから向いている。
 テオは人の言葉くらいは話せるか、または無理かもしれない」
「シメネスって喋れるのか」

 びっくりしすぎて非難めいた表情になってしまう。
 そんな顔で見られたシメネスは悲しそうだった。

「リロイは聞かなかったから」

 本当に人の声で人の言葉を話している。

「聞かなかったリロイが悪いんだ」
「気づいたら教えてくれたって!」
「知ってると思うだろ」
「知らなかった!」

 団長たちが何かじゃれている。
 他の団員はいつもの風景に落ち着いて火を起こしていた。

「ともかく、リボルとコニーにも命じてみろ」

 リロイは二人を呼んだ。
 コニーは人の姿になった途端、徴兵を拒否した。

「私乾燥地帯は苦手なんです」

 白い髪の女性の姿のコニーは本当に勘弁してくれと言う態度だ。
 一方のリボルは、大鳥の姿のまま首を傾げている。

「リボル、どんな姿をしたらいいか分からないの?」

 リロイが優しく話しかけると、首肯するように瞬きした。

「知っている人間の姿でいいんだよ。
 やってみてくれるか?」

 そう言われ、大鳥はゆっくりと姿を変える。

「……ああ、それ」

 リロイが唖然と見やった。
 クレイグがごめんと言いつつ吹き出す。

 リボルが変身したのは、見習いの頃のリロイだ。
 その頃ついて行った任務の先でリボルに出会った。

 知っている人と言われてなったのに笑われている。

 リボルは小さなリロイの姿のまま憮然となった。
 リロイがクレイグの腕を叩いて嗜める。

「兄弟みたいでいいだろ。
 クレイグ笑うな!」

 シメネスがリボルに近づいた。

「もっと大人の人間だ。
 リロイを守らなければならない。
 だからリロイよりも年上の人間にならないと」

 リボルは黙って考える。
 すぐに姿は変わり始めた。

 鳶色の髪をした二十代半ばの男性だ。

「それでいい」

 シメネスが人間らしく笑うのを、リボルは無表情に見ている。
 ちょっと戸惑っているようだ。

 コニーには水場の護衛を頼んだ。
 リボルとシメネスはそのまま兵士たちに紛れる。

「シメネスが常に私のそばにつくようにする」

 クレイグはリロイに作戦を話した。

「シメネスでも紋様の力は発動した。
 マルテと試したんだが、木の幹の裏側から叩いても力が伝わった。
 厚みがあっても大丈夫と言うことは、鎧のどこにあっても使えると言うことだ」

 領地でいろんなものに刻めって言われたのを思い出した。

 力の入れ具合で紋様の大きさが変わる。
 そして柔らかすぎなければどんなものにでも刻めるようだ。

 刺青みたいに肌にも刻めるのか試そうとしたけれど、怖いのでやめた。

「目眩し程度にしかならないが、何か使えるだろう」

 自分たちが使いこなしているのは鉄の塊の方。
 クレイグはリロイの剣の柄をじっと見る。

「それ、どこで作ってもらったんだろうな。
 その鍛治工を探したい。私のにもつけてほしいよ」
「クレイグは魔力がないのに?」

 するとクレイグは言った。

「きっとそれは魔法使いが敵だった時にも使える。
 魔法使いの攻撃を受ける時、石が魔力を吸う状態にしておけば。
 柄で受ければ、敵の力をこちらの攻撃力に変えられるんじゃないか」

 
 水場から蛇の威嚇する音が聞こえた。
 急いで行ってみるとコニーが別の部隊を脅している。
 分けてあげてと言った。
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