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手にした戦果
団長の不在
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翌日は朝から団長たちが呼ばれて行った。
将軍の下からなかなか帰らないと思ったらオーヴェの副官が前線に配置した。
今日は作戦なし。
どんよりとした空気が隊に流れる。
リロイが全体の動きも見渡さなければならなくなった。
横長に配列する。
完璧な正面突破だった。
ヘイデンの方にも動きが起こる。
陣形が変わり、こちらと同じような力押しの形になった。
ヨーリス将軍は受けて立つ。
本当に同じ性格の将なのだと伝わった。
これは嫌だなあ。
リロイはじっと両軍を見る。
負傷者が大量に出る予感しかしない。
オーヴェの陣にいる団長たちを振り向いた。
シメネスの場所が分かる。
将軍から離れたところにいるようだ。
「今日中に敵の弓を倒す。殲滅せよ」
オーヴェの指示をそのまま号令した。
リロイはげんなりしながら馬上の人を見上げる。
直接指揮をしたい。
将軍の脳内は見えた。
生き残れ。
声に出さずにリロイは命じる。
ヘイデンは少し高い場所から下ってきた。
リロイは地形の影響で隊が自然と細くなる箇所を見つけた。
ヘイデン軍はそこから出るときに隙ができる。
ロード旅団はいち早くそこへ進んで盾と槍を構えた。
地形の出口で囲まれる形となり、ヘイデンの隊列は広がるか突破か迷う。
その一瞬でロードの兵士に捕まっていった。
「古参は下がれ! 弓は若い者で崩す!」
リロイの指示に応じ、前線の兵士が素早く交代する。
ロードを担当していた副官が敵の槍に衝かれた。
前線のぶつかり合いを突破したあたりで。
一旦退く古参兵に任せて下がらせる。
高所の平地へ出ると、ヘイデンの弓兵が狙いを定めていた。
「合図で突撃せよ!」
リロイの大声が響く。
リボルにだけそばから離れないように言うと、剣の柄の石を押しこんだ。
二、三度振ると近くの団員が飛び退く。
「……進め!」
剣を大きく薙ぎ払った。
荒地がめくれ上がりヘイデンの弓兵は体勢を崩す。
ロードの若い兵士たちが四列に分かれて突っ込んだ。
よろけた弓兵の隊を挟んで攻撃する。
「あまり深く行くな! 崩したら一度帰る!」
大ぶりな剣を振り下ろしながらリロイは叫ぶ。
分断されたヘイデンの弓部隊はロードの兵士に囲まれて沈んでいった。
「撤退!」
どこかの隊の隊長と旗を一緒に掴んだリロイが命じる。
若手中心の部隊は素早く自陣へ引いていった。
「リボル、この人を運んでいって」
リロイに命じられるまま、リボルがその人間を預かって走る。
日はまだもう少し出ていそうだ。
もう一回くらい行ってこられるか。
休憩に水場へ群がる兵士たちをコニーが出迎える。
クレイグは戻されていない。
他の隊を見ると、まだヘイデンの弓兵にも届かないところが多かった。
ロード旅団の方を、団長たちが見ている。
もう一回行ったらやりすぎか。
それとも行って見せつけるべきか。
オーヴェの副官がやられたのは好都合だ。
「休憩後もう一度出る。負傷者を確認しろ。
疲れた者も出なくていい。
明日の戦闘の方が本番だ。体力を保て」
ヨーリス将軍はヘイデン軍の真ん中より後方にいる。
旗印を見据えてリロイは笑った。
あれをとらえたい。
「元気な隊がいる」
臙脂色の上着のように見える布鎧を着て、馬上の将の一人が呟いた。
体格を見ても武器を使うとは思われない。
「あれがロード隊……、ロード旅団ですよ」
そばに立つ女性の騎士が教えた。
馬の首の位置に頭がある。
背の高い人だった。
「へえ」
束ねた髪にフードを被る。
こうするともう将は性別すら不明になった。
ロードの二度目の進軍を観察する。
今度は半数にも満たないくらいの数だ。
少数で狙うのは薄くなった歩兵の後ろの食糧庫らしい。
「面白い。夕食をもらいに来たんだ」
可愛らしい略奪を声に出して笑った。
「僕も向こうの前線をひっくり返せばいいんだね?」
「はい。ヨーリス将軍はそのように」
騎士は軍旗を掲げる。
鷹の羽が描かれていた。
「将軍までは遠い。今日は言うことを聞こうか」
「それがいいですよ」
億劫そうにヘイデン軍の奥から出撃する。
二人を囲むように剣士の隊が移動した。
まだこの将の前の戦場は盾と槍同士が揉み合っている。
「ほら」
丸いガラスのようなものを手から放った。
風船のようにふわふわと空をいく。
それが敵軍の頭上で弾けて落ちた。
薬液の匂いが拡がる。
ぎゃっと言う叫び声と共に前戦が乱れた。
アレスティアの兵士が突然意識が混濁したように暴れる。
敵も味方も分からずといった感じで盾を振り回し始めた。
同じような玉をもう一つ放って、将はまた後方へ引いていく。
「あれは味方も巻き添えが大きいですよ、アーヴィン」
「ただの興奮剤だよ。そんなに長い時間続かない。すぐに落ち着く」
撹乱された前線を見てヘイデンの将軍が怒鳴りかけた。
アーヴィンがムッとした顔で手のひらにもう一つ玉を乗せて見せる。
「僕まで来る必要なかったでしょ。
こんな腕力の戦い」
アーヴィンの小さな声は将軍まで届くわけがなかった。
けれど面倒臭いその表情で相手には十分伝わる。
「ランパート、僕らは明日が仕事の日。
今日は下がってるよ」
護衛の剣士とともに鷹の羽の旗が陣営へ下がった。
将軍の下からなかなか帰らないと思ったらオーヴェの副官が前線に配置した。
今日は作戦なし。
どんよりとした空気が隊に流れる。
リロイが全体の動きも見渡さなければならなくなった。
横長に配列する。
完璧な正面突破だった。
ヘイデンの方にも動きが起こる。
陣形が変わり、こちらと同じような力押しの形になった。
ヨーリス将軍は受けて立つ。
本当に同じ性格の将なのだと伝わった。
これは嫌だなあ。
リロイはじっと両軍を見る。
負傷者が大量に出る予感しかしない。
オーヴェの陣にいる団長たちを振り向いた。
シメネスの場所が分かる。
将軍から離れたところにいるようだ。
「今日中に敵の弓を倒す。殲滅せよ」
オーヴェの指示をそのまま号令した。
リロイはげんなりしながら馬上の人を見上げる。
直接指揮をしたい。
将軍の脳内は見えた。
生き残れ。
声に出さずにリロイは命じる。
ヘイデンは少し高い場所から下ってきた。
リロイは地形の影響で隊が自然と細くなる箇所を見つけた。
ヘイデン軍はそこから出るときに隙ができる。
ロード旅団はいち早くそこへ進んで盾と槍を構えた。
地形の出口で囲まれる形となり、ヘイデンの隊列は広がるか突破か迷う。
その一瞬でロードの兵士に捕まっていった。
「古参は下がれ! 弓は若い者で崩す!」
リロイの指示に応じ、前線の兵士が素早く交代する。
ロードを担当していた副官が敵の槍に衝かれた。
前線のぶつかり合いを突破したあたりで。
一旦退く古参兵に任せて下がらせる。
高所の平地へ出ると、ヘイデンの弓兵が狙いを定めていた。
「合図で突撃せよ!」
リロイの大声が響く。
リボルにだけそばから離れないように言うと、剣の柄の石を押しこんだ。
二、三度振ると近くの団員が飛び退く。
「……進め!」
剣を大きく薙ぎ払った。
荒地がめくれ上がりヘイデンの弓兵は体勢を崩す。
ロードの若い兵士たちが四列に分かれて突っ込んだ。
よろけた弓兵の隊を挟んで攻撃する。
「あまり深く行くな! 崩したら一度帰る!」
大ぶりな剣を振り下ろしながらリロイは叫ぶ。
分断されたヘイデンの弓部隊はロードの兵士に囲まれて沈んでいった。
「撤退!」
どこかの隊の隊長と旗を一緒に掴んだリロイが命じる。
若手中心の部隊は素早く自陣へ引いていった。
「リボル、この人を運んでいって」
リロイに命じられるまま、リボルがその人間を預かって走る。
日はまだもう少し出ていそうだ。
もう一回くらい行ってこられるか。
休憩に水場へ群がる兵士たちをコニーが出迎える。
クレイグは戻されていない。
他の隊を見ると、まだヘイデンの弓兵にも届かないところが多かった。
ロード旅団の方を、団長たちが見ている。
もう一回行ったらやりすぎか。
それとも行って見せつけるべきか。
オーヴェの副官がやられたのは好都合だ。
「休憩後もう一度出る。負傷者を確認しろ。
疲れた者も出なくていい。
明日の戦闘の方が本番だ。体力を保て」
ヨーリス将軍はヘイデン軍の真ん中より後方にいる。
旗印を見据えてリロイは笑った。
あれをとらえたい。
「元気な隊がいる」
臙脂色の上着のように見える布鎧を着て、馬上の将の一人が呟いた。
体格を見ても武器を使うとは思われない。
「あれがロード隊……、ロード旅団ですよ」
そばに立つ女性の騎士が教えた。
馬の首の位置に頭がある。
背の高い人だった。
「へえ」
束ねた髪にフードを被る。
こうするともう将は性別すら不明になった。
ロードの二度目の進軍を観察する。
今度は半数にも満たないくらいの数だ。
少数で狙うのは薄くなった歩兵の後ろの食糧庫らしい。
「面白い。夕食をもらいに来たんだ」
可愛らしい略奪を声に出して笑った。
「僕も向こうの前線をひっくり返せばいいんだね?」
「はい。ヨーリス将軍はそのように」
騎士は軍旗を掲げる。
鷹の羽が描かれていた。
「将軍までは遠い。今日は言うことを聞こうか」
「それがいいですよ」
億劫そうにヘイデン軍の奥から出撃する。
二人を囲むように剣士の隊が移動した。
まだこの将の前の戦場は盾と槍同士が揉み合っている。
「ほら」
丸いガラスのようなものを手から放った。
風船のようにふわふわと空をいく。
それが敵軍の頭上で弾けて落ちた。
薬液の匂いが拡がる。
ぎゃっと言う叫び声と共に前戦が乱れた。
アレスティアの兵士が突然意識が混濁したように暴れる。
敵も味方も分からずといった感じで盾を振り回し始めた。
同じような玉をもう一つ放って、将はまた後方へ引いていく。
「あれは味方も巻き添えが大きいですよ、アーヴィン」
「ただの興奮剤だよ。そんなに長い時間続かない。すぐに落ち着く」
撹乱された前線を見てヘイデンの将軍が怒鳴りかけた。
アーヴィンがムッとした顔で手のひらにもう一つ玉を乗せて見せる。
「僕まで来る必要なかったでしょ。
こんな腕力の戦い」
アーヴィンの小さな声は将軍まで届くわけがなかった。
けれど面倒臭いその表情で相手には十分伝わる。
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