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手にした戦果
主力、それとも捨て駒
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どうしよう。
リロイは疲労困憊な感じが取れていないロードの古参兵を気遣うように見た。
昨日、一番の戦果を上げたのはロード旅団だった。
食糧庫が偶然近く、晩御飯もいっぱい食べた。
オーヴェからまた新たに派遣された副官から、二日目は真ん中でと言われた。
実力を買われたのか。
もしくは嫌がらせか。
どっちでもいいけど。
リボルは拾った剣を握っている。
「昨日前線で負傷した兵が下がっているから今日は後ろの歩兵が薄いようだ」
「今日もまず盾を崩し、昨日他の隊がやり損ねた弓を狙う?」
人の言葉を操るリボルが新鮮だ。
「うん、それもいいんだけど……」
せっかく、敵の将軍にうんと近い場所にいる。
はっきり言って垂涎ものの好機。
リロイは地形を見回す。
今日は自陣側から見た時に下り気味の地形が広がっていた。
少し向こうに錐のように細く絞られていく道が見える。
敵の盾はあの道を通らないんじゃないかと思った。
一時的に狭まった道は危険。
的になるだけだから迂回して別の方から進んだ方がいい。
その道の両わきは少し高くなっていた。
でこぼこして隠れる場所が多そう。
その道を行けば敵将まであと少し。
だが主力が待ち構えている可能性が高かった。
向かって左奥が敵のヨーリス将軍の旗。
そのそばには鳥の羽の軍旗があった。
初めて見る。小隊のようだった。
中央奥にはもう一つ、知らない旗が立っている。
地色は銀で緑の葉が編まれて輪になりかけている。
最後までつながってはいないモチーフだ。
右奥の食糧庫は、……どこかに移動された。
リロイはふと隣を見た。
水を分けた隊がいる。
「……」
ヘイデン軍の間を忙しく走る人影を目端に置きながら近づいた。
隣の隊長はリロイが来るのに気づいてびくっとなる。
「今日は、共同作戦しませんか」
さらりと、リロイはそう言って笑った。
「あの道へ突っ込んでいってください」
リロイが指差した死地に、相手はとんでもないと首を振る。
「無理だ。うちはそんなに個人が強い部隊じゃない。
あの道に入ったら少人数の戦いになりそうだ」
「きっと主力がいます」
「じゃあ尚更うちには向いていない」
「逃げ帰ってきてください。ロード旅団が両脇から攻撃します」
隣の隊長はしきりに両手を交差させた。
「役割を逆にしよう。我々の隊が待ち伏せを」
「それは無理です」
悲しそうな丸い目でリロイは訴える。
「ロード旅団は昨日、目立ちました。
今日敵は我々の旗を見ても襲ってこないかもしれません。
襲われやすそうな方が逃げる役をしてくれないと作戦が成り立たない」
子どもっぽい顔をして、舌が辛辣。
隣の隊長はしばらく考えた。
「水場は本当に助かってるしなあ……」
「隊長が引き受けてくれないとできない作戦です」
別にリロイは引き受けないと水を分けるのをやめるとは言っていない。
しかし、それを引き合いに出さないことが良心を刺激した。
「主力を温存していいのなら相談に乗ってもいい」
傍からそう答えたのはオーヴェの副官だ。
「昨日、この隊は下って来る敵の勢いに負けて大勢の負傷者を出した。
今日もこんな良い位置で戦果を出さないのでは将軍に呼びつけられる」
この人は、オーヴェの部下だが、下部の将のことも心配してくれているらしい。
無理をさせないように気を配ってくれているのだと分かった。
「共同作戦自体は願ったりだ」
リロイが無邪気に見える笑い顔になる。
「ありがとうございます」
ロード旅団がいち早く駆け出して高所に潜んだ。
隣の隊の半数ほどが道の奥に吸い込まれるように消えていく。
向こう側から聞こえたのは、騎馬の足音。
怒号や悲鳴が上がった。
予想外の馬のせいでちょっと大変な任務になってしまう。
徒歩の軍勢は転がりながら逃げてきた。
それは本気で。
味方の兵士が通り過ぎた直後。
「放て!」
短弓を構えたリロイが号令した。
弓の弦を弾く音やクロスボウを発射する音が響く。
古参の兵たちが高い場所から次々狙った。
ヘイデン軍から上がる声は悲鳴に塗り変わっていく。
追ってきた部隊は総崩れした。
引き返す背中を見て、リロイは崖下へ滑り下りる。
ここから、ロードは手柄を取りにいく。
「ロード旅団! 走れ! 一気に敵将の元へ駆ける!」
矢の刺さった馬を奪って飛び乗った。
「リボル! 行こう!」
近くに潜んでいたリボルが馬の後ろに座る。
面食らったが、リロイはすぐに笑った。
「敵を追い払え、リボル」
不慣れな剣を握ってリボルは頷く。
「団長を一人にするな。すぐ追え!」
若い兵士が馬に騎乗して声を上げた。
小隊の一つがすぐにリロイを追いかけ始める。
味方の足音がついてくるのを確認しながらリロイは進んだ。
ヘイデンの軍の後ろを、鳥の羽の部隊が移動している。
昨日リロイたちがいたあたりを目指しているようだ。
その旗が少し止まる。
入れちがうように緑の輪の旗がヨーリス将軍の方へ移動し始めた。
リロイは疲労困憊な感じが取れていないロードの古参兵を気遣うように見た。
昨日、一番の戦果を上げたのはロード旅団だった。
食糧庫が偶然近く、晩御飯もいっぱい食べた。
オーヴェからまた新たに派遣された副官から、二日目は真ん中でと言われた。
実力を買われたのか。
もしくは嫌がらせか。
どっちでもいいけど。
リボルは拾った剣を握っている。
「昨日前線で負傷した兵が下がっているから今日は後ろの歩兵が薄いようだ」
「今日もまず盾を崩し、昨日他の隊がやり損ねた弓を狙う?」
人の言葉を操るリボルが新鮮だ。
「うん、それもいいんだけど……」
せっかく、敵の将軍にうんと近い場所にいる。
はっきり言って垂涎ものの好機。
リロイは地形を見回す。
今日は自陣側から見た時に下り気味の地形が広がっていた。
少し向こうに錐のように細く絞られていく道が見える。
敵の盾はあの道を通らないんじゃないかと思った。
一時的に狭まった道は危険。
的になるだけだから迂回して別の方から進んだ方がいい。
その道の両わきは少し高くなっていた。
でこぼこして隠れる場所が多そう。
その道を行けば敵将まであと少し。
だが主力が待ち構えている可能性が高かった。
向かって左奥が敵のヨーリス将軍の旗。
そのそばには鳥の羽の軍旗があった。
初めて見る。小隊のようだった。
中央奥にはもう一つ、知らない旗が立っている。
地色は銀で緑の葉が編まれて輪になりかけている。
最後までつながってはいないモチーフだ。
右奥の食糧庫は、……どこかに移動された。
リロイはふと隣を見た。
水を分けた隊がいる。
「……」
ヘイデン軍の間を忙しく走る人影を目端に置きながら近づいた。
隣の隊長はリロイが来るのに気づいてびくっとなる。
「今日は、共同作戦しませんか」
さらりと、リロイはそう言って笑った。
「あの道へ突っ込んでいってください」
リロイが指差した死地に、相手はとんでもないと首を振る。
「無理だ。うちはそんなに個人が強い部隊じゃない。
あの道に入ったら少人数の戦いになりそうだ」
「きっと主力がいます」
「じゃあ尚更うちには向いていない」
「逃げ帰ってきてください。ロード旅団が両脇から攻撃します」
隣の隊長はしきりに両手を交差させた。
「役割を逆にしよう。我々の隊が待ち伏せを」
「それは無理です」
悲しそうな丸い目でリロイは訴える。
「ロード旅団は昨日、目立ちました。
今日敵は我々の旗を見ても襲ってこないかもしれません。
襲われやすそうな方が逃げる役をしてくれないと作戦が成り立たない」
子どもっぽい顔をして、舌が辛辣。
隣の隊長はしばらく考えた。
「水場は本当に助かってるしなあ……」
「隊長が引き受けてくれないとできない作戦です」
別にリロイは引き受けないと水を分けるのをやめるとは言っていない。
しかし、それを引き合いに出さないことが良心を刺激した。
「主力を温存していいのなら相談に乗ってもいい」
傍からそう答えたのはオーヴェの副官だ。
「昨日、この隊は下って来る敵の勢いに負けて大勢の負傷者を出した。
今日もこんな良い位置で戦果を出さないのでは将軍に呼びつけられる」
この人は、オーヴェの部下だが、下部の将のことも心配してくれているらしい。
無理をさせないように気を配ってくれているのだと分かった。
「共同作戦自体は願ったりだ」
リロイが無邪気に見える笑い顔になる。
「ありがとうございます」
ロード旅団がいち早く駆け出して高所に潜んだ。
隣の隊の半数ほどが道の奥に吸い込まれるように消えていく。
向こう側から聞こえたのは、騎馬の足音。
怒号や悲鳴が上がった。
予想外の馬のせいでちょっと大変な任務になってしまう。
徒歩の軍勢は転がりながら逃げてきた。
それは本気で。
味方の兵士が通り過ぎた直後。
「放て!」
短弓を構えたリロイが号令した。
弓の弦を弾く音やクロスボウを発射する音が響く。
古参の兵たちが高い場所から次々狙った。
ヘイデン軍から上がる声は悲鳴に塗り変わっていく。
追ってきた部隊は総崩れした。
引き返す背中を見て、リロイは崖下へ滑り下りる。
ここから、ロードは手柄を取りにいく。
「ロード旅団! 走れ! 一気に敵将の元へ駆ける!」
矢の刺さった馬を奪って飛び乗った。
「リボル! 行こう!」
近くに潜んでいたリボルが馬の後ろに座る。
面食らったが、リロイはすぐに笑った。
「敵を追い払え、リボル」
不慣れな剣を握ってリボルは頷く。
「団長を一人にするな。すぐ追え!」
若い兵士が馬に騎乗して声を上げた。
小隊の一つがすぐにリロイを追いかけ始める。
味方の足音がついてくるのを確認しながらリロイは進んだ。
ヘイデンの軍の後ろを、鳥の羽の部隊が移動している。
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