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はじまりの庭 ※過去編です。
剣をもちいて剣によらず 9
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タバクの王都はキュシェの領地に似ていた。
もちろん都市化している。
農地は自給のためにわずかに確保されているだけだ。
他は舗装され、病院や裁判所まである。
機能しているかどうかは微妙なところだ。
「タバク王、お目通り叶えていただき深謝致します」
宮殿にて挨拶したクレイグに身振りでやめるよう示す。
「難しい言葉なんか言われたってよく分からん。
堅苦しい行儀なんていらないんだ。クルバが通した。
それだけで足りる」
玉座の周りに並べた人間たちは、もともとガルザルカの自治を担っていた者。
この都は王政前の仕組みをほぼそのまま移植している。
キュシェの領地と雰囲気が似ているのはそのせいだ。
「本当にすごいおじいちゃんだなあ。そして孫か?」
「……」
そういう感覚が近くてクルバは仲間になったと思われた。
髪を伸ばしている途中であるらしい。
中途半端な長さの焦茶色の髪は、巻き上がった犬のしっぽのように束ねられていた。
歳のころは四十手前。まだもう少しは頭領としてもやれそうな人である。
まくった袖から刀疵がのぞいていた。
つい最近まで先頭に立って率いてきた人。
タバクを見ながらクレイグは立ち上がる。
「おじいちゃんには椅子を用意してやれ。孫は立ってて大丈夫だな。
一応俺は王様だからそうしろってこいつらがぁ」
使者を立たせているのを人のせいにしてタバクは笑った。
「クレイグです。できればお見知りおき願います」
「孫のクレイグな」
孫ではない。
「リヴェルノートの騎士団長ロディオン。
王政を認めるかどうかの相談したいから、俺が話せる人間かどうか先に確認にきた。
そういうことだったな?」
自分の言葉で噛み下すあたり、タバクは話せる。
クレイグの後ろでがたごとと椅子が用意された。
ふうっと息を吐く気配があったから、おじいちゃんは無事座ったに違いない。
「王政を開始されて、今、国政をどのようにお考えですか?」
携帯用の筆記具を取り出して質問するクレイグを興味深そうに見つめていた。
「面倒くせえことが多いもんだ。考えてたよりずっとな。
盗賊の時はみんな上手くやれてたんだ。
ところが国となったら偉そうにするだけじゃ足らんと言われる」
盗賊の時も自然にこなしていたのだろう。
タバクはもともとリーダー性が備わっていた。
国となればそれを明文化しなければならなくなる。
その周知ができなかった。
「制圧した俺たちが一枚岩でなきゃ、ガルザルカの連中はすぐに反乱を起こす。
上手くやってくれって言ってるのにゼミンはキュシェに突っかかるんだ。
二人合わせたらこの国の人数の一割だ。共倒れなんてさせられないってのに」
「その面倒くさい思いを抱えてなお、王であり続けたいと願っておられますか?」
クレイグのその質問にタバクは腕を組む。
「王であり続けるしかない。他にどうしろってんだ」
タバクはやはり、君臨することは王政であると理解しているのだ。
「では、タバク王に問います。
キュシェ卿とゼミン卿の諍いをどう収める算段でしょう?」
どこまで幹部の現在地を把握している?
「どうって……」
突きつけられた試問にタバクは不愉快そうな表情になる。
クレイグはさらに重ねた。
「タバク王政のガルザルカの発展にとって、不要なのはどちらですか」
「どっちも俺の手下だ。切らねえ」
頭領らしい答えがくる。
「国の方針から外れる人間は要職を解く必要があります。
土地のやり方を守り、領民を落ち着かせ、盗賊ともうまく付き合えるキュシェ卿。
それに対してゼミン卿は支配層と労働階級を明確に分け、人を使い捨てる。
タバク王の見る将来に近いのはどちらですか?」
「そのうちうまくやるようになる。黙ってみといてやるのが親心だ」
「クルバ卿は、いかがです?」
クレイグの真剣な顔を、タバク王は訝しむ目で見返した。
「クルバはうまくやってるだろ。あそこは人数は多いが民の不満なんか聞いたことがねえ」
「それはクルバ卿が戦斧を握っているからです」
それの何が悪いと、タバクの表情は曇る。
「ビビらせとくのも手だろうが。
実際理由もなくぶん殴ってるわけでもない。何か問題か?」
「クルバ卿は王都と接しています。
今は恐怖で抑圧されておりますが、民衆の戦力が整えば一斉に蜂起されますよ。
その勢いはここまで及ぶでしょう。クルバ領は国内最大の火薬庫です」
「クルバが一番失敗してるって言いたいのか」
タバクが明らかに不機嫌になった。
部下のそれぞれのやり方を尊重して今までやってきた頭領である。
特にクルバには信頼を置いていた。
その彼を一番危険な状態にあるとして指摘されては気分が悪い。
「俺たちは剣で得てきたという自負がある。
それは王になった、国ができたと言ったところで簡単には譲れない。
軽々しくつついて揶揄うなよ」
タバクは従者の一人から長剣を奪うと玉座を下りてクレイグの前に来た。
「王政を、俺たちを認めないと報告する気か?
簡単な方法を俺は知ってるぞ。使者の首を刎ねて返してやれば大抵の要求は通る」
「左様ですね」
いつでもメイスを抜ける体勢でクレイグは答える。
王の前に武器の携帯が許された時から感じていた。
タバクはそこらの騎士よりも強いという自信がある。
脇に並んだ重臣たちが王を止めようとそわそわし出した。
「タバク王が剣でもって私たちの命を奪うなら、ロディオン団長は失望します。
部下たちの行く末を思ってガルザルカに乗りこんだ気概を認めていらしたんです」
「そうか」
剣を鞘から抜き去る音がする。
「今のままでは王がいなくなれば国がなくなる。
それは盗賊団と同じです」
「クレイグには何が見えるってんだ?」
タバクの剣が首を刎ねる勢いで空を薙いだ。
メイスを両手で握ったクレイグは渾身の力で打ち当てる。
「タバク王亡き後、残った血肉をむしり取られていくガルザルカ」
まっすぐ目を見返しながらクレイグは言った。
メイスが弾き上げられるのを堪えて踏ん張る。
踵が擦った敷物は、ガルザルカの特産品だった。
「タバク王の望みは部下の余生の安泰。
キュシェ卿はそのように受け取られていました。
相違ございませんか?」
「そうだ。俺はそのつもりだった」
背の低いクレイグの頭上から剣を振り下ろしてタバクは怒鳴る。
体がしなるように動いた。
クレイグのメイスは盗賊の王の剣を押し返す。
「立派な国にしたいとか、でかい領土が欲しいとか、そんなことは言っちゃいねえ。
ただ、ここに、暮らしていく。それが望みだ」
「その望みを叶えるなら、王政でなくともできます。
今はそれぞれの領地が腕力や欲得で取り合ってる。
結果国としての力は揃わず、複数の国の介入を許してしまっています」
「なら締め出して、俺が国中を見てまわればいい話だ」
「寿命が尽きるまでですか」
クレイグがふいと体を回して剣を避けた。
バランスを崩したタバクの脇腹を狙ってメイスが唸る。
「現実的ではないですね」
一瞬の躊躇いの後、クレイグは武器を止めた。
完全に取られたタバクはなおもクレイグを睨む。
「ちゃんとやれ」
「ここは王宮です」
もう十分とばかりにクレイグはタバクから一歩離れた。
臣下たちが駆け寄ってきてタバクから剣を取り上げる。
「使者に斬りかかるなんて王様は見たことありませんよ。
謝るんです。国際問題になる前に」
諌めるのはメーメット並みのおじいちゃんだ。
「えー……」
口を尖らせたタバクはおじいちゃんを見る。
次にメーメットが静かに座しているのを見て意外そうな顔をした。
それからクレイグをばつが悪そうに見やる。
「謝る」
「お受けします」
メイスを収めてクレイグは礼をした。
剣を取り上げられた王は腰に手を当てて嘆息する。
「クレイグ、強いんだな。絵空事の好きなガキだと思った」
「一緒に育った幼馴染がもっと剣が得意です」
「へえ、今度連れてこい」
「ガルザルカが長く続く道を選んでくれるなら」
道で行き合った者同士のような会話にその場の緊張が解けた。
クレイグよりも百戦錬磨のタバクは、何か感じ取ったのか上を見て笑う。
聞きたいことはあるが今は国政の向きを決めなければと思い出した。
「クレイグは俺の知らない手下の裏の顔を知ってるな?
俺がつかんでる情報と比べっこしよう」
立ったままタバクは持ちかける。
タバクの耳にもメルザルカの動きは入ってきていた。
キュシェの手腕もゼミンの画策も知っている。
キュシェは領地の人間ばかりではなく外国からやってくる商人にも好かれている。
きっと外交向き。
ゼミンは焦りからキュシェを抹殺しようとしている。
成果を示さないとタバクに失望されると思い込んで必要以上にメルザルカに依存してしまった。
民を使い捨てるクセが抜けず、他人の領地からいまだに奪ってくる。
クルバはタバクの王政を支えるためにその威圧で内患を取り除いたつもりだ。
しかし民は怯え、何かあっては酷い目にあうと硬直している。
この抑圧の仕方では長く持たない。人は必ず老いるのだ。
ヘイデンの属国化の話は望むなら受けてもいい。
しかし線をしっかりと引かないとヘイデンの分身のようになり、ガルザルカの独自性は失われる。
「王政については、支配と運営を分けるという方法もあります」
「どうやって?」
また難しい話が出てきたなあ、と、タバクは眉を顰める。
「主権を国民に戻すのです」
「それじゃあ、王様は偉くない?」
「偉いです。国を導く存在として、王や貴族は権威だけを持つ。
議会を開こう、あの国と仲間になろう、などと国がすることを発案するのは王や貴族の役目です。
実際に議会で話し合ったり、国の産業を推進するのは国民の組織です」
「俺は偉そうにしているだけでいいということか?」
「平たく言えばそうですね」
「でも、そんなことしたら反乱が起こって俺たちは追い出されないか?」
「うまくやるんです」
クレイグは鞘に収めたメイスの柄を握った。
「うまくやった話を、私は聞いたことがあります。
その国はまだ存在していますよ。四十年経つ現在でも」
それはメーメットの若い頃。
ハルシャと二人でリヴェルノートの騎士団に入ったばかりの頃の話だった。
もちろん都市化している。
農地は自給のためにわずかに確保されているだけだ。
他は舗装され、病院や裁判所まである。
機能しているかどうかは微妙なところだ。
「タバク王、お目通り叶えていただき深謝致します」
宮殿にて挨拶したクレイグに身振りでやめるよう示す。
「難しい言葉なんか言われたってよく分からん。
堅苦しい行儀なんていらないんだ。クルバが通した。
それだけで足りる」
玉座の周りに並べた人間たちは、もともとガルザルカの自治を担っていた者。
この都は王政前の仕組みをほぼそのまま移植している。
キュシェの領地と雰囲気が似ているのはそのせいだ。
「本当にすごいおじいちゃんだなあ。そして孫か?」
「……」
そういう感覚が近くてクルバは仲間になったと思われた。
髪を伸ばしている途中であるらしい。
中途半端な長さの焦茶色の髪は、巻き上がった犬のしっぽのように束ねられていた。
歳のころは四十手前。まだもう少しは頭領としてもやれそうな人である。
まくった袖から刀疵がのぞいていた。
つい最近まで先頭に立って率いてきた人。
タバクを見ながらクレイグは立ち上がる。
「おじいちゃんには椅子を用意してやれ。孫は立ってて大丈夫だな。
一応俺は王様だからそうしろってこいつらがぁ」
使者を立たせているのを人のせいにしてタバクは笑った。
「クレイグです。できればお見知りおき願います」
「孫のクレイグな」
孫ではない。
「リヴェルノートの騎士団長ロディオン。
王政を認めるかどうかの相談したいから、俺が話せる人間かどうか先に確認にきた。
そういうことだったな?」
自分の言葉で噛み下すあたり、タバクは話せる。
クレイグの後ろでがたごとと椅子が用意された。
ふうっと息を吐く気配があったから、おじいちゃんは無事座ったに違いない。
「王政を開始されて、今、国政をどのようにお考えですか?」
携帯用の筆記具を取り出して質問するクレイグを興味深そうに見つめていた。
「面倒くせえことが多いもんだ。考えてたよりずっとな。
盗賊の時はみんな上手くやれてたんだ。
ところが国となったら偉そうにするだけじゃ足らんと言われる」
盗賊の時も自然にこなしていたのだろう。
タバクはもともとリーダー性が備わっていた。
国となればそれを明文化しなければならなくなる。
その周知ができなかった。
「制圧した俺たちが一枚岩でなきゃ、ガルザルカの連中はすぐに反乱を起こす。
上手くやってくれって言ってるのにゼミンはキュシェに突っかかるんだ。
二人合わせたらこの国の人数の一割だ。共倒れなんてさせられないってのに」
「その面倒くさい思いを抱えてなお、王であり続けたいと願っておられますか?」
クレイグのその質問にタバクは腕を組む。
「王であり続けるしかない。他にどうしろってんだ」
タバクはやはり、君臨することは王政であると理解しているのだ。
「では、タバク王に問います。
キュシェ卿とゼミン卿の諍いをどう収める算段でしょう?」
どこまで幹部の現在地を把握している?
「どうって……」
突きつけられた試問にタバクは不愉快そうな表情になる。
クレイグはさらに重ねた。
「タバク王政のガルザルカの発展にとって、不要なのはどちらですか」
「どっちも俺の手下だ。切らねえ」
頭領らしい答えがくる。
「国の方針から外れる人間は要職を解く必要があります。
土地のやり方を守り、領民を落ち着かせ、盗賊ともうまく付き合えるキュシェ卿。
それに対してゼミン卿は支配層と労働階級を明確に分け、人を使い捨てる。
タバク王の見る将来に近いのはどちらですか?」
「そのうちうまくやるようになる。黙ってみといてやるのが親心だ」
「クルバ卿は、いかがです?」
クレイグの真剣な顔を、タバク王は訝しむ目で見返した。
「クルバはうまくやってるだろ。あそこは人数は多いが民の不満なんか聞いたことがねえ」
「それはクルバ卿が戦斧を握っているからです」
それの何が悪いと、タバクの表情は曇る。
「ビビらせとくのも手だろうが。
実際理由もなくぶん殴ってるわけでもない。何か問題か?」
「クルバ卿は王都と接しています。
今は恐怖で抑圧されておりますが、民衆の戦力が整えば一斉に蜂起されますよ。
その勢いはここまで及ぶでしょう。クルバ領は国内最大の火薬庫です」
「クルバが一番失敗してるって言いたいのか」
タバクが明らかに不機嫌になった。
部下のそれぞれのやり方を尊重して今までやってきた頭領である。
特にクルバには信頼を置いていた。
その彼を一番危険な状態にあるとして指摘されては気分が悪い。
「俺たちは剣で得てきたという自負がある。
それは王になった、国ができたと言ったところで簡単には譲れない。
軽々しくつついて揶揄うなよ」
タバクは従者の一人から長剣を奪うと玉座を下りてクレイグの前に来た。
「王政を、俺たちを認めないと報告する気か?
簡単な方法を俺は知ってるぞ。使者の首を刎ねて返してやれば大抵の要求は通る」
「左様ですね」
いつでもメイスを抜ける体勢でクレイグは答える。
王の前に武器の携帯が許された時から感じていた。
タバクはそこらの騎士よりも強いという自信がある。
脇に並んだ重臣たちが王を止めようとそわそわし出した。
「タバク王が剣でもって私たちの命を奪うなら、ロディオン団長は失望します。
部下たちの行く末を思ってガルザルカに乗りこんだ気概を認めていらしたんです」
「そうか」
剣を鞘から抜き去る音がする。
「今のままでは王がいなくなれば国がなくなる。
それは盗賊団と同じです」
「クレイグには何が見えるってんだ?」
タバクの剣が首を刎ねる勢いで空を薙いだ。
メイスを両手で握ったクレイグは渾身の力で打ち当てる。
「タバク王亡き後、残った血肉をむしり取られていくガルザルカ」
まっすぐ目を見返しながらクレイグは言った。
メイスが弾き上げられるのを堪えて踏ん張る。
踵が擦った敷物は、ガルザルカの特産品だった。
「タバク王の望みは部下の余生の安泰。
キュシェ卿はそのように受け取られていました。
相違ございませんか?」
「そうだ。俺はそのつもりだった」
背の低いクレイグの頭上から剣を振り下ろしてタバクは怒鳴る。
体がしなるように動いた。
クレイグのメイスは盗賊の王の剣を押し返す。
「立派な国にしたいとか、でかい領土が欲しいとか、そんなことは言っちゃいねえ。
ただ、ここに、暮らしていく。それが望みだ」
「その望みを叶えるなら、王政でなくともできます。
今はそれぞれの領地が腕力や欲得で取り合ってる。
結果国としての力は揃わず、複数の国の介入を許してしまっています」
「なら締め出して、俺が国中を見てまわればいい話だ」
「寿命が尽きるまでですか」
クレイグがふいと体を回して剣を避けた。
バランスを崩したタバクの脇腹を狙ってメイスが唸る。
「現実的ではないですね」
一瞬の躊躇いの後、クレイグは武器を止めた。
完全に取られたタバクはなおもクレイグを睨む。
「ちゃんとやれ」
「ここは王宮です」
もう十分とばかりにクレイグはタバクから一歩離れた。
臣下たちが駆け寄ってきてタバクから剣を取り上げる。
「使者に斬りかかるなんて王様は見たことありませんよ。
謝るんです。国際問題になる前に」
諌めるのはメーメット並みのおじいちゃんだ。
「えー……」
口を尖らせたタバクはおじいちゃんを見る。
次にメーメットが静かに座しているのを見て意外そうな顔をした。
それからクレイグをばつが悪そうに見やる。
「謝る」
「お受けします」
メイスを収めてクレイグは礼をした。
剣を取り上げられた王は腰に手を当てて嘆息する。
「クレイグ、強いんだな。絵空事の好きなガキだと思った」
「一緒に育った幼馴染がもっと剣が得意です」
「へえ、今度連れてこい」
「ガルザルカが長く続く道を選んでくれるなら」
道で行き合った者同士のような会話にその場の緊張が解けた。
クレイグよりも百戦錬磨のタバクは、何か感じ取ったのか上を見て笑う。
聞きたいことはあるが今は国政の向きを決めなければと思い出した。
「クレイグは俺の知らない手下の裏の顔を知ってるな?
俺がつかんでる情報と比べっこしよう」
立ったままタバクは持ちかける。
タバクの耳にもメルザルカの動きは入ってきていた。
キュシェの手腕もゼミンの画策も知っている。
キュシェは領地の人間ばかりではなく外国からやってくる商人にも好かれている。
きっと外交向き。
ゼミンは焦りからキュシェを抹殺しようとしている。
成果を示さないとタバクに失望されると思い込んで必要以上にメルザルカに依存してしまった。
民を使い捨てるクセが抜けず、他人の領地からいまだに奪ってくる。
クルバはタバクの王政を支えるためにその威圧で内患を取り除いたつもりだ。
しかし民は怯え、何かあっては酷い目にあうと硬直している。
この抑圧の仕方では長く持たない。人は必ず老いるのだ。
ヘイデンの属国化の話は望むなら受けてもいい。
しかし線をしっかりと引かないとヘイデンの分身のようになり、ガルザルカの独自性は失われる。
「王政については、支配と運営を分けるという方法もあります」
「どうやって?」
また難しい話が出てきたなあ、と、タバクは眉を顰める。
「主権を国民に戻すのです」
「それじゃあ、王様は偉くない?」
「偉いです。国を導く存在として、王や貴族は権威だけを持つ。
議会を開こう、あの国と仲間になろう、などと国がすることを発案するのは王や貴族の役目です。
実際に議会で話し合ったり、国の産業を推進するのは国民の組織です」
「俺は偉そうにしているだけでいいということか?」
「平たく言えばそうですね」
「でも、そんなことしたら反乱が起こって俺たちは追い出されないか?」
「うまくやるんです」
クレイグは鞘に収めたメイスの柄を握った。
「うまくやった話を、私は聞いたことがあります。
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