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Allied Forces
魔法使いが杖を手離すとき
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コーマックの警護にジェロディが就く。
そのジェロディは午後一で手先の細かい作業をしていた。
「こんなの20年以上やってなかったねえ。
どうするんだっけ……?」
紐を編んで白い石を包む。
耳に引っかけられるように金具に編んでいくので急いでいる。
もうすぐ出かける時間だった。
発端は昼食どきのこと。
魔法使いの杖の話になったのである。
「王宮のホールには杖持ってけないけど、何か代わりになる物、持ってる?」
孤児院をモスに任せて呑気な師匠は軽く聞いてきた。
いいえ? という顔の魔法使いたちを見て首を傾げる。
「もう何回か王宮に上がってるよね? 他の魔法使いに教えてもらってない?」
「他の魔法使いに話を聞けるような時には上がったことないんですよ」
「片手落ちか」
コーマックがジェロディに白々と呟いた。
「王宮の規則なんか、誰かが教えると思うよね」
この場にはいない味方に同意を求める。
「ジェロディから学んでいると考えるだろうな」
コーマックははっきりと否定した。
それからグラントを見る。
「宴会に直接参加しない従者に杖を預けなければならないだろう?」
「そこまでは持っていけるの?」
グラントの問いに、そこからか、という顔のじじい。
「王宮に上がる際は王の御前に行かない従者を必ず伴え。その者に杖を預けておく」
「そうすれば、何か起こってもすぐに対抗できるでしょ。
魔法使いは杖と一緒でないと実力出せないから」
今まで教えるのを忘れていたジェロディは、それでも大して悪びれない。
「本当はだめなんだけど、魔法使いはそれじゃ心細いから杖の代わりを持っていく。
シェリー殿下は本か……。持ったまま踊れないね。
グラントやケリーは代用品に心当たりある?」
貿易島が浮かんだ。
そういうのが要るなら、ずっと前に聞きたかった。
「ありません。ジェロディのガラクタ箱の中に入ってないですか?」
「ガラクタ……、宝箱だよ?」
「今まじめに聞いてるので早く答えて」
「うーん、とね……」
ジェロディはぐるっと空間を見回す。
そのうちに黙って食事の続きをとり始めたのでなかったのだ。
「じいさんなんか持ってない?」
魔法使いでもない元上司に頼る。
頼られた老将は家人に何か言いつけた。
金物の入った小箱を持って来させて中を探す。
数秒だけそれを見つめて、それから口いっぱいに何かを頬張っているケリーに差し出した。
「これは使えるか」
慌てて咀嚼した彼女はさっと拭いた両手で受け取る。
何ですか、と隣のグラントを見た。
暗い色調の赤い石が嵌められた指輪。
古い。どこかの家紋を表しているようだ。
「魔力を貯めておける石だよ。着けてみて、何か試してごらん」
ケリーは素直に左手の人差し指につけた。
えい、と力をこめてみる。
石のように強くなった拳を感動して見つめた。
「テーブルを素手で叩き割れそうです。勇ましいことができちゃう」
「やめてください」
使えそうなので魔法は引っ込めてもらう。
「シェリー殿下はこういうのじゃダメなんだよねえ」
ひとの小箱を勝手に漁りはじめたジェロディが言った。
「精霊が宿ったもの。……グラントの精霊たちの本体は?
小さいものはない?」
「……」
オークは砦。フットマンは箒。スイートはミルクポット。
バレルは酒樽。エコーは洞窟の中の鍾乳石。
「モス」
グラントは自分の荷物を見に行った。
すぐ小瓶を手にして戻ってくる。
シェリーの傍に置いた。
「これはモスの本体。
乾いているけれど、ちゃんと生きてる。休眠中だ」
シェリーは笑いながら小瓶を探る。
「意外と小さい」
「そう。気に入った土地ではあっという間に山をひとつ覆ってしまえる。
この本体さえ無事なら、引きちぎられても消えないんだ」
「苔……、かぁ…」
ジェロディが戸惑った顔をした。
どこに身につけて持っていく。グラントの好きな精霊であることは知っているが。
「……リビー」
床の上に杖を差し落として、仲の良い精霊の名を呼んだ。
杉の枝が床から生えてくる。
「その辺に、いい花咲いてないか?
特別っぽくて、香りが良くって、王様も欲しくなるやつがいい」
「久しぶりなのにわがままか、ジェロディ」
精霊の声が笑った。
葉のさわさわいう音がする。
「これでどう?」
白い小花のたくさんついた植物を床に投げ落とした。
萼に近づくほど淡い紅色にグラデーションしている。
それは森のリビーの近くにしか咲かないことを、グラントは知っていた。
「ありがとう。今夜使うよ」
「たまには顔見せて」
「リビーのとこまで? もう年取ったから行けない」
「僕はとっくに年寄りだけど、ジェロディのお願いを叶えてるのに」
「動いてないだろ」
葉が心地いい音をさせながら消えていく。
ジェロディはシェリーの家人に飾りを作るよう言った。
「グラントのはあれだろう? なんかあのどうしようもない石」
師匠の指導不足が原因なのにその言い草だ。
「もらったんだから、文句はないです」
うっそりとグラントは言い返す。
「使い方次第だからねえ」
「罠とか呪いとか、役に立ちます」
「呪うんじゃないよ? 王宮で」
「時間はかかるけどずっと指示された通り働くんです。
健気な石ですよ」
ジェロディは高い声で短く笑った。
「まあ、あれだ。教え忘れてたことを今伝えると」
三人の魔法使いを見やる。
「魔法使いが王宮で杖を手離す時は、手を切り落とされた時くらいって話」
グラントが言葉を選べとそれを睨んだ。
子どもと新人に聞かせてはいけない言葉というものがある。
そのジェロディは午後一で手先の細かい作業をしていた。
「こんなの20年以上やってなかったねえ。
どうするんだっけ……?」
紐を編んで白い石を包む。
耳に引っかけられるように金具に編んでいくので急いでいる。
もうすぐ出かける時間だった。
発端は昼食どきのこと。
魔法使いの杖の話になったのである。
「王宮のホールには杖持ってけないけど、何か代わりになる物、持ってる?」
孤児院をモスに任せて呑気な師匠は軽く聞いてきた。
いいえ? という顔の魔法使いたちを見て首を傾げる。
「もう何回か王宮に上がってるよね? 他の魔法使いに教えてもらってない?」
「他の魔法使いに話を聞けるような時には上がったことないんですよ」
「片手落ちか」
コーマックがジェロディに白々と呟いた。
「王宮の規則なんか、誰かが教えると思うよね」
この場にはいない味方に同意を求める。
「ジェロディから学んでいると考えるだろうな」
コーマックははっきりと否定した。
それからグラントを見る。
「宴会に直接参加しない従者に杖を預けなければならないだろう?」
「そこまでは持っていけるの?」
グラントの問いに、そこからか、という顔のじじい。
「王宮に上がる際は王の御前に行かない従者を必ず伴え。その者に杖を預けておく」
「そうすれば、何か起こってもすぐに対抗できるでしょ。
魔法使いは杖と一緒でないと実力出せないから」
今まで教えるのを忘れていたジェロディは、それでも大して悪びれない。
「本当はだめなんだけど、魔法使いはそれじゃ心細いから杖の代わりを持っていく。
シェリー殿下は本か……。持ったまま踊れないね。
グラントやケリーは代用品に心当たりある?」
貿易島が浮かんだ。
そういうのが要るなら、ずっと前に聞きたかった。
「ありません。ジェロディのガラクタ箱の中に入ってないですか?」
「ガラクタ……、宝箱だよ?」
「今まじめに聞いてるので早く答えて」
「うーん、とね……」
ジェロディはぐるっと空間を見回す。
そのうちに黙って食事の続きをとり始めたのでなかったのだ。
「じいさんなんか持ってない?」
魔法使いでもない元上司に頼る。
頼られた老将は家人に何か言いつけた。
金物の入った小箱を持って来させて中を探す。
数秒だけそれを見つめて、それから口いっぱいに何かを頬張っているケリーに差し出した。
「これは使えるか」
慌てて咀嚼した彼女はさっと拭いた両手で受け取る。
何ですか、と隣のグラントを見た。
暗い色調の赤い石が嵌められた指輪。
古い。どこかの家紋を表しているようだ。
「魔力を貯めておける石だよ。着けてみて、何か試してごらん」
ケリーは素直に左手の人差し指につけた。
えい、と力をこめてみる。
石のように強くなった拳を感動して見つめた。
「テーブルを素手で叩き割れそうです。勇ましいことができちゃう」
「やめてください」
使えそうなので魔法は引っ込めてもらう。
「シェリー殿下はこういうのじゃダメなんだよねえ」
ひとの小箱を勝手に漁りはじめたジェロディが言った。
「精霊が宿ったもの。……グラントの精霊たちの本体は?
小さいものはない?」
「……」
オークは砦。フットマンは箒。スイートはミルクポット。
バレルは酒樽。エコーは洞窟の中の鍾乳石。
「モス」
グラントは自分の荷物を見に行った。
すぐ小瓶を手にして戻ってくる。
シェリーの傍に置いた。
「これはモスの本体。
乾いているけれど、ちゃんと生きてる。休眠中だ」
シェリーは笑いながら小瓶を探る。
「意外と小さい」
「そう。気に入った土地ではあっという間に山をひとつ覆ってしまえる。
この本体さえ無事なら、引きちぎられても消えないんだ」
「苔……、かぁ…」
ジェロディが戸惑った顔をした。
どこに身につけて持っていく。グラントの好きな精霊であることは知っているが。
「……リビー」
床の上に杖を差し落として、仲の良い精霊の名を呼んだ。
杉の枝が床から生えてくる。
「その辺に、いい花咲いてないか?
特別っぽくて、香りが良くって、王様も欲しくなるやつがいい」
「久しぶりなのにわがままか、ジェロディ」
精霊の声が笑った。
葉のさわさわいう音がする。
「これでどう?」
白い小花のたくさんついた植物を床に投げ落とした。
萼に近づくほど淡い紅色にグラデーションしている。
それは森のリビーの近くにしか咲かないことを、グラントは知っていた。
「ありがとう。今夜使うよ」
「たまには顔見せて」
「リビーのとこまで? もう年取ったから行けない」
「僕はとっくに年寄りだけど、ジェロディのお願いを叶えてるのに」
「動いてないだろ」
葉が心地いい音をさせながら消えていく。
ジェロディはシェリーの家人に飾りを作るよう言った。
「グラントのはあれだろう? なんかあのどうしようもない石」
師匠の指導不足が原因なのにその言い草だ。
「もらったんだから、文句はないです」
うっそりとグラントは言い返す。
「使い方次第だからねえ」
「罠とか呪いとか、役に立ちます」
「呪うんじゃないよ? 王宮で」
「時間はかかるけどずっと指示された通り働くんです。
健気な石ですよ」
ジェロディは高い声で短く笑った。
「まあ、あれだ。教え忘れてたことを今伝えると」
三人の魔法使いを見やる。
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