ただの魔法使いです

端木 子恭

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くずれゆく森

新しい冬の過ごし方

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 友だちが1人都から発った。

 とはいえシェリーはシェリーで忙しいのだった。
 新しい事業の話を詰める。

 グラントと入れ替わりでラグラスから頭領たちがやってきた。

 トーニャと、彼女に付き添ってきたラーポとエルネスト。

 ラーポはまず、配下の魔物を1人紹介してくれた。
 兵士の姿をしている。
 手紙を彼に託してくれれば半日ほどでラグラスへ届く。
 ぜひ毎日でも手紙を書くといい。

 エルネストからも配下の魔物をいく人か置いていく。
 彼らは使い古された騎馬よけの精霊たち。
 力が強いので鉄道の雪はね要因として雇ってくれと言う。

 リゼットとエリンも交えてホールは賑やかになった。

 トーニャが持っている食器の図案を並べていた。
 エリンが少し今様にアレンジしてみせる。

 リゼットもトーニャもこのような感じかと真似して描き出した。
 アリアは一生懸命に図柄を説明している。



 エルネストとラーポがそれぞれ家人に用事を果たしにホールを出た。
 それを見計らったようにリゼットは婦人たちの頭を集める。

「内緒のご報告があります。
 特別な仲間にだけ先に教えたいことがあるのです」

 背の足りないアリアがシェリーに抱き抱えられた。

 いったん背を伸ばしたリゼットはまずトーニャを見る。

「結婚が決まりましたよ」

 にっこりと笑った彼女はどこか誇らしそうだ。
 頭を寄せた全員を見回して宣言する。

「人魚の予言が当たったのです。
 トーニャ、ありがとう。あなたの一言で幸運を掴めました」
「おめでとうございます」

 全員で家族のように喜んだ。
 もろ手をあげて。
 
 舞踏会の後、いまかいまかと待っていた。

「まさか豪を煮やしてリゼット様から求婚されました?」

 エリンが咄嗟に尋ねた。

「ケイレブからですよ、もちろん」
「ああ、そこはさすがに」

 ほっとするエリンと口を尖らせるリゼット。

 シェリーはぽかんとそちらを見ている。
 トーニャが笑みをたたえて聞いた。

「いつのことなの?」
「初雪の頃です。
 シェリー殿下と一緒に十日ばかり城に囚われたことがあったでしょう?
 あの後、花が枯れてなくなる前にと」

 シェリーは意識を取り戻したように身を乗り出す。

「城では十年ほど時が経ったのです。
 ケイレブは兵士を訓練する教官だった。
 毎日のように私のところへ来てリゼットを案じていましたもの」

 見慣れない船がやってくると報告が入り、すぐさま気づいて港に仁王立ちしていた。
 そんなリゼットを見てケイレブは大笑いするやら恐れ慄くやら。

 忙しい入港だった。

 シェリーの言葉を受けてリゼットは何回も頷く。

「四十を迎えた私を想像して怖かったとか。
 待っていられるものかと知らない家族と暮らしているかもと思ったりとか。
 勝手に震えたり笑ったり。
 あの人はいつもそうなんです。
 いつもどこか呑気を捨てられずにいるのですよ」
「それがケイレブの長所です」
「一長一短です。
 そのせいで私は三十路の花嫁になります。
 結婚式は春になってからということになりました」

 エリンが焦った顔になる。
 こちらもうかうかしていたら二十代の半ばを過ぎようとしていた。

「幼馴染と結婚ですかー…。憧れますねえ」

 そんなことを言う化粧品店の店主は、周りの幼馴染を思い浮かべてみる。
 もう既婚者ばかりだ。

「城の二人は、結局思いを口に出さないままだったんです」

 シェリーの言葉に、リゼットははっと痛ましそうな顔になる。
 十年の間に何があったのか聞いていた。

「リゼットとケイレブは、よかったですね。
 ついに口に出せて。思いが通じ合って」
「はい」

 リゼットは素直に笑い返す。
 トーニャがドレスを作ろうと提案した。
 どうせなら思いきりリゼットらしいドレスを着て、思い出にする。

 それがいいとエリンが絵筆をとった。

 やることがいっぱいになって喜ばしい。
 人魚は楽しそうだ。

 
 今、フォール家の当主はユーリー家に謝りに行っている。

 ずっと引き止めてきたのに申し訳ない。
 レイはまだ年が若いから。
 きっと佳いご令嬢が見つかる。

 レイは密かに笑っていたことだろう。

 レイの父は友人の言い分を認めて立腹したりはしなかった。
 それならば早いうちに相手を探しておこうと焦り出してはいるそう。
 
 息子の休みごとにお出かけやお茶会の話を持ってきては煩わしがられていた。


 ケイレブの親が結婚の承諾を確認した日。
 リゼットの親は娘に尋ねた。

 本当にケイレブで承知なのか。
 本音のところではどう思っているのか。

 リゼットははっきりと答えた。


「もし人生のどこかですべてなくなって。
 どん底で一緒に頑張らなければならなくなったら。

 それはケイレブとがいいのです。
 彼とならきっと頑張りきれます」

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