拾った龍になつかれてる

端木 子恭

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Catch A Dragon

Avant

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 水辺から顔を出して、空を見上げた。
 夕暮れの色と夜の色が混じり合って美しい藤の色をしている。
 
 心が浮き立つように感じた。

 あの色の向こう側にあるのかな。
 それとも夜の藍?
 昼の白い空?

 もう飛び立っていい気がするのだ。
 自分はもう行けるんじゃないか。

 龍の国。

 夜中、夢見心地で吐き出した蜃気楼の中に楼閣が浮かび上がる。
 大きな沼の上に現れた幻影。
 
 山のように高い楼閣は、千年かけて作られた。
 その中に住み着いているものも多い。
 
 高く高く楼閣を積み上げて、のぼっていく。

 龍の住処は天にあった。
 大人になるには自分でそこに辿り着かねばならない。

 十分に大きく出現した蜃気楼に手をかけた。
 てっぺんが見えないくらいの大きさだ。
 きっと行ける。

 雷雲が集まってきて、昼下がりの空は真っ暗になった。
 楼閣は雨雲に覆われていく。
 
 蛟龍がよじ登るのを、楼閣に住む者たちが見ていた。

 遊びに来たのか。
 休みに来たのか。

 話しかけるものはまだ最近やってきたのだろう。

 長く住むほどに、住まうものたちは記憶が薄れる。
 取り込まれた者は、ただただ楼閣の主人を見送った。

 もう明け方も近かろうという時に大嵐を抜け出る。

 蜃気楼の頂上に着いてもまだ心は生き生きとしていた。
 ここからは自力で飛ぶのだ。


 行ける。

 
 自分が思ったより元気なことが嬉しい。
 ひと呼吸した蛟龍は再び蜃気楼を吐き出した。
 その一すじを掴みながら上へと飛ぶ。

 ひたすらにのぼっているうちに、やがて蜃気楼が出なくなってきた。
 手足が動かなくなって、おかしいと思う。

 心はこんなに楽しいのに。

 どうしたんだろう。

 爪がかかる寸前で、ふらりと頭がのけぞった。
 牙の間から、頼りなく漏れ出たのは、蜃気楼なのかただ吐き出した息だったのか。


 落ちる。


 体が動かなくなって、自分の蜃気楼に引っかかりながら落下した。

 やがて楼閣の上にぶつかる。
 轟音に身を竦めるものが見えた。

 楼閣を囲う蜃気楼の層に跳ね返り、また楼閣を揺らす。

 そうして中のものを驚かせながら蛟龍は落ちていった。

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