拾った龍になつかれてる

端木 子恭

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龍が社会で生きるには

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 9月になった。
 長雨がくる季節になると、らんはようやく思い出す。

「庭の外構どうにかしないと……っ」

 慌てて商店街の外構屋さんに見積もりを頼んでみた。
 どろどろでぐちゃぐちゃな庭に辟易して。

 ところが藍の出せる予算では全体は無理だ。
 排水路の確保くらいしかできないと言われる。
 それでいいからお願いします。
 
 秋雨前線の隙間をぬって工事をしてもらった。
 敬老の日と秋分の日の間に排水路は確保される。
 藍が石かタイルを敷くつもりだと言ったら少し掘ってくれた。
 ありがたいサービスに泣けてくる。

「池、作れる?」

 店舗営業の終了した屋内でこうが尋ねた。

「池? 作ってどうするの?」

 なんか蚊がわきそうだ。
 アオコでどろどろにしそうだし。
 臭くなっちゃいそう。

「魚活けたらいつでも食べられる」

 いい計画だーって、昊は笑う。
 いやいや、全然いい計画じゃないよ。
 藍は首を振った。

「水は扱いが難しいんだよ。
 管理が大変なんだ。
 店や配達や、出張なんかがあるでしょ?
 だからなるべく簡単な庭にしようと思う」

「えー……」

 昊は魚食べ放題が諦めきれないらしい。
 藍は少し考えた。

「昊、魚が欲しいなら、市場で買うのがいいよ。
 ハネものを安く大量に。
 魚を増やすのって大変だよ?」

 藍は一生懸命納得してもらえる説明を探す。

「餌をやって、繁殖させて、世話をしてって。
 ここでやったら費用は魚10匹より多くなるからさぁ」
「市場で買う方がいいのかー……」

 昊は世間の経済も理解し始めている。

「藍に水辺へ連れてってもらうよりいいと思ったんだが」

 昊が水辺に出かけてお腹いっぱい食べると、1泊2日。
 藍がそれに付き合うだけで費用は魚10匹より多い。
 昊はまだひとりで遠くまでは飛んで行けなかった。

 週に1回市場へ行くなら時間も費用も何分の一かで済む。
 日によってはとれないと言うこともない。
 
「分かった。簡単な庭」

 ん~。と唸ってどうにか諦めた。

「藍はどんな庭がいいんだ? 絵はある?」
「あるある。こんなの」

 藍は手元のタブレットを見せる。
 外国の公園の写真だった。
 石畳やタイル敷きで、背の低い緑がちょっとある。
 ベンチも石を置いただけで、緑に沿うようにしていた。

「石の庭か。
 石は運んでくるのか?」

 昊は自分が切り出して運ぶのかとわくわくしている。
 そんなわけないんだぞ、と藍はそれをしずめた。

「ホームセンターで買います。
 現代はもう、全て貨幣経済なんですよ」

 午後、配達が終わったその足でまずは配送業者の営業所へ寄る。
 小さな荷物を受け取って、それからホームセンターへ向かった。

 好きな色のモルタルと、木、そしてタイルと石。

 狭い庭のことなので在庫が足りて、調達は1日で終わる。
 玄関横に運び入れると雨が降ってきた。
 
「休みの日に作業を終わらせなきゃならないから。
 昊、その時に水抜きお願いね」
「承知した」

 受け答えがまたかたい。
 
「藍は焼き物が好きなんだなあ」

 楽しそうに言った彼は、足元のタイル床をとんとんと叩いた。
 そんな昊に、藍は小箱を示す。

「昊、次はこの作業をするよ」

 作業テーブルに招いて一緒に座った。
 傍に位置取った昊は藍の手元に首を伸ばす。
 箱から出てきた青い機械に目を輝かせた。

「スマホだー」
「そうだよ。昊のだよ」

 おー、と口を丸くして見ている。

「壊れやすいからね。
 ぶつけない。落とさない。湿らせない」

「はい」

 注意事項に素直に頷いた。
 指紋登録ができなかった他は滞りなく設定を終えた。
 
 雨が降っていたこの日はスマホをいろいろいじった。
 昊はメッセージとメールのアプリを登録した。
 面白そうにずっと質問していた。
 
 庭を掘ってもらった場所は、池のようになった。
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