拾った龍になつかれてる

端木 子恭

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いま必要なもの

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 こうは戸籍を手に入れた。
 


 週明けの午後、住民票の登録に市役所を訪れる。
 もし偽物だったら昊は逃亡するしかないと思っていた。
 
 本籍地に問い合わせると、事実であると確認される。
 全てが藍と考えた話に辻褄を合わせたようだった。
 
 昊は外国暮らしが長かったため日本の習慣に馴染んでいない。
 日本語のキーボード入力ができないのもそのためで。
 時々当たり前のことを質問するのもそのせい。

 市役所の人と長い話をした。

 昊は今の場所にいていいと確かめると嬉しそうだった。



 昊は帰ってからじっと住民票を見ていた。
 なんだかまじめくさった顔をしている。
 

「昊の蜃気楼、見たよ」
 
 チャーハンを山盛りにしてやって、らんが話す。
 今日は緊張したし安心もしたしで忙しかった。 
 晩ご飯は一皿にまとめる。

「ローカルニュースで3秒だけやってたね。
 蜃気楼が出たって話。
 よく見てたら塔みたいなのがあったんだ」

 ニュースは聞き流していた。
 あの家で見たのは、とても3秒のニュースでなんか収まらない。
 大きな塔が建つ都市だ。
 
 ナントカ京、みたいな?

「うん。あの中にはたくさん住んでる」
 
 みやこぬしはスプーンを握ってる。

「人間も妖怪も動物もいる。
 みんなそれぞれ働いて一緒に暮らしている」
「あんな桃源郷みたいな場所に行っても生きてるかぎり働くの」

 藍がちょっと切なそうな顔になった。

「蜃気楼の中にいる間だけじゃないぞ」

 この龍の子どもはさらに言う。
 至極まじめに。

「俺が龍の国に行ったら一緒に来られた者は従者になる。
 龍は縄張り意識が強いから、従者もちゃんと働かないと。
 なりたての小さな龍ひとりで縄張りを争うのは大変だからな」

 昊の世界はけっこう厳しい。

「だから、藍は絶対に入らないで。
 蛟龍の蜃気楼は入るのは簡単なんだ。
 いつの間にか入り込んでしまう者も多い」
「出られなくなるの?」

 そういえは鬼を放り込んだ時、勝手には出られないと言ってた。

「中に入れば、まず俺がなんだったのか忘れるようになる。
 出入り口がどこなのかを忘れる。
 自分がどこから来たのかを忘れる。
 出る時にそれを答え間違えれば二度と出られなくなる」
「チャンスは1回だけ?」
「そうだ。
 だから入らないほうがいいんだ」

 チャーハンにスプーンをさして、食べていい?って目で聞く。
 藍は「食べなさい」と頷いた。


 待てができる龍。それが昊。


 不思議な話をするときは人生の大先輩みたい。
 けれど藍と現代を生きる昊は生まれたての蝮のようだ。
 

 目の前で大きな口を開けて食べる男の子を見る。


 藍には子どもの龍の姿が重なって見えた。
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