キミとふたり、ときはの恋。【立葵に、想いをのせて】

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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【1−6】

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「えっ? あの! 奏人?」
 焦ってキョロキョロする私の頭を、奏人の両手がしっかりとホールドする。
 ここ、中庭! ちょっ……。
「ごめん」
 コツンっと、額が合わさった。
「ただでさえ、俺の部活を優先させてくれてるのに。この上バイトを始めたりしたら、今よりもっと会う時間が減るのに。涼香に黙って勝手に決めて、ごめん」
「奏人……」
 苦しそうな声色が、奏人の心情を私に伝えてくれる。

 会う時間が減る。これは、私も一番に考えたことだ。
 高等科の部活は中等科の時とは比べ物にならないくらいの練習量で、奏人自身も部活にものすごく力を入れている。筋トレのために自主練でトレーニングルームを使用したりするほどに。
 そんな奏人の頑張りを応援したい。だから私も寂しくても我慢してたのに、その上バイト? って思った。
「奏人……でも、あの……バイトも頑張りたいんだよね? なら私、応援するね。会える時間が減っても、我慢出来るよ?」
 でも、こんな風に『ごめん』って言ってくれる奏人に恨み言なんて言えない。今みたいに一緒にお弁当を食べる時間は、あるもんね?
 額を合わせたまま動かない奏人に今の気持ちが伝わるように、合わせた部分をすりすりと擦り合わせてみた。
 合わせた額の温もりだけじゃない。奏人から私を大切にしてくれる気持ちがしっかりと伝わってくるから、私も同じように返したい。どう言えば、それが全部伝わるんだろう。

「涼香」
 奏人が頭を動かして、今度は頬が合わさった。すり、とゆっくり擦れ合う。奏人の眼鏡のフレームが、頬にちょっとだけ当たった。
「涼香の優しい気持ち、嬉しいよ。ありがとう」
 真正面から目が合う。深く澄んだ黒瞳が、包み込むような光を投げかけてくれてる。伝わった? ちゃんと受け取ってくれたの?
「あの、私……応援はするけど。でも、ヤ、ヤキモチは妬いちゃうと思うっ」
 けど、そのままで終われずに『いい彼女にはなれない宣言』をすぐにしちゃう、残念な私だ。
 だってウェイターさんの制服を着た姿とかを不特定多数の人たちに見せちゃうなんて、って思ったらすごくモヤモヤしちゃうもん。
「そ、それから、踏み込みすぎって思われるかもだけど。バイトしたい理由っていうか、目的っていうか、それを聞きたいです。お、教えてくださいっ!」
 あぁ、言っちゃった。でもだって、これは気になる。どうか、引かれませんように!

「……7月7日」
「え?」
 ぎゅっと目を瞑って奏人からの言葉を待ってたところに、思いがけない返答。その日が、どうかしたの?
「高階に教えてもらったって言ってたパワースポットの神社なんだけど。そこの夏祭りが、七夕の日なんだよ。知ってた?」
「え……知らない」
 ウォーキングラリーの時に高階くんが教えてくれた恋愛のパワースポットの神社の話は、すぐに奏人にも伝えてたんだけど『そのうち行こうね』で、そのままになってた。そういえば。
 奏人、覚えてくれてたんだ。
「その日は、俺、バイト休むから。夏祭り、ふたりで行こう?」
「うん! うん、行くっ!」
「ふっ、約束だよ?」
「うん! 約束ねっ」
 嬉しい! 奏人とお出かけなんて、ひさしぶり! しかも、夏祭りっ! テンション上がるぅ!

 ……ん? あれ? 話題が、変わってる?
「ねぇ、奏人? バイトの目的のお話が夏祭りのお誘いになっちゃってるけど。えーと、つまり……どういうこと?」
「〝そういうこと〟なんだけどな。これ以上は、言わないよ? その日を楽しみにしてて? 俺も楽しみにしてるから。ね?」
 そういうこと、と強調した奏人の言葉と、いたずらっぽく笑いかけてくる表情に、ある可能性を感じて。その途端に、小さく鼓動が波打ち始めた。
「あ、うん。わかった。えと、〝私も〟楽しみにしてればいいのね?」
「ん、楽しみだね」
 少し火照る頬を恥ずかしく思いながら確認してみれば、それを認める短い言葉が返ってくる。
 わぁ、どうしよう。ドキドキしてきた! だって、奏人がバイトをする理由って――。
 七夕の日の夏祭り。その日を思ってトクンと跳ねる鼓動は、同時に甘く胸を軋ませる音にもなる。
 だって、その日は特別な日。七夕は、奏人の誕生日、だから。


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