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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【3−2】
しおりを挟む駅通りから一つ入った飲食店街。チカちゃんと話しながら歩を進めていけば。通りの最奥にある四階建てビルの前で、美也ちゃんが待っていてくれた。隣には、美也ちゃんの幼馴染、藤沢慶太くんもいる。今日のお店訪問の同行メンバーだ。
「いらっしゃいませ」
軽やかに弾むドアベルの音とともに扉を開けば、張りのある、心のこもった声が飛んできた。
女の人の声、だわ。奏人が言ってた、中野さんて方かしら?
「わ……」
うわぁ!
一歩、店内に足を踏み入れて、思わず漏れ出そうになった感嘆の声を飲み込んだ。
アンティーク調の店内は、重厚なのにどこか温かみがあって、ひとつひとつが趣のある調度が、品よく配置されてる。初めて来たのに、どこか懐かしい気持ちにさせられた。
「青ちゃーん! 来たよー!」
慶太くんがカウンターに向かって手を振って、その声に応えるように、カウンター奥の人が軽く片手をあげた。あの人が、マスターの御園青司さんね?
……あら? 奏人は、どこかしら。
お店の外からガラス窓越しに覗いてみた時には、奏人の姿は見つけられなかった。外からは見えない位置にいるんだとばかり思ってたのに、その姿は店内のどこにも見当たらない。
あれ? あれれ? 約束の日、今日だよね?
「涼香ちゃん、こっちだよ」
お店の入り口でキョロキョロしてた私を、先にカウンター前まで行ってたチカちゃんが呼びにきてくれた。
「青ちゃん。この子、涼香ちゃん」
「はっ、はじめまして。白藤涼香です」
チカちゃんに紹介してもらって、マスターの御園さんに挨拶した。
「いらっしゃいませ。初めての子だね?」
「あ、はい。こんにちは。お邪魔します」
うわぁ。顎ひげを蓄えてる男の人、初めてこんなに近くで見たわ。
バーテンさんの黒服を少しだけ着崩した、ワイルドな印象の人だ。うーん。ワイルド系の男の人、新鮮だわぁ。それに、全然、怖くない。目元は優しそうで……。
「涼香、見すぎだよ」
えっ。
「奏人っ」
「いらっしゃい。待ってたよ」
すぐ横から聞こえてきた声に振り仰げば、穏やかな笑みが見下ろしてきていた。
良かった。奏人、いた!
うわぁ、うわぁ、うわぁ! お店の制服、すごく似合ってるーっ。
黒の襟付きベストに同色のスラックス。ウイングカラーの白シャツは、前面に施されたピンタックがとても華やかで清潔な印象だ。それから、蝶ネクタイにロングエプロン。この黒と白の制服は、身長がまた伸びた奏人のすらりとした体躯をさらに引き立てている。
おまけに、奏人がかけてるチョコレート色のアンダーリムの眼鏡も、図ったかのようにピタリとマッチして、立ち姿を綺麗に見せてるの。
去年の文化祭のソムリエエプロンも良く似合ってたけど、あの時は中等科の制服の上につけただけだったし。今のこの姿のほうが破壊力抜群だわ。
むむむっ。何か、ずるい。お店の常連さんたち、ずるい。私も毎日、通いたい!
「青司さん、ボックス席に案内していいですか?」
「いいよ。――あ、涼香ちゃん、だっけ? ゆっくりしていってね」
オーダーを受けて奥に入っていた御園さんが、もう一度カウンターに顔を出して私に声をかけてくれた。忙しい中にもかかわらず示してくれた好意と優しい笑顔に、あったかい気持ちになる。
声をかけてくれてる間にもオーダーが入ってたから、お邪魔にならないようペコッと会釈だけして、奏人の後ろに続いた。
「こちらに、どうぞ」
いかにもなウェイターさんの仕草で、お店の一番奥にあるボックス席を指し示す奏人にまた見惚れながら、チカちゃん、美也ちゃんと一緒に座った。
慶太くんは、カウンターで他の常連さんとお話中。えーと、奏人にここのバイト募集のお話をしたのはチカちゃんだけど、チカちゃんは野崎先輩から聞いたんだと教えてくれた。
元々は、御園さんと野崎先輩のお父さんがお知り合いで。だから、先輩と幼なじみの慶太くん、美也ちゃん、チカちゃんも、開店当初からここによく通ってるらしいの。
「メニューをどうぞ。――涼香」
四人分のお水とメニューを置いて一旦下がる素振りをした奏人が、スッと戻ってきて後ろから顔を寄せてきた。
「その服、良く似合ってる。目の保養、と言いたいところだけど。俺にとっては目の毒だね。可愛いよ」
め、め、目の毒なのは、あなたのほうですっ!
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