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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【3−6】
しおりを挟む「涼香。俺、今から休憩時間なんだけど。まかない食う間さ、そっちで一緒につき合ってくれない?」
「あ、うん! あっ……えーと、行ってきてもいい?」
十四時を少し過ぎた頃、奏人が休憩につき合ってほしいと言ってきた。私たちが座ってるボックス席のさらに奥の二人掛けの席を指差してる。
すぐに立ち上がろうとしたんだけど、思い直してチカちゃんたちに先に声かけした。
「行っといでよ。チカたち、まだゆっくりしてるし」
「後で、ケーキ、一緒に食べようねぇ」
「うん」
チカちゃんと美也ちゃんがニコッと笑って送り出してくれたから、奏人に誘導されて奥の席に移る。「少し待ってて」と言った奏人が戻ってきた時、ベスト、蝶ネクタイ、エプロンは外されていてシャツとスラックスのみの姿になっていた。手には、パスタが乗ったトレー。
「わ。それが、まかないなの? 何のパスタ?」
トマトソース、なのかな? ナポリタンみたいな見た目だけどソースたっぷりのパスタに、シーザーサラダとコーンスープがついてる。
「あんかけスパゲティだよ。『名古屋めし』なんだって。青司さん、たまにこういうご当地メニューを作るんだ。サラダとスープは、弥生さん作」
「ふーん、初めて見た。美味しそうねぇ」
本当に美味しそうだ。だから心からの言葉を返したんだけど、同時に胸にチクリとトゲが刺さったような感覚が走る。
奏人、今『弥生さん』って呼んだ。
頼りになる先輩だって教えてくれた中野さんのことを親しげに名前で呼ぶ奏人に、モヤッとする。
同僚だからってわかってるけど、女の人を下の名前で呼ぶのは珍しい奏人だから。
「どうしたの? 難しい顔して。あ、これ、気になるなら食べてもいいよ。ほら、口開けて?」
「ち、違っ。お腹はいっぱいだもん」
確かに美味しそうだけど。
太麺のパスタにソーセージ、ピーマン、玉ねぎ、舞茸、しめじが彩りよく盛りつけられたトロミのあるトマトソースには確かにそそられるけど。でも――。
「奏人こそ、お腹すいたでしょ? いつもこの時間にお昼なの?」
頑張って働いてる奏人のお昼ご飯をもらうなんて出来ないわ。ちょっと味見はしたいけど……。
「いや、いつもは十五時からが多いな。でも弥生さんが『今日は先に食べていい』って言ってくれたんだ。そしたら、青司さんが『彼女と一緒に奥の席で食ってこい』って。いつもは休憩室で食うんだけどね」
「あ、そうなんだ」
休日勤務の時は、十一時~十八時のカフェタイムのシフトなんだって言ってた。ランチも人気のお店なら、休憩も遅くなるよね。
しかもホールスタッフは、奏人と中野さん、あともうひとりの女性だけって話だったから、休憩はレディファーストにしてるんだと今の話でわかる。
あれ? そういえば、もうひとりの女性スタッフのお名前聞いたことなかったような……。
「――こんにちは」
不意に、真後ろからかけられた声。これ、どこかで聞いた気がする。そう思って、振り返った。
「あっ」
この人!
「また、いらしたんですか? 先輩」
「『また』って言うな。青司さんに呼び出されたんだよ」
「じゃあ、『今日も』に言い換えます。『お疲れ様です』も追加しておきますか?」
「あー、もう何でもいいよ。あの人にこき使われるのには変わりないし。で、これ差し入れだ。――お嬢様、どうぞ」
奏人とフランクな調子で話していた人が、スマートな所作で、私の前にガラスの器を置いた。わぁ、杏仁豆腐だ!
「あ、ありがとうございます。野崎先輩。あの、でも『差し入れ』って……」
わぁわぁ! 私、野崎先輩に話しかけてる! というか、野崎先輩も黒ベスト姿がすごく似合ってる。高三にもなると、こんなに背が高くなるのねぇ。
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