キミとふたり、ときはの恋。【立葵に、想いをのせて】

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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【3−5】

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「あー、美味しかったねぇ」
「御馳走さまでした。美味しかったぁ。もう、お腹いっぱい」
 丁寧に食後の挨拶をしてから、隣に座るチカちゃんに応えた。
 ほんとに美味しかったわ。奏人がお勧めしてくれた夏野菜のパスタ。バジルの風味と塩加減がすごく私の好みだったし。
 それに、皆が笑顔で『美味しいね』って言ってるのも良かったんだと思う。四人でシェアしようってチカちゃんが追加注文した、泉州の水ナスとサーモンのカルパッチョまでも、皆で綺麗にたいらげてしまったもの。
 そういえば、チカちゃんって、小柄でふんわりしてる見た目からは考えられないくらいの大食漢さんなのよねー。
 今朝も剣道の朝稽古をみっちりこなしてきたらしくて、ボリュームたっぷりのアメリカンクラブハウスサンドにソーセージの盛り合わせをトッピングしてるのに、『ちょっと足りないけど、デザートたくさん食べるから、いっか』って呟いてたのよ。
 そんなチカちゃんが「さて」と言って、おもむろにスマホを取り出した。
「お客様も空いてきたし、そろそろいいよねー」
 なんて言ってスマホを向けた先には、接客中の奏人がいる。
 え? まさかっ! 写真撮るの? えーっ! チカちゃん、ずるい! 私だって欲しいのにっ!

 ――カシャッ
「おおー。うん、バッチリじゃない?」
 スマホの画面を見てニマッと笑ったチカちゃんの手元に、「見せて、見せてっ」と、かぶりつく。
「わぁ、よく撮れてるっ」
「でしょ? お客様にかすかに微笑む瞬間を逃さなかったよ。涼香ちゃんにも転送したげるね」
「ありがとっ。チカちゃん!」
 嬉しい! 早速プリントして、私の宝物写真ブックに入れなくちゃ!
「でも、その前に……んー、送信っと」
 え、『その前』って。どこに送信したの? あれ? 私のスマホは受信してないけど。
「チカちゃ……」
 ――ブーッ、ブーッ
「あ、早速かかってきた。すごいな、光の速さだね。――はーい」
『秋田ぁぁー! サンキュー! サンキュー! めっちゃ、サンキュー! てか、何これ! めちゃかっけーっ! 男の俺をこーんなに、たぎらせてどうする気なんだよ! 土岐ってば!』
 どこに送信したのか、チカちゃんに聞くまでもなかった。チカちゃんが持ったスマホから漏れ聞こえてくる大音量の声は――。
『てか、今度はバックから頼むよ! あと二、三枚、慎ちゃんに送ってくれっ!』
 武田くんだ。
 すごいわ、武田くん。テンションMAXって感じ?
 スマホからこんなに声が漏れるくらいだから、相当大きな声でお話してるのねぇ。お家にいるのかな?
 武田くんが立て続けに話してるもんだから、チカちゃんも口を挟めなくて苦笑してる。でも、こんなに声が漏れてたら……あ、もうバレてる。
 他のお客様に迷惑がかかるんじゃ、と思って目線を巡らせれば、こちらに向かってくる奏人の姿が見えた。

『てかてか! 蝶ネクタイ、チョー似合ってね? こーんなに蝶ネクタイが似合うのって、『小さくなった名探偵』か土岐だけだよなっ!』
 ――ピッ、ピィーッ
「秋田、営業妨害だから切っといてやったぞ。構わないよな?」
「う、うん。ありがと、土岐くん」
 早足で近づくなりチカちゃんのスマホを奪って、すかさず切断、電源オフ。すごい早技だわ。しかもトレーには、アイスコーヒー4つ乗せたまんま。
「おい。蝶ネクタイ云々の意味は、後で聞かせてもらうからな」
 チカちゃんにそう言いおいて接客に戻った後ろ姿を見て、不思議な気持ちになる。
 チカちゃんが奏人のウェイター姿の画像を撮ったことについて、かな? それを武田くんに送ったこと?
 それとも……奏人って、『小さくなった名探偵』のこと、知らないのかしら? なら、蝶ネクタイの秘密は、私が教えてあげなくちゃ!


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