キミとふたり、ときはの恋。【立葵に、想いをのせて】

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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【4−5】

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 やだ。すごく嫌。
 私の奏人なのに、誰にも触らせたくない。そう、強く思った。
 肘の辺りを両手で持ったまま、そろりと目線を上げれば、優しい瞳とかち合う。
「あの、あのね?」
 視線を合わせて笑みを深めてくれた奏人に安心しながら、頑張って声を出してみる。
「ん? 何?」
「あのね。どうして、先週のマネージャーさんたちのこと、私に言ってくれなかったの?」
 すごく聞きにくかったけど、思い切って尋ねてみたの。
「……忘れてた」
「え?」
「忘れてたんだ、そんなこと。だから、さっき涼香に聞かれて驚いた」
「……え? え? 『忘れてた』って……え?」
 あまりにも奏人らしくない答えが返ってきて、つい、ポロッと復唱しちゃった。

「本当に忘れてたんだよ。そんなことがあったことも、涼香に話してなかったことも。このところ、ずっとバタバタしてたし。特に先週から今週にかけては……あ……いや。とにかく、俺にとってそんなに重要なことじゃなかったんだ」
 自分でもびっくりしてるって表情で『忘れてた』を繰り返してる様子で、奏人が嘘を言ってないことは、すぐにわかった。そもそも、こういうことで嘘を言う人じゃないって、ちゃんとわかってる。それに――。
「奏人? そんなに大変? 全部を頑張りすぎたら、倒れちゃうわよ?」
 言外に『心配よ』と匂わせて、掴んだ腕にきゅっと力を込めた。
 部活にバイト、それに勉強だって、奏人はいっさい手を抜いてない。ご両親からは成績を落とさないことを条件に、バイトの許可が出たって聞いたもの。特に、数学の学年トップは守るようにって。
 時間や、色んなことに追われて、当たり前だよね。なのに私ったら、そんな奏人に責めるみたいな言い方で質問しちゃったわ。どうしようっ。

「奏人。あの、ごめんなさい。私、無神経で気が利かなくて」
「なんで、涼香が謝ってるの?」
「え? だって」
 私の勝手なヤキモチで、嫌な聞き方しちゃったし。駄目だ。自己嫌悪で顔、見られないよ。
 グググッと、頭が下を向いていく。
「涼香は、何にも悪くないよ。俺が勝手に自分を追い込んで、いっぱいいっぱいになってただけなんだから。だから顔上げて、俺を見てくれない?」
 空いたほうの奏人の手が、俯いた顎に添えられた。少しだけ力を入れられて、目線が合う角度まで上向かされる。
「あ、やっぱり泣きそうな顔してたね。ねぇ? 俺、笑ってる涼香が一番好きなんだよ」
 本当に……奏人は、どこまで優しいんだろう。私は、今向けられてる、この笑みが一番好きよ。
「あー、そういえば、これも今思い出したけど。先輩マネのこと、涼香には言わないほうがいいって言われてたんだ。あ、だから言わなかった訳じゃないよ? そのことすら忘れてたから」
「え……誰、に?」
 私に言わないように、なんて。いったい……。

「都築だよ。『自分が彼女なら、こういうことは聞きたくないから』って。でも、これも忘れてたな。ごめん」
 都築さん、が?
「それって……あの、それ、お店で言われたの? 都築さんに?」
「うん。先輩マネたちがうるさすぎて、橘先生が一喝した後にね。こっそりアドバイスされた」
 アドバイス……。
「結局、涼香の耳に入ってたから言うけど。たぶん都築に言われなかったら、そういうことには気づけなかったよ。『女の子は繊細なんだから』って言われても、最初ピンとこなかったし」
 あぁ、これって……奏人にとっては、『報告』なんだ。自分じゃ気づけないことを教えてくれた、っていう。そういうことがあったよ、っていう『報告』なんだね。
 だから、そんな風に笑ってるんだね。何の罪悪感もなく、私に言えるんだね。


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