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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【6−4】
しおりを挟む「武田! 切り返しが遅い!」
「はいっ!」
……うわぁ。
「パス、こっちだ」
「常陸、もっと内側に回り込め!」
うわぁ、うわぁ。音が近い。それに、人も近い。こんなに傍を走るの?
スピード感も迫力も、思ってた以上だわ。試合の観戦とは全然違う距離感と迫力に、声も出ない。
あ、どよめきや小さな歓声なら、時々あちこちから上がってるけど、それは仕方ないと思う。
「よし。十分、休憩」
顧問の先生の声が響いて、ボールとシューズの音が消えると、思わずホッと小さく息を吐いていた。気づかないうちに肩に力が入ってたみたい。
「涼香ちゃん、どうでした? びっくりしたんじゃないですか?」
「うん、すごく。試合会場の雰囲気とは全然違ってたね。真剣さは同じだけど、こっちのほうが息遣いを近くで感じられてドキドキする」
「ですよね。すごくドキドキしますよね。皆、真剣でカッコいいです。だからこそ、昨日の試合は残念でしたねぇ」
「そうね、残念だったね……ほんとに。インハイまで、あと少しだったのに」
昨日、応援に行った試合、接戦だったけど負けちゃった。泣いてる選手もいたけど、やっぱり奏人は泣いてなくて……でも、今までで一番悔しそうにしてた。
だから萌々ちゃんに見学を誘われた時、普段の練習も応援出来る時はしようって思ったの。奏人のために、何かしたかった。
まぁ実際は、ただボーッと立って見惚れてるだけ、なんだけどねー。
「――涼香」
「あ、お疲れ様」
部活終わりの奏人を待つ場所は、いつもここ。体育館へと続く渡り廊下。
「待たせてごめん。行こうか」
「うん」
たいして待ってないけど、差し出してくれた手が嬉しいから、黙ってそこに手を重ねた。
「ところで土曜日だけど。俺、夕方まで部活だから、いったん家に戻ってから迎えに行くけど、それでいいよね?」
土曜日。それは、待ちかねた夏祭りの日。午前中は授業があるし、奏人は部活があるってわかってた。だから――。
「あっ、そのことなんだけど。あのね、私……待ち合わせ、したいな。神社で」
「待ち合わせ?」
「うん、駄目かな?」
奏人がバイトを始めたことで、デートらしいデートを最近出来てない。せっかくのお祭りデートなんだから、待ち合わせのドキドキも味わいたいの。
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