キミとふたり、ときはの恋。【立葵に、想いをのせて】

冴月希衣@商業BL販売中

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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【8−9】

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 ……どっち?
 え? 『どっちがいい?』ってことは……噛み痕とキスマークの二択ってことで……えぇっ、ちょーっと待ってぇー。というか、この質問、何なのぉ?
「かっ、奏人っ? あの、どどっ、どっちっ……かかっ、かっ、噛みっ……噛み噛みっ」
 しまった。『どうして、そんなこと聞くの?』って聞きたいのに、動揺しすぎて噛みまくりっ!
「ん? だって、ここ、触られたんでしょ? 手首のこの部分」
 あ、ちゃんと伝わってるー。良かったぁ。
 じゃなくて! え? 答え、それだけ?
「おかしいな。そんな怪訝な顔をさせるような質問したかな? じゃあ、助け舟でもうひとつ質問追加だよ。――浮見堂でのあの時。あの人に手を差し出して何をしようとしてたの?」
「あっ、違うの。それ、違うっ」
 そうだ、ちゃんと説明しなくちゃ。
「あのね、あの時は、このネイルを見てもらおうとしてたの。浴衣に合わせて綺麗に出来たから、その説明をしようとしてただけなのよ」
 掴まれてないほうの手を上げて、奏人に見えるようにその目の前で広げた。だって、もう片方の手は、いまだに奏人の唇がチュッチュッて触れてるから、動かせない。

「あぁ、この小花と蝶の可愛い爪? これを俺より先に見せて、さらに可愛く微笑んで、あの人と良い雰囲気になってたってこと? へぇ……そういうことか」
 奏人の目が、すぅっと細められた。その表情の変化をみとめた途端――。
「あっ、痛っ」
 手首に、痛みが走った。
「痛い? ごめんね。でも我慢して。無自覚なお姫様に俺の印、つけてるだけだから。ね?」
 チクリと肌を刺すような、鋭い痛み。二度、三度と、立て続けに同じ場所にそれが降ってくる。
 奏人の唇が少し開いて、食んで、きつく吸い上げて、私の肌に痛みを落としていく。普段はあまり見ない、少しの激しさと荒々しさを感じさせながら。
 その一連の動きをじっと見つめながら、何で私、こうしてるんだろうって、思った。
 なんで私、手を引っ込めないんだろう。『我慢して』って奏人は言ったけど、私が『やだ、やめて』って言えば、きっとすぐにやめてくれるのに。
「痛かったよね? 酷くするつもりはなかったんだけど……でも、綺麗についたよ。この灯りでもわかるくらい」
 ほら、と手首の裏側がこちらに向けられた。申し訳なさそうな口調とは真逆の、満足げな笑みとともに。
 確かに、祭り提灯の灯りの下でも朱く色づいた輪郭が見える。
「朱くなってる……これ、キスマーク?」
「ん。ね、怒ってる? こんな酷いことして」
 少し弱いトーンに切り替わった声に、ふるふると首を振る。もう、答えは出ていたから。
「怒ってない。怒らないよ。だってこれ、奏人の印なんでしょ?なら、酷いことじゃない。私にとっては」
 最後につけ加えた言葉。奏人には、これで通じるはず。私の答えが。


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