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スイートピーでさようなら
しおりを挟む「チカ。俺の柄じゃねぇから言わないつもりだったが、やっぱ言っとく。実は、俺もお前同様、花言葉に願いを込めてた。今日をふたりの門出に————始まりの記念日にする。絶対に、お前を捕まえるって」
「あ、だから、スイートピーを贈ってくれたんだね」
「そういうことだ。まぁ、勝率は五億パーセントだったけどな」
五億パーセントって……いっちゃん。いくら進学先が文学部だからって、非現実的な数値で自己肯定は駄目だよ。
「いっちゃん?」
ふたつ年上の恋人がドヤ顔で言い放った内容を訂正しても良かったけど、チカが口にするのは別のこと。
「卒業おめでと。大好き! 不束者の幼馴染だけど、これからは恋人としてよろしくね」
「お前……あー、やっぱ無理。家までもたねぇ。可愛すぎかよ。おい、抱える。力抜け」
「んぁ、っ……いっちゃ……ここ、廊下っ」
「よそ見すんな。卒業祝い貰ってるだけだ。つまみ食い的な? 取り敢えず、あと一回」
つまみ食いって言った。ファーストキスなのに! 情緒の欠片も無いよ。全く!
「いいよ。お祝いだもん。一回と言わず、たくさんつまんで? もっとギュッとして?」
呆れるほど無粋な恋人だけど構わない。こんなに情熱的に抱きしめられて、すごく幸せ。力いっぱい抱きしめ返すと、手に持ったブーケが相手の背で揺れ、花香が甘く立ちのぼる。
麗な春の門出。想いを重ねながら、ふたりで宣言しよう。片想いの日々はもう終わり。
——晴れやかに甘やかに、スイートピーでさようならだ!
【了】
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