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弐
月影に謡う 【六】
しおりを挟む——大いに焦った私の心配は、杞憂に終わった。
屋根の上での待機で暇を持て余した白焔様が妖術で楽奏の音を中継しておられたらしく、ついでに私とうずら丸の会話も全て屋根上に筒抜けだったらしい。
宴が終わって、二月。月が二回、巡ったけれど、うずら丸との面会のために賀茂邸に赴いても、真守様とはお会いしていない。
何かと理由をつけて真守様が私を避けておられるから、なのだけれど。私もなんとなく気まずくて、ずるずると今に至ってしまった。
でも、このままで良いわけはないわ。なぜなら——。
「『信頼枠』の、どこがいけないの?」
誰よりも信頼していて、尚且つ、『藤原光成・熱烈心酔隊』の同志として、これ以上ないくらい話が合う相手なのよ。
「信頼枠と同志枠。両方を満たしてる上に、気も合うお仲間。どうして、それだけじゃ駄目なの?」
「いいと、おもう。まえに、びゃくえんさまが、いってた。こいと、ゆうじょうは、べつものだって」
「そうよね。それに、真守様ご自身もおっしゃってたのよ。『これほど話が合う女人は近江様が初めてです。これからも光成様の話題で楽しい時間を過ごしたいです』って。それなのに、もう二月もほったらかしって、どういうこと? いい加減、お兄様の素晴らしさについて語りたいのよ。真守様と、きゃーきゃー言って盛り上がりたいのよ!」
このままじゃ、『藤原光成・熱烈心酔隊』は解散の危機だわ。
「じゃあ、まもりを、おいかければいい。うずらまる、あいつに、はなぢ、ふかせたこと、はんせいしてたけど。ささいな、ごかいで、いつまでも、にげてるやつは、よわむしだ。きょうりょくするぞ」
「その通り。弱虫云々については弁護するけど。それよりも! 貴重な同志をこんな些細な行き違いで失えないのよ。私、絶対に真守様を振り向かせる!」
見てらっしゃい。私と顔を合わせないように逃げているなら、追いかけてやるんだから。
それで、色恋抜きで誰よりも気が合う親友は私なのだと再認識させてあげるのよ。
「ねぇ、ちょっと、おふたりさん? 白焔が口を挟んでもいいかしら。陰陽小僧が篤子ちゃんから逃げてるのは、とっても繊細な男心が関係してると思うんだけどぉ。それを〝些細な誤解〟扱いするのは、さすがに気の毒じゃない?」
「うずら丸。私、まずは文を書くわ。たくさんたくさん書くわ。親友への友情を強く訴えた、熱烈渾身のお手紙を!」
「うん、たくさん、かけ。うずらまるが、まもりの、くちに、ねじこんでやろう」
「あらっ? アタシの助言、全然聞こえてない? ま、まぁ、いいか。陰陽小僧、頑張れー。アタシ、遠くから応援してるー(棒読み)」
【了】
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