恋ぞつもりて

冴月希衣@商業BL販売中

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第五章

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「ファンクラブ活動、結構、充実してるんだよ? 皆、ガチのひーちゃんファンばっかだからさ、気が合うんだぁ。休み時間とか、いつも俺の席に集まって、ひーちゃん談義でめちゃ盛り上がってんの」
「や、やす……休み、時間?」
 聞き返す声が裏返ってしまった。それくらいの衝撃。
「ななな、凪っ? ちょっとお尋ねしますが、例えばお昼休みに女子の皆さんがあんたを囲んでキャッキャウフフしてる時、話題はその『ひーちゃん談義』なわけ?」
「うん」
「え? じゃあ、凪の席に群がってた女の子たちは、皆、私のファンなの? 私、凪が爆裂にモテてるんだと思ってたんだけど」
「俺がモテるわけないじゃん。彼女たち全員がひーちゃんの熱狂的ファンだよ」
「そ、そうなんだ」
 なんだ、勘違いだったのね。ふわふわキュートな女子たちに囲まれてニコニコ仲良くしてた凪は、私の話題で盛り上がってたのかー。ふーん……そうだったのかぁ。
 それはそれで、別の意味で怖い気もするけど、深くは考えないようにしよう。そうしよう。

「ひーちゃん? もしかして、だけど。今のひーちゃんの発言、俺がファンクラブの子たちと仲良くしてたことを変に誤解してたと受け取れたんだけど、間違ってる?」
「うっ」
「ここ最近のひーちゃん、俺と距離を置こうとしてたよね? その誤解が原因だったりする?」
 気づかれてた。バレてた。
「うん。誤解、してた。だってね? 高校生になってからの凪が私に言う『好き』が、ただの挨拶っていうか、恒例行事で口にしてるだけだって感じてた時に、その現場を見ちゃったんだもん。完璧に誤解してた」
 バレてたなら、しょうがない。溜め込んでたことを私も言ってしまおう。
「あーっ、そっかぁ! ごめんね。その原因も俺だね。あのさ、俺が『好き』をごく軽く言うようになったのは、告白する度にひーちゃんの表情が曇るようになったから、だよ」
 え?
「毎日毎日ずっと、言いすぎたせいだって気づいた。鬱陶しがられてると思った。だから、わざと軽薄に、挨拶がわりに『好き』を言うようにした。けど、挨拶に込めてたのは、嘘偽りのない本気の『好き』だったよ」
 ええぇ、そんなぁ。
 じゃあ、何? ここ数ヶ月、毎日の告白に本気が欲しくなっていった私と、本気を見せられなくなっていった凪とで、すれ違ってただけってこと?

「今なら、わかる。俺、ひーちゃんを好きな歳月が長すぎて臆病になってたんだ。プロポーズの回数を数えてるのも俺だけだって思ってたし。誤解させてマジでごめん」
 あ、通算9999回目の、あれね。というか、よく数え続けたわね。あっぱれよ。
「嘘偽りのない本気の『好き』を、毎日ありがとう。それ、明日からもお願いするわ」
 すれ違いの経緯を私からも告げるべきなんだろう。けれど、それよりも先にこっちを言いたかった。
「凪、これを受け取ってくれる? 初めて手作りした、凪のためだけの本気チョコです」
「えっ、マジっ? やったー。ありがとうっ! 嬉しいよう」
 もう体育館の入り口まで来てしまったから、チョコを渡したかった。それから——。
「えーとね? それ、記念すべき、私からの第1回目のプロポーズチョコ、です。凪のぶんと合わせたら1万回になるね」
 1万回になったら、何だと言うのか。脳内でもうひとりの私が冷静にツッコミを入れてきてるけど、うやむやにする。
 私のチョコを捧げ持ち、とんでもなくおかしな歓喜の踊りを眼前で披露してる彼氏の泣き笑いが、こちらにまでうつったから。
 少しずつ、少しずつ。山頂から流れ落ちる源流が水かさを増やし、麓で大河となるように。二人が歩んだ歳月が、本気の恋を育ててくれた。
 良かった。この子と出会えて。


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