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第五章
君に、捕らわる 【7−3】
しおりを挟む――風を受けて、加速する。頬に当たる冷気の爽快さに、知らず高揚していく。
スピードに乗って、一気に目的地点まで着いた。サングラスに付いた雪をはらって見上げると、他のメンバーが二人ひと組で次々と滑り降りてくるのが見える。
ラストのひと組が到着してすぐ、加賀先生が片手を上げて合図してからスタートした。
雪煙を巻き上げて、豪快に。それでいて、しなやかで美しいフォームに、周囲から感嘆の声が漏れる。俺も、思わず見惚れていた。
「みいこ先生、すごい! かっこいい!」
あっと言う間に到着した先生に、生徒たちが群がる。
「ありがとう。でも、初級者用のゲレンデで滑っただけで何言ってるの? 次は私が先にあそこのポールの位置まで滑るから、さっきと同じ順番で降りてきてね」
が、賞賛は当然という顔でばっさり切って、颯爽と滑っていってしまった。
「あははっ! 確かに、みいこ先生の言う通りだね。皆、頑張って先生の技術を盗んじゃおうよ」
一瞬しーんとなった場を、秋田の声が明るく盛り返した。
「そうだな。じゃあ、行くぞ」
あの人を待たせたら、また何を言われるかわからない。サクサクと指示に従った。
「――うーん。どうもスッキリしないわねぇ。もう少し、ここでやっていきましょうか」
俺たちは、まだ初級者用のゲレンデで先生の指導を受けている。
「そこの君! 湯川くん! 重心の傾け方に変な癖があるのよ。左へのターンをもっと深くして!」
「竹内さんは、膝をもっと柔らかく使ってみてね」
一人一人、入念にフォームのチェックと矯正が施されていく。
「もっとよ。この角度まで曲げても大丈夫だから。そう。そのままの姿勢を維持してみて?」
そして例外なく俺も、我流のフォームを修正してもらっている。
「君はバネがあるから、そのぶん、ここの筋肉を使うのが疎かになってるのよ。ちゃんと意識して使わないと」
まさに手取り足取り。厳しく、だが的確な指導に、皆の表情がひたむきで楽しげなものに変わっていく。
「あら、良くなったじゃない」
もれなく、俺も気分がいい。
「それにしても、思ってたよりも時間がかかったわねぇ。上に行くのは午後からにして、もう少ししたらお昼休憩にします」
「思ってたよりも」と言いつつ、なかなかに満足げな表情だ。俺たちも基礎をしっかりと叩き込まれて、疲れてはいるが自信が垣間見える顔つきに変わっている。
「じゃあ、ラスト一本。もう一度リフトに乗って、今度は集合場所だったロッジ前まで一気に滑りましょう」
集合場所のロッジ。白藤さんが見学のために、待機してるはずの場所だ。そこまで戻れる。そう思っただけで、スキー講習への意欲に更に活力が割り増しされた。
今、どうしてるだろう。足は疼いていないだろうか? 痛みを我慢して、無理して笑っていたりしないだろうか?
顔が、見たいな。声が、聞きたい。
彼女の笑顔を思い浮かべたいのに、なぜか泣きそうな表情が浮かんできて。疑問と焦燥感と、胸が締めつけられるような感覚に落ち着かなくなった。
——早く、会いたい。
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