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3 ケルベロスとオルトロス
#1
しおりを挟む「あれほど『来んな』っつったのに、なんでアンタ、ココにいんだ?」
え、いっちゃん?
「アレの打ち合わせなら、慶太んトコで充分だろうが」
え? 打ち合わせ? 『慶太くんトコ』って、何? なんのこと?
「しかも、俺の大事な場所で、ナニやらかしてくれてんだよ。ふざけんな、マジで。ああぁっ?」
――ゴギッ!
いっちゃんが、恫喝と苛立ちの声の最後にダンッと右足で踏みしめたモノ。それがミシッという音を立てて、今、ご臨終の時を迎えた。
伊織さんに振りおろし、殴りつけていた、店のメニューボードだ。
でもチカの目線は、オープン早々儚く散ってしまった哀れなメニューボードからすぐに離れ、それを踏みつけている長い足を辿って、どす黒いオーラを放ってる背中へと移っていく。
だって、この展開に、全然ついていけない。
いっちゃん、伊織さんに『ココには来るな』って予め言ってたってこと?
なんで? なんで、チカの店の話題を、いっちゃんと伊織さんがしてるの?
それに、よくわかんないけど、ふたりの打ち合わせに慶太くんが絡んでて……。
おまけに、いっちゃん。今、『俺の大事な場所』って、言ったよ?
なんで? ソレって、まさかとは思うけど、チカの店のこと、なの?
うあぁぁ! 何がどうして、どうなったら、そんなコトに……っ?
だ、け、ど! ソレよりも、ナニよりも!
問題なのは、目の前の展開っ!
なぁんで、いっちゃんと伊織さんは、そんなに顔をくっつけ合ってお話ししてんのっ?
鼻と鼻! 唇と唇! どう見ても、くっつく寸前じゃん!
「オラ、正直になれよ。楽になれるぞ? それとも、もっと仕置きされてぇのか? それでもいいが、今日の俺は加減とか出来ねぇがな」
おまけに、いっちゃんの甘めの中低音の扇情フェロモンが爆発してる!
しかも、ダンッて壁に押しつけられた伊織さんのお股に、いっちゃんの長い足がググイッと割り入れられてるよ!
なぁんで、チカの目の前で、エロびーえるなシーンが繰り広げられてんのぉっ?
「ちょっ、いっちゃっ……」
「えぇー? だぁって、ソレには海よりも深ーいワケがあってぇー」
脳内が疑問の絶叫で埋め尽くされ、某ムンクの叫びのようなポーズで壱琉の名を呼びかけたところに、怪しいドクターの間延びした声が割って入ってきた。
「でも面倒くさいから、ザックリひと言で説明しちゃうとぉ。ズバリ! 僕は、秋田くんの細胞が欲しかっただけなんでぇーすっ♪」
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