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肆
愛(いと)し恋し、重ぬる想いの牡丹(ふかみ草) 【八】
しおりを挟む建殿の声であるが、どこにも建殿の要素がない色艶を含んだ声音。
「何? 今、なんと言った?」
その声の持ち主が、今、私に意味不明なことを言った。だから、もう一度、聞き返さねば。唇がどうとか、というのは、きっと聞き間違いに決まっているはず……。
「我《われ》の唇を吸え、と言ったぞ。何を聞き返しておる。はっきりと聞こえていたはずであろう」
聞き間違いではなかった!
「それとも、あれか? やり方を知らぬ故《ゆえ》の問いなのか? 仕方がない。この我が手取り足取り、懇切丁寧に指導してやろう」
「え? ちょっ!」
「そなた、美しすぎる余り、誰からも敬遠されて色事には疎いという残念な私生活なのだな。気の毒に。良い良い。我が手ほどきしてやろうぞ」
「何をっ……あっ!」
「ほら。手は、ここと、ここだ。あとは、じっと目を合わせたまま唇を近づけていくだけで良い」
それどころか、可哀想な者を見るような目でうんうんと頷きながら私の手を持ち上げて自分の身体に巻きつけさせ、密着状態を強引に作り上げられた。
「藤原光成よ。我と唇を重ね、我のものになれ」
――どくんっ
「……っ……建、殿」
これは、建殿ではない。けれど、まさしく建殿でもある。
姿、声、体温、焚きしめた香。全て同じ。その相手にこんなことを言われて鼓動が跳ねないはずがない。
「唇が触れ合ったら、ちゅうっと吸いつくのだ。ちゅっちゅしておる間に、我はそなたの身に移り変わっていることだろう」
このような赤裸々な言いようであるのに嫌な気持ちにもならず、その言葉通りにするべく、身も心も委ねてしまう。
「……たけ、る……」
密やかな呼びかけが、唇の隙間から零れ落ちていく。
「そうだ。建だ。この者は、そなたの大切な者であるぞ」
すると、私の目線よりも一寸ほど高い位置にある目元が、ふっと緩んだ。
「その身を投げ出してでも助けたいと望むほどの者であろう?」
眼前の相手の口元が愉悦を含み、にぃっと引き上がる。
見慣れた、ぽてっとした少し分厚めの唇が、知らない笑みを形作っていくのをじっと見つめてから、静かに息をつく。それから、ゆっくりと目を閉じた。
「……っ、建殿っ」
いつも愉快で残念な言葉ばかりを発する私の大好きな人と、これから唇を重ねるのだ。そして、妖猫からお救い申し上げ……。
――どんっ!
「ふざけるな!」
「ぐえっ!」
「どう考えても、お前は建殿ではない。そんな奴と唇を重ねろ、だと? ふざけるな! 建殿の意識がない時に、そんなことができるか!」
――ごぎっ!
「ごふっ!」
「他の方法を教えろ! それが無いなら作れ! 無いなりに、ひねり出せ!」
「ごほっ! ごほっ、ごほほっ! お前っ……“これ”は、お前の大切な者の身体、ではなかったのか? なぜ、渾身の力で、ぶちのめしておる?」
「あ……」
しまった。つい……。
目の前で両膝を折り、腹を押さえている相手の苦しげな声で、自分がしでかした現状を把握することができた。
つい、うっかり、ではあるが。胸を突き飛ばしながら喉元を殴りつけ、怯んだ隙に腹に膝蹴りをぶち込んでしまっていた。
「おい、妖猫。建殿の身体は大丈夫か?」
建殿ではなくとも、その身は建殿のもの。手応えの感触で大丈夫とは思われるが、弾みで、後々残る怪我を負わせてしまってはいまいか。そこだけが気になる。
が、こちらの心配の隙をついて逆に襲われても困るから、手入れをしていた矢を逆手に持ち、先端の鏃《やじり》部分を相手に向けて油断なく構えた。
「……ふっ」
しかし、そんな私の緊張を崩したのは、低い笑い声。
「ふふっ。あははっ……あっははははっ! 『他の方法が無いなら作れ。ひねり出せ』か。言ってくれる。おまけに、手酷くぶちのめした後に怪我の心配ときた。ふははっ」
床に尻をついて座り、脱力した体勢の相手が、その場に大笑いを響かせているという、緊迫感の欠片もない状況。
いきなり和んだ場の空気に戸惑い、けれど建殿の身は心配であるから、警戒しつつも再び声をかけてしまう。
「おい、怪我は……」
「あーあ! もう、やだぁ!」
「え……」
「もぉ、何なのぉ? こんなの、ひどいじゃなーい!」
「は?」
「光成ちゃん、この仕打ちはひどいわっ。うぶな色事初心者だと思ったから、優しくしてあげてたのにぃぃ。白焔《びゃくえん》、泣いちゃうっ」
「え……光成、ちゃ、ん?」
身構えながら声をかけた私を、ぷうっと頬を膨らませて睨みつけた後、拗ねたように唇を突き出した相手の、突然の変貌についていけない。
間延びした声音での甘えた口調と、くねくねと身を揺らしているさまに呆気にとられ、武器のつもりで握っていたはずの矢が手から滑り落ちていった。
「――白焔《びゃくえん》、か。それがお前の名なのだな?」
「うん、そうそう。綺麗な名前でしょう?」
「それから、もう一匹が灰炎《かいえん》。そいつが、朔の夜に現れていた妖猫というわけか」
「そうなのー。さすが光成ちゃん。疑わずに、ぱぱっと理解してくれて助かるわぁ」
「……」
ぱちんっと音がしそうな勢いで片目を瞑ってみせた相手の甘えた口調に、先ほどから私の眉間にはしわが刻まれっ放しだ。
特に、『光成ちゃん』と呼ばれる度に、ぞわぞわとした悪寒が背すじを走り抜けていく。
しかし、“これ”が相手の本性らしい。
そして、私相手には何の隠し事もしない。建殿に乗り移ったことも含めて、実は全ての真相を話すために今夜この邸にやってきたのだと聞かされてしまえば、多少のことには目を瞑らざるを得ない。
建殿の声で『光成ちゃん』と呼ばれ、『うふっ』とご機嫌に身体をくねらせているさまを見せられるのは、かなり微妙な心地であるし、甚だ不本意でもあるのだが。
妖猫の体長、鳴き声、体毛の色の変化。現れる時刻。『朔の夜』を軸にし、諸々の材料から私が考察した通り、妖猫は二匹存在していた。
建殿の身体に入り込んでいるこいつは、大陸で名を馳せた大妖《たいよう》、白焔。
もう一匹。朔の夜にのみ現れている別の妖猫は、灰炎。この白焔の眷族《けんぞく》で、灰炎のほうが先に大陸から我が国へとやってきたという。
「灰炎ちゃんたらねぇ。アタシがちょーっと『美の追求・大冒険』に出てる間に他の眷族とのいざこざに巻き込まれて、壮絶な死闘を繰り広げちゃってぇ。で、負けて大怪我したまんま、この国に逃げてきたのね? だから、頭領のアタシが探しにきたわけなんだけどー。ここで、大きな問題にぶち当たっちゃったのよぅ」
その、『ぶち当たった問題』とやらのせいで、建殿がこのようなことになってしまったらしいのだ。
「灰炎ちゃんの気配を辿って内裏《だいり》までやってきたはいいけど、ここって陰陽師たちが結界を張ってるでしょ? アタシ、お庭や建物の屋根くらいなら自由に動けるけど、灰炎ちゃんの気配を感じる場所にはどうしても行けないの。妖力が強すぎて。それでも灰炎ちゃんを探そうと内裏をうろつく度に、陰陽師や光成ちゃんに追われて。身を守るために仕方なく応戦してたけど、あれ、ものすごい精神的苦痛だったわぁ」
だから、こいつは庭や門の上にいつも居たのだ。
「灰炎ちゃんの捜索は、そこで行き詰まっちゃったの。で、これはアタシの推測なんだけどぉ。灰炎ちゃんはまだ子猫でアタシほどの妖力がない。おまけに、眷族との闘いで負った傷のせいで、それがさらに弱ってる。だから、妖力が高まる朔《さく》の夜にしか動けない。でも、それも結界のおかげで妖力の暴走が抑えられてるはずなの。逆に言えば、朔の夜以外は結界が張られてる宮中のどこかに潜むことが出来てる、というわけね」
この推測が正しければ、由々しき問題だ。なぜなら、灰炎という子猫妖怪が潜んでいるのは、宮中のいずれかの殿舍ということになる。
「そこで、アタシ考えたの。協力者を見つけようって。それが、あなたよ。弓の名手、藤原光成ちゃん?」
「私を『欲しい』と言ったのは、それが理由か。弓が多少使えるということが、何の協力になるというのだ?」
「あら、ご謙遜ね。多少どころか、かなりの達人だと聞いてるわよ。詳しい説明は今は省くけど、灰炎ちゃんは闘いで負けた時に正気を失っててね。だから、アタシの“声”が全然届かない。それを元に戻すために、光成ちゃんの弓の腕前を借りたいと思ったの。破魔の矢を上手く利用すれば、それが可能だから」
破魔の矢で、妖猫に何かをするわけだな。ならば、私でも――。
「でもね、建が『それは駄目だ』って言ったのよ」
「え?」
「『光成だけは駄目だ。代わりに自分が何でもするから、あいつには指一本触れるな。取り憑いたりするな』って」
「……建殿、が?」
「そうなのー。『私の身体なら、いくらでも使わせてやる。今すぐ連れ去っていけ。その代わり、光成には絶対に手出しするな』って、もう必死の形相でアタシにしがみついて離れなかったのよ。だからアタシ、建を連れ帰っ……」
「おい! それは、いつのことだっ? 建殿は、なぜ、そんなことを……私を庇うようなことになったのだ!」
何がどうなっているのか、わからない。建殿が、身を捨ててまで私を庇う理由も、何も。
けれど、確認せずにはいられない。建殿の姿の別人の話を途中でさえぎり、建殿の声での説明を要求した。
「えー? 『いつ』って、あの時よ。陰陽師見習いの小僧と建がふたりだけでアタシと対峙したこと、あったでしょ? その時ちょうど、アタシも光成ちゃんを協力者に決めた時でぇ。でもその夜、光成ちゃんの姿が見えなかったから、建に聞いたのよ。『我《われ》が用があるのは藤原光成であるのに、なぜ今宵は居らぬのか』って。それで、さっき言った建とのやり取りに戻るわけ」
あぁ、そうか。今、ようやく腑に落ちた。
白焔の説明は、建殿が攫われた時の様子について基射様が話してくださった内容と合致する。
『源《げん》の蔵人殿は攫われる直前、妖猫と何やら言葉を交わしていたらしい』
基射様は、おっしゃっておられた。建殿は必死な様子で何かを叫び、妖猫にしがみついていたと。その“叫び”は、私の身を庇うための言葉だったのだ。
「そうそう。建ねー、アタシに身体を明け渡す直前も『光成の身体は、私が守る。決して、お前の好きにはさせん!』とかなんとか、鼻息荒く言い切っちゃってたわよぉ。この子、本当に光成ちゃんのことが大切なのよねぇ」
「……馬鹿」
やめろ、馬鹿。
口調は全然違うのに、建殿の姿と声で説明されているから、まるで本人に言われているような錯覚に陥ってしまうではないか。あぁ、紛らわしい!
それに、建殿も真実のお馬鹿さんだ。こんな私のために自分が犠牲になって、いったい何の得があるというのか……。
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