3 / 5
重ね積もれる、もみぢ葉の
2−1
しおりを挟む「あぁ、癒されるぅ。日々の疲れが取れるなぁ」
「本当ですねぇ」
「ふあぁ、ぽかぽかしてきたぞ。この、徐々に身体が温まっていく感じも堪らない。それに湯の感触もとても良いなぁ」
——ちゃぷんっ
「ぬるっとしているが、これが良いんだ。おかげで肌が潤ってきてる。ほら、触ってみてくれ。すべすべだろう?」
「あ、本当に。しっとりとしていて、すべすべです」
「そうだろう、そうだろう。良き出湯に来られたものだ」
「はい、まことに良き湯ですね」
「それなら、お前も一緒に入ったらどうだ。先程から私ひとりが湯に浸かっているではないか」
「え? そ、そのような……私はご遠慮申し上げま……」
「遠慮は無用だ。さあ、私の隣に来い。そぉーれっ!」
「きゃあっ!」
——ばっしゃーん!
「ぷはっ! 建様、酷いです!」
「わははっ! これで明親も出湯仲間だ。——おーい、光成! お前も一緒に入ろう。なぜ、そんなに離れた場所で足湯だけやっているのだ? せっかくの出湯がもったいないぞ。こんなに気持ちいいのにー」
……知りません。
「建様、鼻にお湯が入ってしまいましたぁ。ごほほっ!」
「おぉ、それは済まない。しかし、明親も湯で温まって良い気持ちだろう? ——おーい、光成っ。聞こえないのかぁ? お前もこっちに来いよ。一緒にちゃぷちゃぷしよう!」
知りませんよ。やりたければ可愛い従者とやればいい!
全く。どうして、こうなったのか。
「光成様。源蔵人様がお呼びですが、よろしいので?」
「構わない。私は足湯だけで充分だ。それに、このような野外で装束を脱いで単姿で湯に浸かるなど出来ぬ」
「そうですね。美麗な光成様にあんな粗野な真似は無理ですよね。まぁ、もしも光成様がその気になられたとしても、我が主の玉の素肌はこの武弥が命懸けで守りますが!」
私の予定では、建殿とふたりきりで来るはずだったのに。なぜ、互いの従者が同行しているのか。なぜ、当然のように従者たちが壁となって私たちの間を隔てているのか。
武弥もだ。京に置いてきたはずなのに、大津の別邸になぜか先回りしていた。いや、衣食住の全ての準備が整っていたのは嬉しいことなのだが。だが、おかしい。訝しい。なぜ、完璧だったはずの私の計画がこうも崩れてしまっ……。
「光成っ、迎えに来たぞーっ!」
「うわっ! なっ、何をなさるのです!」
「わはははっ。これで、お前も私とお揃いだぁ!」
「あぁ、もう。装束が濡れてしまったではありませんか。それに重いです。背中に張りつくのはおやめください」
嘘だ。重くない。衣がびしょ濡れになるのも構わない。ただ、不意の密着で跳ね上がった鼓動を知られたくない。
それに、憎まれ口ばかりきく私などより、素直で愛らしい従者の明親を構うほうが建殿は楽しいに決まって……。
「嫌だ、離さない。そもそも、光成と親睦を深めたい目的で紅葉狩りに誘ったのに! 離さないぞ。離すものか!」
え?
0
あなたにおすすめの小説
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
