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決意 #3
しおりを挟む「……あぁぁっ! んだよ、これ! 暇すぎ! 暇すぎじゃね?」
イライラが募ったあまり、俺が発した小学生レベルの叫び。それは、歩道脇に連なるビニールハウスに反響して、風に溶けていく。
跳ね返ってもこねぇ。俺の声に驚き、怒る通行人も居ねぇ。もちろん、隣で突っ込む初琉も居ねぇ。
……虚しい。
初琉が居ない帰り道が、こんなに虚しいなんて思ってもみなかった。
他愛ない話ばかりしてたはずなのにな。
アイツが隣に居ないってだけで、こんなにも時間を持て余してる。
「つか。田舎道、暇すぎだろっ! この前、俺らを邪魔した軽トラくらい通ってこいや!」
車一台すら通らねぇとか、どんだけ! 田舎道、どんだけ!
「……あ」
通った。いや、向こう側から走ってきた車が、榊家の門の前で止まった。
純和風の門塀に似合わない、誰もが知っているドイツ製の高級車から、ひとりの男が降り立った。遠目に見えるソイツは、車の印象通りの、隙のないスーツ姿。
「誰だ? アイツ。ひとの家の真ん前に、堂々と横づけしやがって」
厳密には俺ん家じゃねぇがな、と脳内で突っ込んで、男の動向を目で追う。
助手席側のドアを開けて笑顔で何か話しかけているが、曲がりくねった田舎道を歩いている俺からは、死角になっていて中が見えない。
だが、さっきから“ある予感”が、何度も脳裏をかすめていく。
それを否定し、見ないフリで、歩く速度を落とさずに徐々に車に近づく。
最後のカーブを曲がった時、中から昼間とは違う服装の初琉が出てくるのが見えた。
男が初琉の手を引き、小さな身体は抗わずにその胸に飛び込んでいく。
「……っ!」
そのまま、抱きしめられて動かない。
……何だ? おい、何してる? 誰だ、ソイツ。お前、なんで抱きしめられたまんまなんだ?
抵抗、しねぇのかよ。なんで……。
風になびく初琉の髪。それは、男の胸に顔を埋めたまま舞い上がり。ワンピースの裾が軽くはためいて細い脚を際立たせる様が、目に入る。
昼間とは違う服装。初めて見るレース地のワンピース姿――。
「……っ」
息を飲み、止まっていた呼吸を再開するのと同時に、走り出していた。一直線に。
「――初琉っ!」
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