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小さな手 #3
しおりを挟む“俺らしく”、初琉に接していくんじゃなかったのかよ。
アイツは……十束は親戚なんだ。当然、初琉とは小さな頃からのつき合いなんだろう。愛称で呼び合ってることからでも、よくわかるじゃないか。
それに、俺の気持ちは、根っこの部分では揺らいではいない。初琉が、幸せなら――。
「あの、お茶のお代わり、いる?」
「……っ。あ、あぁ。サンキュ」
遠慮がちな初琉の呼びかけに、強張っていた身体の力が抜けた。
同時に、空になった湯呑み茶碗を爪が白くなるほどに握りしめていたことに気づく。
お茶を注ぎやすいよう、湯呑みをそっとテーブルに戻した。すると、別のことにも気づいた。大きめの急須を持つ、初琉の手。小さく可愛らしいそれが、カタカタと宙で震えてる。
即座に見上げた。
「……っ、お前……」
声が続かない。どうした? なんで、そんな頼りなげな表情してんだ?
ほんの少し噛みしめられた唇。きゅっと引き結ばれた口元が、なぜか痛々しい。一点だけを見つめている瞳も、そうだ。見ているだけで胸が重苦しく、きりりと疼く。
だからだ。お茶を注ぎ終わって離れていく手を、そのままには出来なかった。
この時の自分の素早い動きを、後で自ら褒めてやろう。
まだお茶が入っている急須を初琉の手から奪い、カチャンと少しの音を立てただけでテーブルに避難させて。すかさず、空いた手を俺の両手で包み込んだ。
痛くないよう、でも簡単には振り払われないように力を込めて握リ、目線を合わせた。包み込んだ両手に、きゅっと力を入れて、下から伺うように絡めた視線は絶対に外さない。
「な、ななっ、何してっ……」
「ん? 震えてたから。温めてやろうと思って」
へぇ……顔、真っ赤だな。
自慢することでも褒められたことでもないが、今までに積み重ねてきた経験上、俺は女相手に有効な自分の武器というものを熟知している。
それが初琉にも有効なのだと、今、初めて知った。
意外だ。今まで、コイツは俺の見てくれなんかには欠片も興味がないみたいに、常に自然体の反応だったから。けど、今は――。
この反応は、明らかに俺を意識してる。自惚れじゃない。はっきりわかる。
が、この反応をからかうことも、それを俺のいいように受け取り、さらに惑わせることも。どれも頭には浮かばなかった。
「俺が、温めてやるよ」
今はただ、この手を温めてやりたい。駆け引きも下心も、一切なし。何が原因で手を震わせてるのか、それも聞かない。
俺に人並みの感情を教えてくれた惚れた女の手を、ただ温めてやりたいだけなんだ。
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