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繋ぐ絆、燃え立つ恋歌 #2
しおりを挟む休憩後、少し自転車を走らせると、緑に覆われた小高い丘が見えてくる。今日の目的地だ。
「よし、着いた。展望台まで上るぞ」
「え? 目的地って、ここ?」
「そう。さ、おいで?」
どこに行くのか言わずに自転車を走らせていた俺の目的地を知り、疑問でいっぱいという顔で見上げられたが、笑みだけを返して手を引く。
土と木で作られた階段をゆっくりと上り始めた。初琉のペースに合わせて、ゆっくり、ゆっくりと――。
「はあぁ……やっと着いたぁ」
「うん、良く頑張ったな。えらい、えらい」
途中、一度止まって息を整えたが。それきり、一度も立ち止まることなく頂上まで上りきった初琉の達成感と安堵の入り混じった笑みに、つい手が伸びる。
階段を上っている間の真剣な表情と、今のこの笑みに込められているものは、体力に不安のある者にしかわからない心情だろう。
軽く抱き寄せ、いたわりの気持ちを込めて、柔らかな髪を撫でた。
まるで小さな子供にするような俺の仕草に、「もう……」と小さく声が上がったが、いつもの憎まれ口が続くことはなく。ただ、面映ゆそうに目が伏せられた。
俺の腕の中でじっとしているさまが、堪らなく可愛い。
ヤバいな。視界の端に他の観光客の姿が入ってなければ、抱き上げて撫で回してるかもしれないくらいの可愛さだ。
「甘樫丘、ひさしぶりに上ったわ」
展望台を歩きながら、懐かしそうに初琉が呟く。まばらに残った桜の紅葉を見上げたり、眼下に広がる明日香村の景色をゆっくりと見渡したり、記憶の中を探っているような表情。
「住んでると、近すぎて意外と来ないものなんだな」
「小学校以来かも。でも景色はその時と変わってへん気がする」
山と田畑、木々に囲まれた昔ながらの家並み。古代の遺構を内包する静閑な景色を見るその目に、どんな思い出がよぎったのか。懐かしそうな中にも、どこか寂しげな笑みが、今、目の前にある。
だが、その表情には気づかないふりをして、小さな手を引いた。
甘樫丘――――古くは『日本書紀』にもその記述がみられる丘陵。標高148メートル。かつて、この地に飛鳥京が置かれていた頃、権勢を誇った蘇我氏の邸宅はこの丘の麓にあったという。古代の息吹を感じ、思い描くことが出来る場所だ。
「こっち側から見える山、わかるか?」
柵の前まで連れて行って、遠目に見える山を指差した。そのまま真後ろから初琉ごと包み込むように柵に両手をつく。つまり、柵と俺の間に、小さな身体を閉じ込めた。
腕の中に温もりを囲い込み、肩越しにその目を覗き込めば、頬を染めた相手は落ち着かなげに目を泳がせる。
「う、うん。それくらいはわかるよ。大和三山でしょ?」
落ち着かない目の動きで、俺と密着していることを周囲の観光客にどう思われているかを気にしてることがわかる。
なのに、気にはしてるのに俺の腕から逃げようとはしない。何だ、お前。今日は可愛らしさの大盤振る舞いか。
気を良くした俺は、軽く一歩踏み出て、密着度をさらに上げてやることにした。
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