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終
からくれないに、色づいて #2
しおりを挟む「わぁ、ここが零央の大学? 綺麗やねぇ。建物に趣があるわぁ。歴史ある学校って感じがするー」
「そうか? お前の短大もこんなんじゃねぇの?」
「全然違うわ。うちのは普通のビルやもん。あっ、礼拝堂! いやーん、礼拝堂もあるん? 素敵っ!」
「『いやーん』って、お前……」
お前のそんなテンションMAXの台詞、初めて聞いたぞ。つか、それ、今日一番の笑顔なんじゃね?
瞳を輝かせてキョロキョロした後、礼拝堂を見つけて全開の笑顔でそこに向かおうとする恋人を斜め上から見おろし、複雑な気分になった。
東京駅から山手線に乗り換え、俺の通う祥徳大学にやってきている。
本当は、大学近辺のパーキングに置いてある車に直接向かうつもりだったんだが、初琉が俺の通う大学をどうしても見てみたいっつーから、現在、学内の案内中。
「礼拝堂の中、入ってみるか?」
「え? あっ、いやいや大丈夫。礼拝堂なんて今まで見る機会なかったから珍しかっただけで」
「なら、余計に中も見たいんじゃね? 構わねーよ、入っても。ちょうど今日は一般公開してる曜日だし。ついでだから見ていけよ、なっ?」
「えっ、ちょっ! 零央っ?」
礼拝堂の正面まで俺を引っ張って歩いてたくせに、中へ誘った途端に遠慮する天の邪鬼を強引に内部に誘ってやった。
何とも言えない憧れの表情で外観を眺めてたくせに、よく言う。全く可愛くない。
けど、そういうところが可愛いヤツだ。
「わっ、すごい……綺麗やねぇ」
分厚い木製のドアを押し開き、足を踏み入れた場で感嘆の呟きを零したきり、黙ってしまった。
何、考えてる? まぁ、年頃の娘がチャペルで物思うことは、たったひとつか。
薔薇窓から射し込む彩光で金色に輝くパイプオルガンをじっと見上げていた横顔が、ゆっくりと動く。側面に並ぶアーチ窓を眺めてから俺に微笑みかけてきた。
色白の頬が薔薇色に染まっているさまに、つい、ふらふらと誘われる。背後に回って緩く抱きしめ、そのまま可愛い婚約者の耳元に唇を寄せた。
「礼拝堂、気に入った? こっちのほうが良かったなら、今からでも変更は利くぞ?」
「うっ、ううん、大丈夫! これは、そんなんとちゃうから!」
「そ? でも、ウェディングドレスも着たいんじゃね?」
「……」
無言ってことは、“そういうこと”、か。素直じゃねぇわかりやすさが好ましい。
元々、初琉の希望で、榊家の氏神の神社に式の予約を入れただけだ。教会に変更したいなら、俺が神社に頭を下げに行っ……。
「あのっ、ほんまに違うのよ。ただね……似合うかなって、思っただけよ?」
「は?」
「零央は何でも似合うから……ここでタキシード着て立ってる零央の横で、私が釣り合うかを想像してただけ、なんよ。でも、どう贔屓目に想像しても、零央だけが綺麗でカッコいいから……」
か細い声が、静かな空間に溶けていく。心地良いその声音は、同時に俺の鼓膜を揺らし、胸までもを熱くさせる。
何だ、コイツ。可愛い。可愛くて大馬鹿だ。そんなヤツには、ご褒美とお仕置きしかねぇな。
「……っ……んっ」
肩越しに顎を捕らえ、衝動のままに深く唇を重ねた。
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