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終
からくれないに、色づいて #9
しおりを挟む「あー、やっぱ、少し違うな。なぁ、そう思わね?」
「……何が?」
「夕陽だよ。おんなじ夕暮れなのに、奈良で見てたのと東京じゃ、少し違う色に見えるんだよ」
「そう? 私には同じように見えるけど……都会やから、ビルの反射とか、光の屈折の違いとかちゃうの?」
「んー、何だろなぁ。微妙な差なんだけどさぁ」
日暮れ時。洋風建築なのに縁側があることにテンションが上がった初琉の要望で、庭の草木を眺めるのにつき合っている。
柔い冬の陽射しは、傾くのが早い。
奈良に比べて東京のほうが日没が早いというのも、帰宅してからの違和感のひとつでもある。この夕陽も、あっという間に沈んでいくだろう。
沈む前の最後の輝きを届けてくる日輪が照り映えるさまを、ふたり、口をつぐんで見つめた。
「寒くないか?」
毛布にくるんではいるが、底冷えのする季節だ。
腕の中に囲った初琉が心配で尋ねれば、もぞりと動いた頭が、その身を支えている俺の二の腕に重みをかけてきた。
「ううん、全然。めちゃめちゃ、あったかい」
「そ? なら、いいけど」
さっきから何度、俺の唇をくすぐっている初琉の髪に口づけただろう。
コイツが、俺にその重みを預けてくれている。それを実感するだけで、足の間に座らせた肢体を包む腕に、知らず、力がこもっていく。
――愛おしい。好きだ、コイツが。
何度、その感情を確認しても足りない。
こんなに愛おしいと思える存在に出逢えた。その温もりを手の中におさめることが出来ていることが、素直に嬉しい。
「零央?」
「ん? 何だ?」
庭を向いたまま、声がかけられる。
「もしかして……煙草、やめたん?」
おおぅ、気づいてたか。まぁ、そりゃそうか。榊家にいた時も庭で吸ってたし。
今までは、たぶん髪にも服にも煙のにおいが染みついてたはずだ。
「やめた」
簡潔に、ひと言だけ告げた。
「……ふーん」
それに対する反応も、ひと言だけ。
初琉の身体のためだが、別にわざわざ口にすることじゃない。
もう一度、「ふーん」と言った初琉が、俺の腕に猫のように額を擦りつけてきて、「ふふっ」と笑った。
俺には、これだけで充分だ。
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