からくれないに、色づいて【Eternity -エタニティ- シリーズ】

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からくれないに、色づいて #12

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「零央……好き」

「ん、俺も。そんで、俺のほうがずっと、お前に参ってる」

「ふふっ。またアホなこと言うて……逆でしょ?」

 クスクスと笑いながら、初琉のほうから軽いキスが贈られてくる。

 本当なのに。だってさ、この幼稚園児みてぇなキスにすら、欲情すんだぞ? 俺。ヤバすぎて、本人には言えねぇけどな。

「……ねぇ、零央?」

 笑いをおさめた初琉の声色が、変わった。

「私……私ね……」

 陽はすっかりと沈み、辺りは薄闇に包まれていたが、互いの輪郭ははっきりと見えていた。

 初琉の頭が一度俯き、また上げられる。紫紺色の闇の中で、視線が真っ直ぐに絡み合う。

「私ね……赤ちゃん、産みたい」

「初琉……」

 出産――――初琉の抱えている病気では、多大なリスクを伴うそのワードに、一瞬、返す言葉を失った。

「あー、うん。いいぞ。産んでくれ」

「え? いいの?」

 すぐに気を取り直した俺のかーるい返答に、硬かった表情が崩れて戸惑いの問いかけがその声に乗る。

「ん? 産みたいんだろ? お前がそう口に出すってことは、もう決意を固めてるってことなんじゃねえの? なら、俺がすることは、一つしかない」

 薄闇の中でもわかる、不安げな初琉の頬をそっと撫でる。愛おしさを込めて。

「お前の決意を受け止める。そんで後押しして、全力でサポートだ。あ、一つじゃなくなったな。ははっ!」

「ほんまや、三つやん。なんやの、もう。ふふっ」

 笑い声に明るさが感じ取れる。そうだ、それでいい。

 初琉の身体で出産を望むには、困難な問題にぶち当たることのほうが多いだろう。現実的に考えても、輸血しながらの妊娠生活になる可能性もある。

 無事に出産までこぎつけたとして、その後に待ち受ける問題も山積みに違いない。

 だが……いや、だからこそ。初琉の決意を、コイツがいだいた希望を、俺は優先する。

「おい、『三つ』だけじゃねーよ? まだ、あるぞ」

 毛布ごと、初琉の身体を抱え直す。

「まずは、お前をめいっぱい愛す」

 抱きしめる手に、力を込めた。

「愛して、愛して……俺がイタすぎてお前が逃げても、どこまでも追いかけて捕まえて、また愛してやる」

 この狂おしい想いが、全部伝わればいいのに。そう願いながら、頬ずりを繰り返した。

「うわぁ、そんなに? ふふっ。それで赤ちゃんにも恵まれたら、私の未来、幸せでいっぱいやねぇ」

「だろ?」

 もっと、笑え。抱えきれないほどの幸せで満たしてやる。

「ねぇ? たぶんやけど、零央にそっくりな男の子が産まれる気がするわ。私」

「え……それ、ヤバくね?」

「何で?」

「だって、ひとつ屋根の下にフェロモンたっぷりのイケメンがふたりも揃うんだぜ? ご近所の注目度、200%じゃねーか」

「……前言撤回。『零央よりもマシな』に訂正しますー」

「ひでー!」

「あははっ!」

 声を上げて笑いあう声が薄暮の庭に響いた時、縁側の端で弱い光が灯った。

 ソーラーライトが、ようやくその役目を果たしたようだ。傍らの桜の木をライトアップすることで、絵画のように見せてきている。

「わぁ、綺麗っ。冬の夜桜見物も乙なものやねぇ。ほんま、枝ぶりも色も見事やわぁ」

 黒闇に浮かび上がる寒桜を気に入ったらしい恋人が、無邪気に笑い、上機嫌で愛でている。

 可愛い。愛おしい。好きだ。好き。

 愛してる。

 絶対に、誰にも渡さない。俺だけの女。その横顔を、言い尽くせないほどの想いで俺も見つめる。

 初琉。お前こそが、俺の想いを染め上げる、たったひとつの“赤”。不変の熱情の証だ。

 お前だけを愛してる。愛していく――――永遠に。








-Fin-
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