同居人は王子様。

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戸惑いのハッピーバースデー。

#26

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あれから数日が過ぎ、ついに決戦である目黒さんの誕生日の前日がやってきた。

「今日も頑張れよ」

そう言ってレオンが朝に弁当を渡してくれるのは、二人にとって当たり前の日常になっていた。

「いつもありがとね、レオン」

「おう」

だが、今日のレオンは何だか朝からぎこちない気がする。

......まあ、気のせいかな。

「なあ」

レオンがモジモジとしながらあおいに話しかけた。

「今日は早く帰って来れるのか.....?」

「....うーん、まあいつも通りだと思うけど」

そう答えると、レオンはにっこり笑った。

「そっか!待ってるから、仕事頑張れよ」

笑顔でレオンに送り出され、あおいはマンションのエレベーターの中で一人首をひねった。

やっぱり、今日のレオン何かが変だな。

....まあいい。

明日の決戦に向けて、明日残業しないように今日頑張るんだ!

そう決意したあおいは、会社に向かって急ぎ始めた。





7月25日。

ついに俺の誕生日がやってきた。

6時に目が覚めて、いつも通りあおいの弁当を作る。

最近は健康バランスというのを考えた弁当作りにハマっている。

いつもの紺のエプロンを着けて、キッチンに立った。

このエプロンも洗濯しなきゃな、でも一着だから難しいんだよな。

そろそろもう一着エプロン買おうかな。

なんて考えながら料理していると、あおいが眠い目を擦りながら、俺の後ろに立っていた。


「.....あ、あおい!おはよ」

「ん.....?元気だね、おはよ」


ぶっきらぼうに挨拶されて、そのままあおいはトイレへと向かった。

.....なんだあいつ、今日俺の誕生日って分かってて焦らしてるのか?

まあいい。

きっとあいつ朝は苦手だから、夜お祝いしてくれるんだろう。

そう思って、あおいの出勤前に聞いてみたら今日はいつも通りに帰ってくるとのことだった。

よし、じゃあゆっくり夜は過ごせるんだな。

そう考えながらあおいを笑顔で見送った。



誰かに、誕生日を祝ってもらえるなんて久しぶりだった。

俺は今まで、兄上と誕生日が近かったのもあって、毎年二人の合同の誕生日パーティーを兄上の誕生日当日にやっていた。

きっと、俺なんかよりも両親は兄上のほうが大切だからなんだ......


そう気づいたのは物心ついてすぐだった。


両親は俺には、誕生日おめでとうなんて一言も言ってくれたことなかった。

だから俺が小さい頃はパーティーの後、毎回泣いていた俺を、兄上がぎゅっと抱きしめてくれていた。

....でも、今となればそんなこと懐かしい。

今日はあおいが祝ってくれるんだ....


そう考えると、自然と心が踊った。

晩御飯、何作ろうかな。

今日は久しぶりに奮発しても怒られないよな.....?


レオンはあおいの本棚にあるレシピ本を眺め始めた。
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