禍神

夜神颯冶

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「か~ご~め  カゴーノェ」

「カゴーノ  ナーカノ  トリーハ」

「イツー イツー デーアーウー」

「ヨアケノ バンニー」

「ツールト カーメガ デーアッタ」

「ウシロノショウメン ダーレ」

不可思議ふかしぎ不気味ぶきみ唄声うたごえだ。

かご女、籠女かごめ

普通に考えればかごの中の鳥だがそれもかごが加護かごでとりが鳥居とりいだとするなら、
加護の中の鳥居になる。

そう考えた途端に、
神社じんじゃ鳥居とりいが目の前に現れた。

鶴と亀の像をたたえたその鳥居とりいを、
その門をくぐった。

神社じんじゃの奥にかごめ唄が続いてこえてきた。

「い~つ い~つ で~やぁ~うぅ」

無邪気むじゃきわらべの唄と言うには、
あまりに不吉ふきつなその歌詞の意味を考える。

伍伍いついつる。
いつどきる?

またはいっする=同等の位置いちならぶ。

五つどきる。

または、いつか?

いつ=ルートから出て横にそれる。
するりと抜けさる。
記録からもれる。
世の中のことわりから外れる。
わくを越える。

いついつる。

または出やる。

出やる=すでに出ている。

そんな事を考えていると、
目の前に禁足地きんそくち看板かんばんが見えた。

禁足地きんそくちと書かれたその下に、
侵入禁止しんにゅうきんしの文字。

しめなわ封鎖ふうさされたその中から、
わらべ唄声うたごえがしていた。

禁足地きんそくち
それは、立ち入り禁止の聖域せいいき

その理由は、大きくわけて2つに別れる。

1つは危険な為と言う理由と、
神聖な聖域のためと言う理由の2つに。

たとえば有名な禁足地に、
八幡やわたのやぶ知らずなどがあるが。

そこも、入ると二度と出て来られないと
伝えられる禁足地である。

だが時代の風化と共に、
その理由は忘れさられ、
風習だけが残されていた。

こういった現象を、
昔の人は神隠しと呼んで恐れていた。

年間行方不明者数、約8万人。

俺は風化ふうかして黒ずんだその看板を見つめ、
鳥居とりい神域しんいきへの入り口なのを思い出していた。

 
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