宇宙漂流記

AD2085

A.D. 2085

　
「そしてその神話はまだ終わりません。
　現在１７歳となったお二人は、
　人類初の宇宙学園の生徒に任命され、
　今また新しい神話を刻きざもうとしています。

　その姿は神々こうごうしくすらあります。

　この二人は今、我々われわれの想像すらとどかない
　高みに昇ろうとしています。

　我々は今、
　神話の目撃者となっているのです」


大仰おおぎょうなナレーションを謳うたうマスコミをよそに
臆おくすることなく花道を歩む双子。


それとは裏腹うらはらにそれに続く学生達は、
形見かたみが狭せまそうにおずおずと、
それに続いていた。

それも無理はない。
１５歳から入学を許された学園で、
特別すでに１７歳で入学を許されたのは、
前を行く双子だけなのである。

後に続くのは若干１５歳の、
少年少女ばかりなのだ。

とは言え決して無能と言うわけではない。
いやむしろ誰もが誇ほこれるだけ優秀である。

IQ ２００越えなど普通の、
世界規模の受験を勝ち残った、
その国を代表する生徒ばかりなのだ。

言うなればここにいるのは、
受験オリンピックの、
メダリストばかりなのである。

そんな猛者もさばかりだとはいえ、
前を行く双子の偉業いぎょうの前ではかすみ、
前菜ぜんさいにもならないのも事実であろう。

人間の偉業は神の偉業の前では、
かき消えてしまうものだ。

それほどこの双子の存在そんざいは特別であり、
既すでに神話であった。

だが不思議と、
この双子に恥はじる者はなかった。

それはそうである。

人が神と張はり合おうとするだりうか？

嫉妬しっとするだろうか？

この二人は競きそい会うライバルなどではなく、
ただ見上げ崇拝すうはいるだけの、
人を超越ちょうえつした存在そんざいなのだ。

生徒達の中でも、
既すでにその存在は神格化しんかくかされていた。

そんな１５歳の生徒３０名の行進に、
フラッシュのシャワーが浴あびせられていた。

そしてその行進が通りすぎると、
その後に続くように年少の少年少女が再ふたたび、
宇宙船から降りたって来た。

その姿すがたを受け、
再びアナウンサーが饒舌じょうぜつに語りだす。


「高学年３０名の入場に続きまして、
　キッズ部門の入場です。

こちらは若干じゃっかん１３歳にして宇宙に降り立った
１２名、未来を担になう少年少女の行進です。

幼おさなくして親元おやもとを遠く離れ、
宇宙に降り立った、
初々ういういしい若人わこうど達たちの行進です」