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しおりを挟む「…ふっ、ふふっ」
「お嬢様?!」
メイサがさっと隣に来て、私をゆっくりと立たせた。ナタリーはナタリーで急に笑いだした私をみて顔を青くする。
ごめん、こわいよね。
用意された椅子に座り肩を奮わせる。やばいツボってしまった。ひぃ、とかふぅっとか息を切らせながら何とか笑いをこらえる。
表情筋がピクピクしているのが分かる。周りから見たら相当悪党な笑い顔ね。
「…ふぅっ、っぷ、はぁっ…ごめんなさい。思い出し笑いしちゃった」
「お嬢様がお笑いに…??」とメイサが目を見開き驚いている。
「…あの、父はどうなるのでしょうか…?」
「うん。どうしてほしい?」
「え?」
「メイサ、厩舎の管理が出来る人ってナタリーのお父さ…えと父親の他に誰かいる?」
「ナタリーの父親はディドと申します。はい。交代で管理している者が1名と、雇えばすぐにでも」
「そっ、それは、父は解雇という事でしょうか?」
青ざめた表情のままナタリーは声を張る。
「ナタリー、もしまた同じような事が起きたらどうする?私やこの屋敷の人間だけではなく、オブライト家にいらっしゃったお客様に同様か、これ以上の事があったとすれば?きっと大事になるわよね」
「…っ」
それはオブライト家の問題にもなり、ナタリーの父親のディドは牢に入れられるかそれ以上の事もありえる。
ゲームの中でも小さなイベントから大きなイベントが組み込まれていた。
この世界はありがちな、THE貴族社会。
よその貴族や希に皇族も出入りするこの屋敷で、トラブルが起こると大変大事だ。
まあ私が3日寝込んでいただけでも大事になっていたみたいだからなぁ。ってこの件に関してレオノールの父親は何もしていないの?
私が目覚めた時、大号泣して喜んでいた位には愛されていたと思うけど。父親からの愛情を感じた事なんてなかったから、戸惑いつつも少し嬉しかったんだよなぁ。
「メイサ、お父様はなんと?」
「この件についてもそうですが、ご教育の為このようにレオノールお嬢様に関わった事柄は、レオノールお嬢様ご本人に一任されております」
え?私まだこんなに小さな子供なのに?
そんな簡単に人事を好き勝手に操っても良いの?
道徳やら理念やらまったく育ってないよね?
その瞬間の感情一つで、人の人生決めちゃうんじゃないの?
まあ…そっか。だからレオノールなんだよね。ただでさえヤバいレオノールだもん。
こんなに好き勝手、思うがままに生きていれば悪役令嬢にでもなるよね。
まあそれならそれで都合がいい。
「それではナタリー、ディドにはすぐにでもお医者様に診てもらい、体調が良くなるまで静養してもらいましょう」
「え…はい…?」
うん。当たり前の事を言っている。体調が悪ければば医者に診てもらい、良くなるまで休むの。
「それがこの度の罰よ」
「そ、それで宜しいのですか?お嬢様…」
メイサが口をパクパクしながら私に問う。
「オブライト家で働く者はオブライト家が責任を持つわ。医療費はもちろん、静養中のお給料も支払うし体調が戻れば元の厩舎の仕事に戻れば良い。
イレギュラーが起こればその時一緒に考えましょう」
ブラック企業に勤めていた私。それはそれは会社が憎かった。
でも何の取り柄もない私は辞めることも出来ないまま大きなストレスと、とれない疲れを抱え馬車馬のように働いた。
きっとこのオブライト家もブラックね。
これからは変えていかないと。あんな辛い思いしたくもないし見たくもない。
「うっ…レオノールお嬢様っ…このご恩は一生忘れません…本当に…本当にありがとうございます」
きっとディドは良い父親なのね。そしてナタリーも父親思いだ。なんて羨ましい関係なのだろう。
頭を下げ泣きじゃくるナタリーを見て思う。
どう?この世界の神様。
私はレオノールをやらないわよ?
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