推しに婚約破棄されたとしても可愛いので許す

まと

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いま私、すっごく格好良くきまったよね!!

どう?ランデル!これであなたは晴れて自由の身だよ!真顔か、どうでも良さそうな顔してるんだろうけど、きっと喜んでくれてるよね?!!

私は満面の笑顔でランデルを見た。

「え…と、ランデル?」

ランデルは私を見ていた。信じられないモノを見るような驚いた目で。

「ラ…ランデル?」

え?何?




「ランデル、そなたもそれでよいな?それとも意見はあるか?」

陛下がランデルに問う。



陛下からランデルに視線を戻した時には、いつものランデルに表情に戻っていた。



「いえ。承知致しました」












「それじゃあランデル、またね」

「…」

「あ、あの。婚約の事、勝手に決めてしまってごめんなさい。驚かせたわよね?」

おかしいな。ゲームの中のランデルだったら万歳三唱で喜んでる案件だよね?
もう、あのレオノールと結婚しなくていいんだよ?

でも、何故だろう?なんだか怒りのオーラを感じるような…。

真意を探るようにランデルの瞳を覗き込もうとしてもよく分からない。



「君の…言っていた事はこれ?」

「え?」

ぽつりとランデルが呟いた。

うっすらと口角をあげたランデルは、私を見て蔑むような目をして笑った。

「君はやっぱりレオノールだ」

「ランデル」

「さようなら、レオノール」

「…っ、待って、ランデル」



振り返らず去って行くランデル。



どうしよう?



私、何かを間違っちゃったのかな?








「それは王族のプライドです」


屋敷に帰った私はメイサに泣きついた。

「そんな!私と結婚しなくてすむのよ?それに勝るプライドなんてあるの?!」

「…レオノールお嬢様、ご自分でそのような悲しい事を言わないで下さいませ」

はぁ…とため息をつくメイサ。


じわりと視界が涙で滲む。

鮮明と脳裏に浮かぶのは、ランデルが見せた顔。
あんな笑い方をしたランデルが見たかった訳じゃない。

そうさせたのは自分か…。

蔑すみだけじゃない、少し悲しそうな目。

去っていく、幼くて小さな背中を思い出すと胸が苦しくなる。


もしかすると、少しだけ大人しくなったレオノールに心を開いてくれたのかもしれない。

それでも…!

メイサの言う通りランデルのプライドを傷付けたとしても、ただ本当に悲しませたのだとしても、私はこの婚約を成立させてはいけない。



ランデルの為にも、私の為にも。





だって、どう嘆いたって私は悪役令嬢のレオノールなんだから。



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