推しに婚約破棄されたとしても可愛いので許す

まと

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「ラッ、ランデル…手が早いわ」

恥ずかしくて顔が上げられない。あのランデルとキス…してしまった。

「…そうかな。僕はずっと我慢していたけど」

「がっ、我慢??」

「それはそうだよ。僕は長い間待たされたんだから」

「う…」

それには何とも返せない。今までの私の不可思議な行動を、ランデルに伝えるには無理がある。

実は私はレオノールじゃなく転生者で、この世界が舞台の恋愛ゲームにハマってて、推しはランデルだって事。

…意味不明な言葉ばかりで困惑させちゃうよね。

「どうしてか、君は僕を大切にしてくれる癖にやんわり突き放す」

「君が分からなくて虚しくなる事もあったけど、それでも逃がすつもりはなかった」

「…」

突然ぎゅっと抱き締められる。


「ようやくこうして触れて、抱き締められる」

「ランデル…」

「そろそろ捕まってくれる?僕のレオノール」

「…はい…喜んで」




                                    数ヵ月後



今日は学園の卒業パーティーだ。

私が、いやレオノールが断罪された日。

「ご卒業おめでとうございます、お姉さま」

「ありがとうシャル」

「せっかくお姉さまを追いかけて王都まできたというのに…」

「大丈夫よ。あなたにはフレント殿下がいらっしゃるもの」

「ちっ…違います!フレント殿下はただのお友達ですわ」

珍しい…シャルが動揺してる。何かあったのかな?

「とにかくお姉さま、油断しないでくださいね」

フリフリのピンクのドレスを可愛く纏ったシャルが、私に耳打ちする。

「シャル、分かってるわ」


あれからマリローズは姿を消した。

おそらく両親がどこかに匿っているのだろう。そのせいでマリローズの両親は周囲から白い目で見られ、商売も上手くいっていないと聞く。

それには正直胸が痛む。

「何故ですか?娘を守りたいという気持ちは分かりますが、実際にそれをしてしまってはだめじゃないですか。結局刑が重くなるばかりだし、本人の為にはなりません」

愛があるなら首根っこを引っ張ってでも連れてきて、謝罪させるべきです。

と拳を握りしめるシャル。

「そうかもね…」

華やかな会場にどんどん人が集まってくる。



きっと、もし姿を現すのだとすれは今日。




私を始末しに来るのはランデルではなく、マリローズかもしれない。


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