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しおりを挟むピカピカに整えられた爪が、額に突き刺さりそうな程頭を抱える事になるとは…。
「アデリナお嬢様、せっかくの美しい肌に傷がついてしまいますわ」
深い椅子に腰を掛け直し、じとりとした目付きで専属メイドのマーヤを見つめる。
「…ねえマーヤ、私、確か嫌われ者のアデリナだったわよね?」
「えっ…?」
「親の力で公爵家の婚約者の座を掴みとった、卑劣な人間よね?アデリナは」
「卑劣…?名のある貴族はだいたい親同士が婚約を決めるものでは?
それに、アデリナお嬢様を婚約者にと申されたのは先代の公爵様ではありませんか」
「…性格悪くて愛想もなく高飛車で、目つきの悪い悪魔みたいな悪役令嬢と言われているはずよ、アデリナは」
「まあ…死んだ魚の目…いえ、無気力でやる気のなさが滲み出ていて、今更婚約者争いするのも馬鹿らしいと他のご令嬢の方達はおっしゃっているみたいですねぇ」
死んだ魚の目…。
「…私が作り上げてきたアデリナのイメージとまるで違うじゃない」
「そもそも社交の場にはお出になられませんし、極力人と関わらないのがお嬢様でしょう?」
「…くっ…」
それでも目が合えば思いきり逸らしたし、話しかけられても言葉少なめの嫌な女だった。
だって、お嬢様達シリーズの小説に出てくる悪役令嬢は、いつだってツンツンツンツンツンして偉そうだった。
それさえしておけば、アデリナの嫌な噂が勝手に一人歩きしてくれるのだと思っていた。
「まあ…たまにお姿を現せば、オドオド、キョドキョドされていて可哀想な程だと言うのは真実でございます」
「なっ」
「お嬢様の為を思い、失礼ながらこのマーヤが言わせて頂くと…周囲が思うアデリナ様のイメージというのは…」
ゴクリと息を飲む。
「不名誉ながら…根暗です」
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