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しおりを挟むアイツ(情報屋)…本当にどこまで話してくれてんのよ…!
というか…!!
「ち」
「ち?」
「ちちちちちかーーーーい!!!」
スタンリー様の顔を両手で鷲掴み、ぐいっと押し離す。
「なんて事をするんだ、アデリナ」
痛いじゃないかと赤くなった頬を擦るスタンリー様。
「それはこちらの台詞です!!よくも私を騙しましたね?」
「ん?うーん…、騙したと言えば騙したのかもしれないが、考えてみて欲しい」
「何を…ですか?」
ふむ、と静かに目を伏せるスタンリー様。
睫毛なが…。
「待てど暮らせ自分の前にも、社交場のどこにも姿を現さない婚約者。
たまーに父親と我が屋敷に来ても、しぶしぶ連れて来られた感を平気で出してくるぶっちょう面の婚約者」
「だっ…だってそれはっ!!」
本当に引きずり連れ出されたんだもの!
「しかも裏で婚約解消を目論むなんて…それを聞かされた時のオレの気持ちが分かる?」
………本当…言葉にすればする程、なんて酷い女なの私は…クズね…。
でも、
「…スタンリー様、それは本当に申し訳ありませんでしたわ…これまでのご無礼な態度をお許しくださいませ」
「アデリナ」
「ですが…スタンリー様もご存知の通り、私は引きこもりの根暗。公爵家当主の妻など務まるはずがありません。私には荷が重いのです」
「それだけ?」
「…………正直スタンリー様も苦手です。いつもキラキラキラキラ眩しくて、焦げてついてしまいそうです…結婚したらしたで女性関係にいつまでも悩まされそうですし…」
私は穏やかに暮らしたいの。
「それって、オレが嫌いという訳ではないんだよね。じゃあ問題はないな」
「あの、話聞いてました?」
「ああ、そういえばオレも聞きたかったんだけど、聖女見習いの3年後にオレが婚約破棄せず、君の帰りを待っていたらどうしたの?」
「?なんの得があってそんな事…私を待つ意味などないでしょう。そうですね…まずスタンリー様のプライドが許さないでしょうし、跡取りだって必要ですわ」
「そうだね。3年後のオレは25歳で、君は22歳だ」
スタンリー様は跡取り候補が数名いてもおかしくないし、私は結婚適齢期ギリギリと言った所か。
「だけどオレは君を待つだろう」
「…!」
「ふふっ。面白い顔をするね。そうだ、聖女がだめなら魔女にでもなるかい?」
「ば…馬鹿にしていますか?」
本当に馬鹿なアデリナ!スタンリー様の言うことにいちいち間に受けてはダメよ!
「いや?そんな事ないよ。でもアデリナ、君がやっている事、君のお父上は知っているの?」
「……!!!」
「だよね?知られたら大変なのでは?」
「…今日のところは帰りますわ」
「そう?残念だな」
「…………………」
「気をつけてお帰り」
一礼をし部屋を出る。
力なく、そして弱々しく馬車に乗り込んだ。
「…何をしに…ここに来たのかしら」
馬車の中から広大な庭に囲まれた、これまた大きな屋敷を死んだ魚のような目で見つめる。
「うちもそこそこ広いけど…ここまで広すぎる屋敷に住むには、相当な体力がいりそうね…」
こちらから婚約破棄が出来ないのは、爵位がスタンリー様より低いのもあった。
けれどこの件があの父にバレたら…と考えるだけでも恐ろしい…。
バレない為に残された道は…………スタンリー様とおとなしく結婚するしかない…か。
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