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人間もモンスターも好きすぎる件
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村から出て、森の入り口付近まで辿り着いたニナは、異空間にあるアイテムボックスにパンの袋を入れた。
そして周りに誰もいない事を確認し、ポンッという音とともに人間の少年から真っ白な毛玉に姿を変えた。
そう、オレことホワイトタヌキだ。
前世で人間だった事を思い出したオレ。そうなると人間の事が恋しくて恋しくてたまらない。
もともと寂しがり屋なオレは、モンスター達の事が大好きで、仲良くなったら遊んでもらったりと可愛がってもらっていた。
例えば、たまに森の中で人間に遭遇する。オレの能力なのか何なのか、ヤバイやつとそうでないやつの違いが何となく分かる。
ヤバイやつっていうのはオレに危害を与えるやつ。
自分でいうのもアレだが、まあ可愛らしくレアな存在らしいそんなオレだ。捕まって売買されたり、毛皮にされたりと酷い目に合う。
とにかくオレは、可愛いだけの激弱なので甘える相手をちゃんと見極めないといけない。
そこで出会ったのがパン屋のハイツ、おじさんだ。おじさんはパン作りに使えそうな木の実などを採りにきていた。
目と目が合った瞬間に分かった。
あ、可愛いがってくれる人だって。
興奮したオレはテテテッと近付いておじさんに向かってジャンプした。驚いたおじさんは採取袋を投げて、見事両手でオレをキャッチした。
オレは甘えた。今思うと恥ずかしい位には甘えまくった。だって会いたくて会いたくてたまらなかった人間だ。もうワンコだった。ワンコのように懐いた。
そういえばオレって前世に存在したポメラニアンに似ている。
おじさんもおじさんでオレを可愛がりまくった。オレをこれでもかと撫でくりました後、うちの店のパンを食べるか?と聞いてきた。
ほらっとちぎって食べさせてくれたのが、いつも買う穀物とドライフルーツがたっぷり入ったカンパーニュだった。
オレは感動した。なんて美味しいパンなんだと。前世ではなかなかのグルメだったオレ。旨いと評判のパン屋にはよく足を運んだ。
そう、この世界でも出逢ってしまったのだ。最高のパンと!そしてハイツという優しいおじさんとも!
それからおじさんは名残惜しそうに帰っていった。…がオレは密かにおじさんの後をつけた。
ホワイトタヌキの能力のひとつに人化がある。オレはその時、はじめて人間に化けた。15.6歳くらいの少年だった。服もイメージした通りに着ていたので安心した。
おじさんは森を抜けた先の、少し離れた村に入っていった。
恐る恐る村に足を踏み入れ、ゆっくり歩き進めると賑やかな人の声が聞こえた。
笑顔で走り回る子供達。活気ある商人が声を張り上げる。
その横を、お喋りをしながら行きかう大人達。村の中にある小さな市場のようだった。
人間だ。沢山の人間がいる。足が震えた。
賑やかで騒がしいのに、穏やかで暖かい場所。
きゅうっと胸がしめつけられる。
気付けば涙が頬を伝っていた。
そして周りに誰もいない事を確認し、ポンッという音とともに人間の少年から真っ白な毛玉に姿を変えた。
そう、オレことホワイトタヌキだ。
前世で人間だった事を思い出したオレ。そうなると人間の事が恋しくて恋しくてたまらない。
もともと寂しがり屋なオレは、モンスター達の事が大好きで、仲良くなったら遊んでもらったりと可愛がってもらっていた。
例えば、たまに森の中で人間に遭遇する。オレの能力なのか何なのか、ヤバイやつとそうでないやつの違いが何となく分かる。
ヤバイやつっていうのはオレに危害を与えるやつ。
自分でいうのもアレだが、まあ可愛らしくレアな存在らしいそんなオレだ。捕まって売買されたり、毛皮にされたりと酷い目に合う。
とにかくオレは、可愛いだけの激弱なので甘える相手をちゃんと見極めないといけない。
そこで出会ったのがパン屋のハイツ、おじさんだ。おじさんはパン作りに使えそうな木の実などを採りにきていた。
目と目が合った瞬間に分かった。
あ、可愛いがってくれる人だって。
興奮したオレはテテテッと近付いておじさんに向かってジャンプした。驚いたおじさんは採取袋を投げて、見事両手でオレをキャッチした。
オレは甘えた。今思うと恥ずかしい位には甘えまくった。だって会いたくて会いたくてたまらなかった人間だ。もうワンコだった。ワンコのように懐いた。
そういえばオレって前世に存在したポメラニアンに似ている。
おじさんもおじさんでオレを可愛がりまくった。オレをこれでもかと撫でくりました後、うちの店のパンを食べるか?と聞いてきた。
ほらっとちぎって食べさせてくれたのが、いつも買う穀物とドライフルーツがたっぷり入ったカンパーニュだった。
オレは感動した。なんて美味しいパンなんだと。前世ではなかなかのグルメだったオレ。旨いと評判のパン屋にはよく足を運んだ。
そう、この世界でも出逢ってしまったのだ。最高のパンと!そしてハイツという優しいおじさんとも!
それからおじさんは名残惜しそうに帰っていった。…がオレは密かにおじさんの後をつけた。
ホワイトタヌキの能力のひとつに人化がある。オレはその時、はじめて人間に化けた。15.6歳くらいの少年だった。服もイメージした通りに着ていたので安心した。
おじさんは森を抜けた先の、少し離れた村に入っていった。
恐る恐る村に足を踏み入れ、ゆっくり歩き進めると賑やかな人の声が聞こえた。
笑顔で走り回る子供達。活気ある商人が声を張り上げる。
その横を、お喋りをしながら行きかう大人達。村の中にある小さな市場のようだった。
人間だ。沢山の人間がいる。足が震えた。
賑やかで騒がしいのに、穏やかで暖かい場所。
きゅうっと胸がしめつけられる。
気付けば涙が頬を伝っていた。
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