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その筋肉で眠らせて
しおりを挟む「万能薬と虫除けスプレー…こっ、これはまさか!」
クロエがプルプルと震える手で持つ瓶は、新商品の美容コレ1本クリームだ。
「うん。それ1本でお肌うるうるツヤツヤになるよ」
「やーん!!最高だよアンタ!こりゃ女冒険者達がヒーヒー言って喜ぶよ!
なんせこれひとつ塗りゃあ手入れは終わるんだ。香りも良いし癒されるね~。
試作品を試した時は、本当に感動したもんさ」
「そか、良かっ…ふぁ~ぁあ」
やばいあくびが出る。
あれから巣穴に戻ったオレは超頑張った。
必死に薬を作った。
おなじみの万能薬と、最近地味に人気のあるハーブで作った虫除けスプレー。
そして疲れを通り越し、ナチュラルハイになったオレは薬草と花とハチミツなどを混ぜ込んだ美容クリームを作った。
以前、試作品としてクロエに使ってもらったらかなり良かったみたいで、商品化しようとなった訳だ。
「どうした坊主??寝不足か?目にクマなんか作って」
声をかけてきたのはSランクの冒険者、ラオールだ。
大きな身体に鍛えられた筋肉。ニカッと笑うと、ワイルドで格好いいオヤジだ。
ふらふらとラオールの前に立ち、腰に抱き着く。鍛えられた腹に頭をグリグリと擦り付ける。
「うぅ~…おはよーう、ラオール」
あぁ、何て落ち着く筋肉なのだ。守られている感が半端ない。この筋肉美たるや…。
「ははは、お前は犬っころみたいなやつだなぁ」
大きな手で頭をポンポンされる。
「ニナ、アンタ本当に筋肉好きだねえ。ガタイのいい奴なら、誰でも彼でも抱き着くんじゃないよ!」
変な奴に襲われでもしたらどうすんだいっ!と怒るクロエ。
失礼な!さすがのオレでも相手は選ぶ。
オレは、オレを安全に、優しく包み込んでくれる筋肉の見極めはピカイチだ!…って何言ってんだろう。
本気で眠い。
「ラオールぅ~オレ頑張ったんだよー、薬いっぱい作ったからね。何かあったら塗ってね」
絶対だよ。といまだにラオールの腹に額をつけ、目を閉じたまま喋るオレ。
もう、ほぼ寝ている。
「ああっ、そうだな。坊主が作った薬は、そこら辺の医者に見てもらうよりタメになる。クロエ、ひとつ用意しておいてくれ。
坊主の薬はすぐ売り切れるからな!」
まじで?そう言ってもらうとオレ、調子にのっちゃうよ?
嬉しいなー。
そりゃ、薬を塗る機会なんて少ない方が良い。
だけどこうやって誰かが必要としてくれると、心がこんなにも満たされる。
「ニナ?やだ…ラオール、この子寝ちゃってる」
「何だと?はははっ、仕方ねーなぁっ」
よいしょっと、と立ったまま寝るオレを、お姫様抱っこするラオール。素敵だ。
「悪いけど仮眠室で寝かせてやって」
「ああ、良く頑張ったな坊主」
「ふふっ、この子、寝ながら微笑んでるよ」
こうして無事にギルドに薬を卸せたオレだったのです。
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