もふもふホワイトタヌキに転生したオレ~ほら第二王子、もふもふしてもいいんだゼ☆

まと

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アンナの罪

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ふと、去っていく馬車を睨み付ける。

「何で私があんなボロい馬車に乗らなきゃ行けないのよっ!」

痛めた腰をさすりながら大きな城を見上げた。

「ここが…王城…」

とうとうここまで来た。

私は王室の別荘、つまりは第二王子殿下の為に建てられた、あの屋敷専用のメイドだ。

私を含め、他の使用人も田舎から出てきた者ばかり。
なので男も女も芋くさい地味なかやつらばかりでがっかりしていた。

けれど初めて殿下を見た時は驚いた。
あまりの美しさに皆言葉を失う程だ。
なんて素敵な方なのだろう。
女としてこの方の近くにいたい、とそう思うようになった。

あの屋敷の中で、仕事の出来る私は頭角を表していた。

皆、王都で働く事を夢見ている。
出世して、あんなド田舎の森の中にあるような屋敷なんて早く出たい。

だってあそこは殿下の一時的なご静養の為の屋敷。
いつクビを切られてもおかしくない場所なのだ。



そんな風に鬱々している時に、王都に戻られている殿下から登城するように命じられた。

これは出世?もしくは…きゃー!!!
あるかもしれない。だって私は、自分でいうのも何だが村一番の美人だった。

魔獣の皮を売って生計を立てていた両親は、その魔獣に殺されたが、私は見目が良かったので住むところや食べる事にも困る事はなかった。

まあ結局はその村も捨てたけど。

それよりもそれよりも!本当にあるかもしれない。
メイドが王子に気に入られ、正妃とまではいかなくとも、側室として王城に上がる事はよくある話しだ!

さあ、行くわよ!!!







って…何よ。何なのよこれは。

今私はあろう事か、薄暗い城の地下牢に入れられている。

「ちょっとおっ!!!ここから出しなさいよっ!!なんなのよ一体!!!」

一体何だって言うの?城に足を踏み入れてすぐ、騎士に拘束され、ここへ無理矢理連れてこられた。

なぜ?何て扱いなの?怒りでイライラが止まらない。



コツコツと靴の音が響き渡り、人影が近づいてきた。

鉄格子を握り、そちらを見る。

「で…殿下」

こんな時だというのに見惚れてしまう。

森の屋敷では見たことのない、凛々しくも上品な姿の殿下がいた。

光沢のある黒のベロア素材の上着には、豪華な金糸の刺繍が施されている。

屋敷での殿下は白いシャツに、黒のボトムスといったラフな格好だ。それはそれで色気があって素敵なのだが、今日の殿下はこれぞ王族という姿だ。

殿下がアンナの目の前に止まる。隣にはアティカスも一緒だ。

「殿下!何かの間違いでここへ連れてこられたのです!せっかく屋敷から殿下の元へと参りましたのに!早く…早く」

お助けくださいっと叫んだ時。

「アンナ・エバンズ。お前がここにいるのは、何の間違いでもない。事実だ」

殿下の冷たい声と視線に、頭がついていかない。

「え…?」

アティカスが続けて話す。

「金庫番のサムは分かるな。彼はもう屋敷にはいない。アンナ、君は彼を誘惑し金庫の金を少しずつ引き出させていたな」

「あ…なに…を…え?」

「その金で売人から薬を買っている証拠も、こちらは掴んである」

そう言って、薬の入った小さな袋をアンナに見せる。先程押収されたアンナの荷物から出てきたものだった。

「まっ…まって…ちがっ」
 
「最後に。殿下の大切なモノに悪意を持って傷つけたとして、不敬罪に処す事になるだろう」

「なっなによそれ!私がいつ殿下のモノを傷つけたというの!?」

スッと殿下がアンナに近づく。アンナは手を伸ばし助けを乞う。

「殿下!私は何もしていません!そうだっ、きっと嵌められたんだわ!」


「以前、その汚い手を仕舞えと命じたな」

「っ…!」

「更にまた、汚れが増したようだが」

「殿下…お聞きください!私は本当に何も…」

「俺のモノを傷つけ、侮辱した。何度も何度も踏み潰しながら」

「…踏み…潰す…?」

「お前に腹を蹴られ死にかけた。これが不敬に値しないと?」

「まさ…かあの魔獣…?」

「お前の情緒がおかしいことは、随分前から報告があがっていた。泳がされているとも知らず、何度も売人と会っていたな。
正直お前が薬漬けになろうが、廃人になろうが興味はない。まあもう何も聞こえていないようだな」

「え?何で…あの魔獣なの?あの…気持ち悪くて愚かしい生き物…?なんでぇ殿下…でんかぁっ!!うぁああっ!!」

アンナは目を見開き、獣のように泣き叫ぶ。それを気にもせず王子は続ける。

「横領に薬物に不敬。かなり罪は重くなるだろう。
覚悟をしておくのだな。
まあ喜べ。ここは残飯のように不味い食事は出るらしいが、飢える事は無いだろう」




「今は違うモノに飢えて、それどころではなさそうだがな」




そう言って、すでに禁断症状で苦しみだしたアンナに背を向け歩きだす。

大切なモノの元へ。











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