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王子の気持ち
しおりを挟む「ふふっ、オレが?」
何か面白そうに笑う王子。
むっとしたオレは、ペロリと王子の唇を舐めてポポンと人化する。
「何だか最近ね、王子が無性に可愛くてカッコいいの。オレ、ここがきゅんきゅんして辛いんだよ」
と抗議をするように、心臓を押さえてみせる。
そして我慢が出来ずに、王子に股がったまま肩に手を置き、ちゅうと王子のおでこにキスをする。
小さく微笑んで、俺の頬を撫でる王子。
「オレが可愛いなんて、城の人間が聞いたら驚くと思うけど」
そうなのか?オレには可愛いが一杯だけど。
というか、カッコいいは否定しないんだな。このイケメンめっ!
「オレからしたら、王子は可愛いんだよう」
うう~と首に抱きつき、すんすんと首に鼻を埋めて王子の匂いを堪能する。やっぱり良い匂い。
「甘えただねニナ」
くすぐったそうに笑いながら、背中をぽんぽんと叩いてくれる。
「うん、ずっとくっついていたくなる。気持ちを伝えたら、もっと王子の事が好きになっちゃった」
トロンとした目で王子を見る。
王子の、穏やかで優しい菫色の目を見ていると分かるよ。
沢山の愛情と愛しいを伝えてくれるんだ。
きっとオレの今の顔は真っ赤だ。
トクトクと自分の心臓の音が頭に響く。
熱い、堪らない、辛い、苦しいよ…。
ああ、発情しちゃった…のかな。
「可愛いのはニナだ」
クスリと笑いながら、ニナをベッドに優しく転がせる。
コロリと転がり、フルフルと震えるニナ。
「王子ぃ…力が…入らないんだ…」
はぁっ…と息が漏れた。
「大丈夫だよ、楽にしてあげるからね」
「王子、オレ、こわい」
「ニナ…痛い事はしないよ、気持ちいい事だけだ」
ニナを組み敷いたルイは、じっとニナの宝石のような赤い目を見つめた。
ニナの華奢な白い頷を、指でクイッとあげる。
ゆっくりと、しっとりと唇を重ねる。
何度か啄むと、すぐに身体の力が抜け甘いため息をつくニナ。
下唇を甘噛し、ゆるりと開いた隙に舌を潜り込ませた。舌を絡ませると、ピクンと身体がハネる。
逃げそうになる舌を追いかけ離さない。
「んん…んあっ」
ニナの小さな手を握り込み、安心させてやる。
顔を赤くさせ、ハフハフと息を切らすニナの瞳から、透明な涙がぽろりとこぼれた。
その涙さえも吸いつくす。
正直、城で発情したニナには驚いた。
可愛いばかりのニナ。
それがとても美しく妖艶で、赤い目を光らせ唇の端を上げる姿は、少しばかりの狂気を感じさせた。
この発情が、どんなモノでも自分に向けばいい。
ルイではない人間に向けてしまえば、許せないし容赦はしない。
やっと手に入れたのだ。
真綿で包み込むように、優しく…じわりじわりとこの手に堕ちてくるのを待っていた。
それこそめったに笑わない自分を見て、城の人間は驚いていただろう。
なんせ俺は冷酷非道な第二王子。
ニナは噂って信用ならないねと笑うけれど、その噂は信用出来る噂だよと教えてあげたい。
可愛いくて、愛らしくて、憎らしい。
誰にでも愛されたがりのニナ。
「だけどそれも受け入れてあげるよ」
「え…」
それがホワイトタヌキのあらがえようのない習性なのだ。仕方ない。
ニナから周りの人間を排除してしまえば、それこそニナはニナでなくなってしまう。
何を言われているのか分からないニナは、ぼんやりと俺を見つめる。
「だけど覚えていて。トクベツなのはオレだけだよ?」
裏切りは許さないからね?
生きてきて初めて、トクベツを見つけた。
食らいつくしたい程の想いを抑えて、ずっとずっと優しく愛してあげよう。
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