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早まりましたか?
しおりを挟む「えっ?」
王子はぽやぁとしていた目をぱちくりさせている。
「ブフー!ブフーー!」
と鼻息うるさい、興奮しているオレ。
だって、前世でもした事のないプロポーズだ。
すると、王子がニヤリと唇の端を上げ、ようやく身体を起こす。
何でそんな悪そうな顔をするのか分からずドギマギする。イケメンには変わらないんだけどさぁ。
やはりホワイトタヌキの分際で、プロポーズは滑稽な事だったのか?!と焦ると同時に恥ずかしくなる。
「ニナ、オレと結婚してくれるの?」
オレは、ぶんぶんと首を縦に激しく振る。
王子はというと、優雅にベッドに胡座をかいてゆるやかに微笑み、オレの首をくすぐる。
「みぃ…」
「ニナは俺のモノだから、ゆくゆくはそうなるんだけど…そうか、ニナから言ってくれるとはね」
(へ?)
「俺にアレヤコレヤをした責任を感じた?」
(…責任もあるし、王子の側にいたい事は変わらないよ)
「ニナって男らしいね」
(そっそう?あっ当たり前じゃん!男に二言はないから!)
オレだってやる時はやる男よ!
自然と、もふりもふりとご自慢しっぽが揺れる。
「そう、二言はないよね。ニナを信じてるよ」
(そっ、それで王子の返事は???)
「もちろん、返事は"はい"しかないよ」
王子!!!オレの嫁!!
ぴょんと王子に向かってジャンプする。ぼふんと抱き止めてくれた王子が耳元で囁く。
「キスだけで責任取ってくれるなんて、嬉しいよ」
「み?」
へ??キスだけ?
オレは王子のやっぱり涼しげで綺麗な目を見る。
(キス…だけ?)
「アレヤコレヤの激しいキスで、俺の魔力を吸いとってくれただろう?」
(え、待って待って、オレ王子にキスしかしてないの?)
あれ?キスだけ?キスだけで結婚とか…いきすぎちゃった?
何か王子がオーバーな言い方するから…でもやっぱり、お付き合いが始まったばっかりで結婚はさすがに早いよね?
だって最後までしてない訳だし…ねえ?
なんだ、と少しだけホッとした。
「…キス…しか…?」
悲しい声で王子が呟き下を向く。
(え?いっ、いやいやいや!キスだって大事だよね!勝手に奪っちゃいけないよね!)
そうだ!勝手にそんな事したらセクハラで訴えられる事もある。キスだからといって決して軽い行為じゃない。
オレは王子の悲しむ顔が一番見たくないんだ!
だって王子は将来のオレの嫁!!
(王子、キスだろうが最後までだろうがオレの気持ちは変わらない!けっ結婚しようね!)
「…うん…ニナの事、信じていたよ」
オレをもう一度ぎゅうと抱きしめて、額と額をくっつける。じっとお互いを見つめ合った。
結婚に早いも遅いもないよな?
だってオレ達は充分想い合っている。
きっときっと、上手く行く。
ゆっくりと王子の顔が近づいてきて、オレは目を閉じる。
獣のままのオレを愛してくれて、獣のままのオレにキスをしてくれる。
それってさ、本当の本当に幸せな事だと思うんだ。
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