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嫌われる勇気
しおりを挟むそれから少しすると、廊下が少し騒がしい事に気付く。
「ちょっと!!ルイ!!出てきなさいよっ」
「アーネラ様!おやめくださいませ!」
ドンドンッと、この部屋のドアが激しく叩かれる。
アーネラ様!
やっばい!アーネラ様、オレの部屋で1寝てたんだった!
驚いて飛び上がりそうになったオレは、急いでベッドから降りようとしたが王子が離してくれない。
(王子、離して?アーネラ様が呼んでるよ)
オレをぎゅうと腕の中に閉じ込め、じっとりとした目でドアの外を見つめる王子。
涼しげな目は、気だるげな目付きに変わっている。
ふぅっとため息をつき、オレを抱っこしたままドアへと向かう。
オレは、何て言おう何て言おう??と頭の中はパニック状態だ。
ガチャリと重厚なドアの開く音がした瞬間に、アーネラ様が勢いよく部屋に入ってきた。
「ニナ!!やはりここにいましたのね?!目覚めたらいませんもの…心配したのよ?
ちょっとルイ、いつの間にこちらに??
あなたがニナを連れて行ったのね?
勝手な事しないでちょうだいっ」
オレに話しかけるアーネラ様は女神のように美しく優しげなのに、王子に話しかけるアーネラ様は目を吊り上げ鬼の形相で少しこわい。
あれ?アーネラ様って王子の事、結婚したい位には好きなんだよな?
「アーネラこそ勝手にオレの大切な婚約者と同じベッドで寝ないでくれる?」
「何を言って…はっ?婚約者??」
王子!今サラリと婚約者とか言ったよね?
やばいやばい。
心の準備が出来ていないのに、言っちゃった!
嫌な汗に、心臓がざわつく。
けれど王子と一緒にいたいのなら、嫌われる覚悟も必要だと自分に言い聞かせていたけど…やっぱりこわい。
「そう。ニナはたった今、俺の婚約者になった」
あぁ、アーネラ様の顔が見れない。
「ニナが、あなたの…?」
「ああ」
ちらっとアーネラ様の様子を伺う。
じいっとオレの事を見ている。
うぅぅ…こんなんじゃ、こんなんじゃアーネラ様に失礼だ。
オレだって男だ!
(むん!!)
ぽぽん!と人化して王子の腕の中から降ろしてもらう。
「きゃっ、ニナ!」
急に、人化したオレに驚くアーネラ様。
「アーネラ様、ごめんなさい。オレ、アーネラ様の気持ちを知っていたのに…」
アーネラ様に向かって頭を下げた。
「ニナ…」
ゆっくり顔を上げ、アーネラ様の青い目を見る。
「オレ、王子の事好きなんだ。誰にも王子の隣を譲りたくない」
アーネラ様の表情は変わらない。
だけどきっと辛くて悲しくて、オレが憎いだろう。
「…ルイ。後宮を解散させたのは、こういう事?」
「俺には必要ないからね」
「あなたは本当にニナを愛しているの?これから大変な事になるのでは?」
「むしろニナ以外を愛せない。反対されるのなら国を出ればいいだけの話だ」
「…私を側室にして」
「話を聞いている?」
「聞いているから言っているの」
「無理」
「ニナの事も、きっと支えてみせるわ」
「必要ない」
「お願い」
「素直に言えば?」
「なっ、何?」
「アレもそこそこの貴族の家柄だし、君だって子沢山の王のお陰で、どこにだって嫁げそうだけど?」
「…何の事を言っているか分からないわ」
「だからアティカ「きゃあっっっーーー!!!」
キーン。
突然大声で王子の言葉をかき消すアーネラ様。
オレ、鼓膜破れていないかな?
「うるさい」
耳を塞ぐオレの頭ごと守るように抱きしめて、アーネラ様に非難する王子。
というか、
「アティカスがどうしたの?」
アティカ、まで聞こえちゃったからさ。
「ニナ、アーネラの想い人は、今も昔もアティカスだよ」
「えっ?」
「ちょっとぉっ!!!!」
顔を真っ赤にして、叫ぶアーネラ様
え???????
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